特集2025.08-09

戦後80年
過去と現在をつなぐ
情報労連 戦後80年の取り組み
組織全体で平和に向き合う1年に

2025/08/18
情報労連は、戦後80年の節目である2025年を「組織全体が、改めて平和に向き合う1年」と位置づけ、組織的な取り組みを進めている。デジタルを活用した取り組みや5月に開催した「平和中央集会」などの取り組みを紹介する。
永渕 達也 情報労連中央執行委員

情報労連は『創り育てる平和』をシンボルフレーズに、一貫して世界の恒久平和を希求する運動を積み重ねています。その上で、戦後80年の節目である2025年を「組織全体が、改めて平和に向き合う1年」と位置づけ、組織的な取り組みを進めていることから、その内容を紹介します。

デジタルアーカイブの取り組み

1点目は、「平和運動を次代につなげていく」との考えの下、これまでに情報労連および構成組織が作成してきた本や映像などの平和教材を収集・デジタル化・保管することで、将来にわたって資料等を閲覧できる環境を整備する「デジタルアーカイブ」の取り組みです。全国の構成組織から本、冊子、DVDなど多数の資料を収集し、最終的には102点もの教材をデジタル化しました。その中には、諸先輩がつくり上げてきた冊子や、平和四行動の模様を記録したビデオ、被爆された方の証言動画などがあり、簡単にはアクセスできなくなっていたコンテンツも含まれています。

これが情報労連におけるすべての資料ではなく、残念ながらすでに失われた資料もあるかもしれませんが、長きにわたる平和運動の蓄積を可視化し、後世に残していくことは非常に意義深い取り組みであると考えます。これらの資料は、情報労連ホームページ上で公開しており、いつでも閲覧することができます。古い資料からも、今に通じる新たな気づきが得られます。構成組織における平和学習等に、積極的にご活用いただきたいと思います。

未来につなぐピースMap

2点目は、「未来につなぐピースMap」の作成です。これは、沖縄や広島、長崎以外にも、戦争による悲惨な出来事が、日本各地で、それも人々の暮らしのすぐそばで起きていたことを、改めて感じてもらうために、各地に残る戦跡や慰霊碑等の情報を報告してもらい、一つの地図にまとめるという取り組みです。全国の組合員から160を超す報告があり、報告者からは「取り組みを通じて、長く暮らす街にあった出来事を知ることができた」「80年の節目にこのような取り組みを企画していただいたことに感謝する」「ぜひ取り組みを続けていきたい」といった感想も寄せられました。

この取り組みは、地図を充実させること自体が目的ではありません。戦跡や慰霊碑等に実際に赴き、そこで起きた出来事を学び、それを通じて得た感想や感情を人に伝えていくことに意義を見いだしています。私自身も、いくつかの戦跡や慰霊碑を回りましたが、例えば福岡県にある星野村には、広島で被爆したある人が、原爆の残り火を故郷に持ち帰り、その火を80年にわたって絶やすことなく灯し続ける「平和の塔」というモニュメントがあります。この施設は私の生家近くにあるのですが、それまでその存在をまったく知りませんでした。それゆえに、その事実を広く伝えたいと感じましたし、同じような感覚を多くの皆さんにも体験していただきたいと思います。

「未来につなぐピースMap」を通じて、戦争の被害がいかに全国各地で起きていたかをご覧いただくとともに、実際に戦跡に足を運ぶきっかけとなることを期待します。なお、戦跡等の情報投稿は常時受け付けています。

未来につなぐピースMAP

バーチャル広島平和記念公園

3点目は、「バーチャル広島平和記念公園」の公開です。

これは、メタバース空間に広島にある「平和記念公園」を再現し、その中で説明動画やクイズを通じて学習していただくというコンテンツです。このメタバースでは、平和記念公園内にあるいくつかの慰霊碑、モニュメントの解説動画や「ひろしま平和クイズ」、平和記念資料館を模した写真展示を用意しています。情報労連では、平和四行動の一環として広島でも開催しており、この広島平和記念公園、平和記念資料館の見学も行っていますが、希望者全員が参加できるわけではありません。その点、このメタバースは人数の制約がなく、いつでも、どこからでも平和記念公園の雰囲気の一端を感じ、学ぶことができ、テレビゲームのような操作感ですので、お子さんにも親しみやすいものとなっています。

この「バーチャル広島平和記念公園」は、子どもの夏休み期間に合わせて、8月1日から8月31日まで公開します。パソコンやスマートフォンからアクセスできますので、ぜひご家族そろってご覧いただければと思います。

広島平和記念公園メタバース

戦後80年平和中央集会

そして去る5月23日には、これらの取り組みの紹介・報告を兼ねて「戦後80年平和中央集会」を開催しました。本集会には、会場とウェブを合わせて600人を超える組合員にご参加いただきました。その中で特別講演として、講談師の神田香織さんに「講談『はだしのゲン』」をご披露いただきました。多くの人が一度は読んだことのあるマンガの序盤──戦時中、苦しいながらも明るいゲンたち家族の様子と、一家を襲った原爆の恐怖・悲惨さとの落差に衝撃を覚える内容でした。神田香織さんが釈台を張り扇でたたいて調子を取りながら、各場面を的確に表現した発声とともに、効果的なライトと音響の演出によって、当時の情景が目に浮かぶ臨場感あふれる話に、誰もが聞き入りました。

戦後80年情報労連平和中央集会

これからの平和運動

終戦から80年という長い年月を経た今もなお、課題は山積しています。「米軍基地の整理・縮小」「日米地位協定の抜本的見直し」は遅々として進まず、唯一の戦争被爆国であるにもかかわらず、政府は核兵器廃絶に消極的であり、北方領土問題も解決の糸口が見えていません。さらに近年、防衛費が急増しており、軍拡が進んでいる状況です。

また、世界に目を向ければ、民族や宗教の対立、力による現状変更を試みる大国のエゴによって、ウクライナやガザ、ミャンマーといった各地での戦争、紛争、市民への弾圧が後を絶ちません。

悲惨な戦禍を経験し、多くの犠牲を払ったにもかかわらず、世界はその反省を忘れようとしているかのようです。しかし、だからこそ、平和運動を諦めることなく、続けていく必要があります。そのためには、戦禍の記憶と平和への誓いを次代に継いでいくこと──当時も今と変わらぬ日常の営み、幸せな暮らしがあり、それらが戦争によって無惨に破壊されたことを想像し、その悲劇を自分ごととして捉え、湧き上がった感情を他者に伝えること──これが重要だと考えます。

情報労連は、平和を創り育てていくために、一人ひとりの人権を互いに尊重し、差別や偏見にあらがい、未来への責任ある対応を果たすとともに、核兵器廃絶、世界の恒久平和の実現に向けて、全力で行動し、発信していきます。

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