特集2023.12

「柔軟化」「2024年問題」などへの対応
労働時間はどうなった?
「2024年問題」への対応で変わる
建設業の労働時間
DXが時間外労働短縮に貢献

2023/12/13
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用される、いわゆる「2024年問題」。通信建設業界はどう対応してきたのだろうか。通建連合の加盟組合役員3人および通建連合の髙代守事務局長と座談会形式で話を聞いた。

「働き方改革」の影響

──「働き方改革関連法」施行後の変化は?

A「働き方改革」以前は、労働時間を適正に管理できない状況が残念ながら残っていました。不払い残業もあったため会社と協議を繰り返してきました。

法施行前の36協定の上限時間は80時間。トラブルがあると100時間を超えることもありました。そのためトラブルが生じた際の上限時間と特別条項が年6回までという規定を守れるかが特に心配でした。

法施行後は規制に関して会社と協議する一方、組合員にも周知を図ってきました。

B働き方が変わったのは「働き方改革」より「コロナ」の影響の方が大きいです。特に柔軟な働き方の影響が大きいです。劇的に変わりました。9時から5時30分までという概念が崩れ、直行直帰や中抜けの文化が定着しました。そのおかげで待機時間や事務所に戻る時間が減り、労働時間は減少しました。

DX化の影響もあります。モバイル端末で出先からでも情報を得たり、申請できたりするようになり、事務所に戻らなくてもよくなりました。

今年4月からはコアタイムのない「スーパーフレックス制」を導入しています。

これらがなければ上限規制の枠内に収められないと思います。

C組合員の時間外労働を見ると2019年以降、減少傾向にあります。2022年度の組合員の月平均所定外労働時間は30時間を切りました。背景には月80時間を超える残業をする人が減ったこと、年休の取得日数が大きく増えたことがあります。

弊社では約10年前から労働時間の適正化に労使で力を入れて取り組んできました。昨年度からは「2024年問題」を見据えて労働時間の「見える化」を進めています。月45時間以上残業する人がわかるだけでなく、月30時間以上残業すると自動的にアラームが通知されます。パソコンのログで労働時間を記録する一方、自己申告の時間と合わなければチェックが入り、承認されません。

変わる建設業の労働時間

──上限規制への対応で課題となったのは?

C一番難しいのは年6回までの特別条項ですね。

Aうちも同じです。あとは週内残業。週40時間を超えると時間外労働になるので休日出勤をした場合は、同一週内で代休・振替休日を取るようにしました。これで時間外労働がかなり減りました。

会社とは36協議の場や労働時間等設定改善委員会で45時間超の人数をチェックするなどしています。

B「年6回」がやはり課題でした。建設業はもともと長時間労働だったので上限を守れるかどうか。上限を守るために不払い残業が増えてはいけません。

──なぜ長時間労働に?

B社員全員が忙しいわけではなく、一部の社員がずっと忙しい。人数が少ない専門職に仕事が偏っています。

C建設業だと管理技術者や専任の現場代理人が特に長時間労働です。現場への常駐が義務付けられているためです。加えて夜間や土日しかできない工事もあります。工期が長い現場だと特に長時間労働になりがちです。

Bそうした社員のフォローが最後まで残る課題です。現場代理人はどこも人手不足で人材の取り合いです。

A上限規制にひっかかりそうなのは一部の層です。多くの層は枠内に収まりそうです。

Cいわゆる「箱モノ」の工事では通信インフラの順番は後ろの方なので工期の遅れが圧縮してのしかかります。それも長時間労働の原因になります。発注者には工事の平準化を要請しています。

A建設業にはこれまで正確に把握されない労働時間がたくさんありました。まずそれを洗い出し、把握した上で適正化していかないといけません。

最近は、待機時間や手待ち時間など労働密度の低い時間を切り出して効率化することで労働時間の短縮が進んでいます。

C朝礼のやり方が変わりましたよね。以前は朝一番の班に合わせて集合していましたが、今は現場が遠くて朝が早い班は直行してもOKになりました。社員も当番制になり朝礼に毎日出る必要がなくなりました。

Aそこは一番変わったところかもしれませんね。大昔は朝礼に時間外労働をつけていませんでしたから。

B「コロナ」の前と後で考え方が全然違いますね。私の若い頃は現場に1時間くらい前に行って準備するのが当たり前でした。

テレワークやフレックスタイム制の導入で労働時間に対する考え方が変わりましたよね。

また労働時間をパソコンのログで管理するようになり、不払い残業が減りました。

C会社の懇親会が時間外労働になるのか聞いた若手社員がいました。全員参加だったので人事部も断れなかったようです。

残業と収入の関係

──ほかにどんな課題が?

A問題は協力会社の労働時間です。きちんと時間管理されていない実情があります。昨年から協力会社の労働組合で学習会を開催したり、執行委員会に出席したりして、会社との協議を促しています。

C協力会社の中には請負で働く人もいるので土日を休みにすると手取りが減ってしまいます。特に土木系や基盤系の現場は土曜日の仕事は今も当たり前。うちが発注しないとその後の契約を引き受けてもらえなくなるリスクもあります。週休2日に見合った単価設定が求められます。

髙代通建連合本部では発注企業を訪問し完全週休2日制に向けた要請などを行ってきました。発注者やデベロッパーが週休2日を見込んだ金額で発注することが大切です。サプライチェーン全体の問題だといえます。

──組合員の声は?

C20代や30代前半の若年層は自分の時間をつくりたいので労働時間の短縮はウエルカムです。ただ、時短で手取りが減るので副業させてほしいという要望が最近増えています。

A組合員は時間外労働の削減に賛成の声が多いです。一方、管理職側の意識が低いのが課題です。弊社でもスーパーフレックス制度を以前に導入しましたが一部の部署しか使われていません。もっと活用するよう会社に訴えています。

B労働時間に関する職場実態アンケートを毎年行っています。残業が減って手取りも減ったので賃上げしてほしいという意見がとても増えています。副業を求める声も増えています。

C今年の春闘で組合員にアンケートを取りました。上限規制を達成できないかもしれないと答えた組合員が2割強いました。理由は仕事量が多く、人手が足りない。ひもとくと少数精鋭の現場で現場代理人などに仕事が集中していました。その業務を仕分けして負担軽減につなげたい。仕事を割り振った先の人手不足の解消も課題です。新卒採用を増やしていますが追い付いていません。

サプライチェーン全体の課題

──今後に向けて一言。

A今年から適用後を想定し上限規制と同じ36協定を締結しています。これまでの成果もあり、枠内で対応できそうです。

今後は働きやすさを求めてフレックスタイム制の活用などを進めていきたいです。

Bうちは来年4月の適用に向けて課題が残っています。規制を超えそうな部署や職種が明確になってきたのでそこへのケアが必要です。事前にチェックできる仕組みを活用していきたいです。人手不足への対応も大切です。

C会社は時間外労働を減らせと言いますが、仕事量が変わらず困惑する組合員もいます。上限規制の適用で不払い残業が起こらないようにチェックしていきたいです。

髙代企業内の取り組みは単組で対応する一方、サプライチェーン全体の取り組みは上部団体である産業別労働組合の役割が重要になります。協力会社を含めて労働時間の適正化を進められるよう情報労連の仲間と連携して取り組んでいきます。

──本日はありがとうございました。

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