特集2022.07

PF労働者の労働者性の判断基準を示す
注目のEUプラットフォーム労働指令案

2022/07/12

欧州委員会は2021年12月、プラットフォーム(以下PF)労働における労働条件の改善に関する指令案を採択した。

欧州委員会が指令案を採択した背景には、PF労働者の急激な増加がある。EU域内のPF労働者は2800万人と推計されており、その大半が請負契約で働いているため、労働者の権利が認められないことで社会的保護が不十分であるなどの指摘が高まっていた。

指令案は、PF労働者の労働条件と社会的権利の改善を目的とし、PF労働者がどのような場合に雇用労働者とみなされるかなどの判断要素を示した。

これによると、プラットフォーム事業者がPF労働者の労務提供をコントロールしていると認められれば、両者の関係は法的に労働関係であると推定される。どのような場合に労務提供をコントロールしているかについては、次のうち二つ以上が当てはまる場合がそれに該当するとされた。

a)報酬額の実質的な決定または報酬水準の上限設定を行っていること

b)プラットフォーム就労従業者に対して、外見、サービス受領者に対する振る舞いまたは労務提供に関連して、特定の拘束力ある規律を遵守することを要求していること

c)電子的な方法によるものも含め、労務提供を監督しまたは労務の成果の質を審査していること

d)制裁による場合も含め、労務の編成にかかる自由、とりわけ、労務に従事する時間もしくはしない時間の選択、仕事の受諾もしくは拒否、または下請けもしくは代替要員の利用についての裁量を、実質的に制約していること

e)顧客基盤の形成または第三者への労務提供の可能性を実質的に制約していること

さらには、PF事業者に対して、PF労働者に対する情報提供を義務付ける条項を設けている。この中では、自動化された監視システムが用いられている事実やそれを導入途上であること、監視システムにおいて監視、監督、評価の対象となる行動の種類や、意思決定システムにより実行または補助される決定内容、その際に考慮される内容や相対的な重要度、アカウントの制限・停止等あるいは報酬支払い拒否等の根拠などが含まれている。

指令案の審議は今後行われる。

出所:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「プラットフォーム労働における労働条件改善に関する指令案」https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2022/04/eu_01.html

『労働判例』2022年5月15日号(No.1261)

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