地域を良くする地方議会へ
地方議会・地方議員に期待される役割とは?地方議会の女性議員を増やし
議会の多様性の向上を
低い女性議員割合
地方議会における女性議員の割合は、1980年代中頃まで2〜3%でしたが、それ以降、その割合は増え続け、2021年時点では、都道府県議会で約11.8%、市区議会では17.5%にまで増えています。女性議員の割合は、地域によってばらつきがあり、東京の区議会や政令市は2〜3割で比較的高く、都市部を中心に女性議員が増えています。ただ、他の先進国では3〜5割まで増えているので、日本の女性議員の割合は低いと言えます。
女性議員が増えない背景にはいくつかの問題があります。
一つは、制度の問題です。定数の大きい(当選人数の多い)都市部の選挙区では、政党が候補者のバランスを考えて女性候補を立てやすいので結果的に女性議員を増やすことにつながりやすいと言えます。一方、定数が小さい選挙区では現職の男性議員が知名度などの点から有利で、新人の女性候補者にとっては立候補そのものが難しいという課題があります。地方のデータを見ると、同じ人が長年議員を続けていたり、選挙が無投票になっていたりする実態があります。市町村合併で選挙活動の範囲が広がると、それだけ選挙活動の負担も大きくなります。
もう一つは、政治文化の問題です。男性中心でつくられてきた政治文化の中で、女性が活動しにくいという問題があります。例えば、飲み会をはじめ夜の時間帯の活動が多いと、育児や介護をしている人は活動が難しくなります。また、女性議員は、男性議員に比べて、セクシュアルハラスメントや「票ハラスメント※」を受けやすいという調査結果もあります。
政治文化の見直し必要
女性議員を増やすためには、まずは女性候補者が増えることが必要です。ただ、それだけではなく、勝てる見込みのある選挙区に候補者を立てることも大切です。政党は、女性議員を増やすために戦略的に候補者を立ててほしいと思います。
選挙制度に関しては、例えば、1人2票を投票できるようにしたり、当選してほしい候補者順に番号を振ったりするなどの投票方法を変えることも考えられますが、一つの自治体だけで改革するのは難しいでしょう。また、多選禁止や定年制のような制度改革を議論するにしても、任期中の議員で議論するには限界があるので、権限のある第三者機関を設けて検討する必要があります。
政治文化という側面では、多様な人材が活動できるように選挙・議員活動を見直していく必要があります。例えば、選挙活動中にも休みの日を設けるとか、20時以降はオンラインでの発信に限るとか、議員にも候補者にも生活があるということを前提に活動を変えていくことが挙げられます。柔軟な対応を可能にする点では、議会をオンラインで開催できるようにする必要もあります。
議会の多様性がもたらす効果
女性議員が増えた結果、議会運営のあり方が変わったという話をよく聞きます。例えば、議会でのやじや攻撃的な発言が減ったり、議会の外で一部の人だけで物事を決めるようなことが減ったり、セクハラが減ったりといったことです。
女性議員がいることで、相談しやすくなる人もいます。「生理の貧困」や災害時の避難所運営など、女性の声が必要な場面は数多くあります。政治学では、女性議員が増えると課題(アジェンダ)設定のあり方が変わるとされています。女性議員が増えることで、女性をはじめとした地域の声が行政に届きやすくなります。
議会の多様性は、地域の活性化に結び付くはずです。地方議会のデータを見ていると、人口の減少が続く自治体では、議員の候補者が減り、結果的に同じ議員が長く続けている事例をよく見かけます。地域の活性化のためには、地域の多様な人材の力を生かす必要があるでしょう。女性議員を増やすことはそのための第一歩になります。まずは、自分の住んでいる自治体議会の女性議員の割合を調べることから始めてほしいと思います。
※有権者が投票への見返りにさまざまな要求を迫るハラスメントのこと