渋谷龍一のドラゴンノート2022.04

【第5編】働く・2〜「F型」で考えてみましょうか〜F型は
どこに行った? 2

2022/04/13

M型の人たちは、メンバーシップ型雇用(MS)から出ていく女性たちをヘタレだと思っています。しかし、それは間違い、という話。女性たちは、身を引いているのです。仕事だけやっているラクなM型のような生き方は、どんなに頼まれても、嫌なのです。また、働きすぎで体を壊したり、現実に過労死や過労自死などが発生していたりします。そんなところにいてはだめです。MSに付き合わされて懲りる前に「NO」だと言っているのです。生き延びるべきです。

優秀な女性が離職するというので、上司は「もったいない」と言います。確かに、男性と同じように進学して、男性より良い成績で卒業し、有名企業に就職したのに次々に辞めていくのですから、その気持ちはわからないでもありません。

しかし、5000人超の高学歴女性の就職後を調べた三具淳子さんによると、卒業後正社員で働き始めた女性のうち、そのまま働き続けるのは8人に1人、結婚しても働き続けるのは20人に1人、2人以上の子どもがいても働き続けるのは100人に1人です(「初職継続の隘路」『なぜ女性は仕事を辞めるのか』青弓社)。ここまでくると、「ヘタレ」や「もったいない」が吹き飛び、女性を追い出そうとしているだけに見えます。

しかも、女性が辞めるのは、どうも結婚や出産が本当の理由ではなさそうです。同じ本の中で高学歴女性の意欲を追跡した杉浦浩美さんによると、子どものいない女性も、ほかにやりたい仕事がある(この仕事はやりたくない)、仕事に希望を持ちたい(希望が持てない)、仕事の裁量が小さい(つまらない)、などと解釈できる理由で続々と辞めていきます(「就労意欲と断続するキャリア」)。つまり、出産退職に目を向けてばかりでは的を外しています。

「NO」を突き付け、さまざまなリスクを引き受けてでも、次々に軌道修正する女性たち。追い出す側の「YES」な男性たち。いったいどちらがたくましい職業人生なのでしょうか。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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