職場のダイバーシティー推進
一人ひとりが働きやすく能力の生かせる社会へ組合活動への女性の参画促進へ
構造的課題の解消に向け実践を
はじめに
情報労連は、1998年の第38回定期全国大会において、「男女平等参画社会の実現をめざす」との方針を初めて掲げて以降、取り組みを積み重ね、2009〜2020年度は2次にわたって「情報労連・男女平等参画推進計画」を策定し、取り組んできました。現在は、2021〜2024年を計画期間として「情報労連・ジェンダー平等推進計画」を掲げ、取り組みを促進しているところです。
「ジェンダー平等推進計画」について
「ジェンダー平等推進計画(2021〜2024年)」では、この間の情勢変化も踏まえ、多様な性のあり方を念頭に、ジェンダー平等を「男女平等」と「性的指向・性自認(SOGI)の尊重」を包含するものとして位置付け、その運動のウイングを広げるとともに、これまでの課題整理を行いつつ、ジェンダー平等の推進に資する8つの運動目標を掲げ、取り組みを進めているところです。
2023年4〜5月にかけて実施した本計画の進捗調査においては、4カ年計画における最終年度を目前に控える中、全体としては多くの項目で未達成であり、2024年度末の達成に向けては厳しい状況にあるといえます(図表)。
一方、遅々としながらも労働組合活動における女性参画は向上しており、各組織においては、女性を対象とした研修会・レクの開催をはじめ、時間的制約のある組合員にとっても参加しやすい時間設定の工夫やオンライン対話会の実施などさまざまな創意工夫が行われるとともに、「積極的な声かけ」や「組合活動と仕事、家庭生活との両立に配慮した組織運営」など、女性執行委員の選出・定着に向け、地道な取り組みが展開されている状況にあります。
まずは議案への明記から!
「運動方針への明記」については、ジェンダー平等参画推進に向けた組織の意思をしっかりと表明し、組織の活動として位置付けていくための重要な取り組みですが、多くの加盟組合において明記できていない状況にあります。その理由として、「ほかに優先順位の高い取り組みがある」「組合員から改善を求める声がない」「ジェンダー格差・バイアスがあると感じていない」等も挙げられており、取り組みの必要性・重要性を十分に認識していない組織も見受けられる結果となりました。
取り組みの推進にあたっては、現時点において課題を認識しているか否かに関わらず、まずは、すべての組織においてジェンダー平等参画課題に取り組む意思を組織的に確認し合うとともに、組合員の参画状況や職場の実態について、ジェンダー平等の視点から格差が見られる分野がないか、点検することを出発点に、各組織の実態を踏まえた取り組みを展開することが重要です。中央本部としても、引き続き、取り組みの意義と必要性を十分に浸透させていく取り組みが必要と考えるところです。
労働組合の意思決定の場に女性が参画しているか
加盟組合やブロック支部の議決機関・執行機関における女性参画状況については、半数以上の組織において組合員比率に応じた参画率の確保ができておらず、執行機関に女性が1人もいない組織も一定数あることが明らかとなりました。
とりわけ女性役員の選出については、多くの組織において、女性の数が少ないことが共通課題として挙げられるとともに、加盟組合においては「子育て期の女性が多く、選出が難しい」「ロールモデルがいない」ことも課題として認識されていることからすれば、女性に重くのしかかる家事・育児負担等の性別役割分担をはじめ、社会構造的課題や産業構造上の実態が組合活動における女性参画率の低さ等に反映されていることがうかがえる結果となっています。
なお、中央本部の議決機関における女性参画状況は、直近の第62回定期全国大会では目標にわずかに届かなかったものの、大会・中央委員会ともに「30%」の達成実績をつくることができており、各組織における積極的な取り組みの成果だと受け止めていますが、執行委員会の女性参画比率は10%と、目標の30%を大きく下回る状況となっています。
構造的課題を乗り越える。クオータ制導入等の検討へ!
目標達成には程遠い現状を踏まえれば、組合役員や議決機関に安定的に一定の女性割合を確保していくことは決して簡単ではない目標ですが、情報労連の組合員に占める女性の割合(28.3%)からすれば、組合民主主義の観点からもこの状況を大きく転換していくことが不可欠です。
さらに、少子高齢化と労働力人口の減少が急速に進む中、女性をはじめ、多様な人材が参画し、その能力を十分発揮し得る労働環境をつくっていくことは、極めて重要な労働組合の取り組みであり、それを推進する労働組合の政策決定の場における多様性の確保はこれまで以上に重要になっています。
これまでの取り組みの延長線では、運動に多様性を十分反映するだけの女性の参画は望めません。取り組みの本質は、意思決定の場に女性が参画していくことで、これまで見逃されてきたさまざまな課題が意思決定に反映され、誰もが働きやすく、公平・公正な職場・社会づくりに寄与していくことにあるということ、そしてそのためには、女性の参画を促進するポジティブ・アクション(※1)を図り、構造的課題を乗り越えていくことが求められるということを、改めて強調したいと思います。
中央本部では、本計画の達成に向け、中央執行委員会におけるクオータ制(※2)導入等、次期改選期を見据えた女性参画率の確保に資する施策を実施することとし、各組織との連携の下、具体的な検討論議を重ねているところです。さらに、女性役員の定着・育成強化に向けた環境整備の一環として、女性役員同士の人的ネットワークの構築機会の提供や各組織のトップリーダーへの意識付けなどにも取り組んでいきたいと考えています。各組織においても、自組織の女性役員選出に向けた仕掛けづくりや環境整備に取り組んでいただきたいと思います。
計画達成のラストスパートに向けて
紙幅の関係上、本稿においては、とりわけ女性参画の促進を中心に記載していますが、もちろん、役員が増えたらそれでいいのか、という単純な話ではありません。計画には、「従来の活動スタイルの点検・見直し」や「ジェンダー平等推進について労使で話し合う場の設置」、「女性役員の定着、三役への登用も見据えた育成強化」等についても盛り込んでおり、各目標は相互に関連し合い、相乗効果を発揮するものとなります。
情報労連では、6月を「ダイバーシティー推進月間」と銘打ち、各組織における取り組み強化の期間としています。各組織には、計画と照らして組織実態を点検していただくとともに、次年度が計画期間の最終年度であることを強く意識し、具体的な取り組みを加速させていただきたいと思います。ともに頑張りましょう!
※1ポジティブ・アクション
男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会に係る男女間の格差を改善するため必要な範囲において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供すること(男女共同参画社会基本法第2条第2号参照)。
※2クオータ制
ポジティブ・アクションの手法の一つであり、人種や性別などを基準に一定の人数や比率を割り当てる制度のこと。