トピックス2023.12

パレスチナ・イスラエル問題を知るガザで起きる深刻な人道危機
「アパルトヘイト体制」解体で
暴力の根本要因への対応を

2023/12/13
10月上旬以降、ガザ地区では深刻な人道危機が生じている。この事態に歯止めをかけるために何が必要か。国際人権NGOアムネスティ・インターナショナル日本に話を聞いた。

パレスチナ人支配はアパルトヘイト

世界的な人権団体であるアムネスティ・インターナショナル(以下、アムネスティ)は2022年2月、イスラエルによるパレスチナ支配はアパルトヘイトであり、人道に対する罪だとする報告書を公表した。

アパルトヘイトとは一般的に人種隔離政策のことを指す。国連では1973年、アパルトヘイト犯罪条約が採択されている。この条約ではアパルトヘイトは人道に対する罪であるとされている。

アムネスティは、この報告書でイスラエルによるパレスチナ支配の実態を調査した。その結果、「イスラエルによるパレスチナ人の土地や財産の大規模な没収、強制移送、徹底的な移動制限、国籍と市民権の否定、国際法違反の殺害のすべてが、国際法のアパルトヘイトに相当する体制を構成する要素になっている」とし、こうした体制は人道に対する罪であると指摘した。

さらに、報告書は「イスラエルによるアパルトヘイト体制は徹底している。ガザ地区、東エルサレム含むヨルダン川西岸地区、あるいはイスラエル国内など地域を問わず、パレスチナ人は劣等的人種集団とみなされ、日常的に権利を奪われている」「イスラエルが支配下に置く全地域で実施してきた隔離、没収、排除など、残虐な施策は、明らかにアパルトヘイトにあたることを確認した」と指摘し、「この状況に対して、国際社会には行動を起こす義務がある」と訴えた。

アムネスティ・インターナショナル日本(以下、アムネスティ日本)は、この報告書を受けて2022年4月、「パレスチナ人に対するアパルトヘイトに終止符を」として署名活動を展開した。最終的に1336筆の署名が集まった。

即時停戦を求める

今年10月7日、ガザ地区を実効支配する武装組織ハマスがイスラエル側に大規模攻撃を開始した。それに対してイスラエルが反撃を加えた結果、ガザ地区では深刻な人道危機が生じている。これに対しアムネスティは10月26日に、即時停戦を求める緊急声明を公表した。

この中でアムネスティは、次のことなどを求めた。

・イスラエル軍とハマスなどの武装組織全紛争当事者は無差別攻撃、民間人・民用物に対する直接攻撃、過剰攻撃などの違法な攻撃を停止すること

・イスラエルは、占領下のガザ地区の民間人への人道支援を無条件で認めること

・イスラエルは16年間にわたる違法なガザの封鎖を解除すること

・ハマスなどすべての武装組織は、すべての民間人の人質を無条件かつ即時に解放すること

・国際法上の犯罪に相当する重大な権利侵害行為が行われていることに鑑み、国際社会はすべての紛争当事者に包括的な武器禁輸措置を課すこと

・パレスチナ人全体に対するイスラエルのアパルトヘイト体制の解体を含め、紛争の根本原因に対処すること

これらを求めた上で、アムネスティは、国際社会が一致団結して、すべての紛争当事者に対し人道的即時停戦を求めることを強く要請した。

これを受けてアムネスティ日本でも即時停戦を求める緊急の署名活動を展開。11月27日現在、約1万700筆の署名が集まっている。

アムネスティは11月8日にも声明を発表。アムネスティは調査でパレスチナ人被拘禁者が置かれた状況がここ数週間で極めて悪化していることを浮き彫りにしたとし、占領地での保護対象者に対する恣意的な拘禁、拷問その他の非人道的扱いは、戦争犯罪であると指摘した。

また、人質の交換に伴う4日間の戦闘休止に対しては、戦闘を数日間停止させるだけでは、壊滅的な苦しみに対処し、市民が受けた甚大な被害を軽減するには到底足りないとして、有意義で効果的な停戦をあらためて求めるとした。

シビック・スペースの重要性

アムネスティ日本のキャンペーン・マネジャーである武田伸也さんは、「昨年、報告書を出した時点から、国際社会による対応がなければ事態は悪化するとアムネスティは警鐘を鳴らしてきました。結果的にそうなってしまったことは非常に残念です」と話す。

抑圧され声を上げることのできない人たちのためにも世界の人々が国内外の人道危機リスクを察知し、事前に活動することが求められる。アムネスティでは、そのためにも市民が声を上げることのできる「シビック・スペース」が重要であると指摘している。声を上げることのできる空間が日常的にないからこそ、たまったマグマが暴発してしまう。

「シビック・スペース」は停戦を求める動きにもかかわっている。停戦を求める大規模デモが世界各地で行われる一方、日本は相対的に弱い。武田さんは、「声を上げるというカルチャーがなければ、いきなりデモにはなりません」と話す。その上で日本において「シビック・スペース」を広げる必要性を指摘する。アムネスティ日本は、ガザ危機に対して、元・国連パレスチナ駐在の識者を招いたイベントを開催するなどしてきたが、今後も情報発信を展開していく。

「イスラエルの容赦ない砲撃はこれまでに大勢を殺害し、何百万人もの人びとに苦しみをもたらしており、その激しさと破壊と苦しみの規模において、他に例を見ない」とアムネスティは指摘する。

アムネスティの原点には、一人ひとりの声を集めて大きな力にするという草の根の活動がある。最悪の人道危機に歯止めをかけるために今こそ世界の人々の声が必要だ。

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