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2015ソフトワーカー労働実態調査を実施
取引関係の実態を調査

2016/05/30
情報労連は、情報サービス産業の健全な発展と、IT技術者に相応しい労働条件の実現に向けて、情報サービス産業の労働実態を把握するために、毎年「ソフトワーカー労働実態調査」を実施している。23回目となる今回の調査では、賃金や労働条件といった基本的項目に加え、「取引関係をめぐる現状と課題」について調査し、分析を行った。

取引関係をめぐる課題を設定

1993年から行ってきた「ソフトワーカー労働実態調査」は、2015年で23回目となり、2010年以降、300社を超える企業にこの調査に参加いただいており、今回の調査では組織内外を含めて、317社の協力を得ることができた。

本調査では、賃金・労働時間など、労働条件にかかわる項目については、定例的な調査と位置付け、毎年の調査項目とし、加えて、情報労連として政策的課題と位置付けている内容に関する設問などを設けている。

今回の調査では、「取引関係をめぐる現状と課題に関する設問」を追加した。情報システムの開発、運用、保守は、経営・業務そのものを含めた共同開発、共同作業としての性格を強く帯び、納期や品質等に関する共通認識が必要である。情報サービス産業では、「多重下請け構造」と呼ばれる複雑な取引関係が形成されており、その下で人月工数ベースでの価格決定と、技術者の客先常駐という慣行が定着している。こうした産業のあり方に対し、様々な弊害が指摘されており、改善を図る取り組みが進められている。

労働条件部門<モデル賃金と労働時間>

まず、労働条件に関する調査では、年齢ポイント別モデル賃金、労働時間の推移についての傾向を見ていく。

大卒のモデル賃金は25歳で約22万5000円、35歳で約31万8000円、45歳で41万円となった。

各年齢ポイントにおける過去10年の推移を見てみると、25歳ポイントでは、2005年が約22万3000円、2010年が約22万3000円となっており、2015年で22万5000円となっており、ほぼ横ばいの状態であるのに対し、35歳ポイントでは2005年が34万3000円、2010年が約32万8000円、2015年が約31万8000円と減少傾向を示している。45歳ポイントにおいても35歳ポイントと同様の傾向となっており、2005年と比較すると2015年では約3万6000円低下していることがわかった。

また、全産業計の45歳総合職モデル賃金と本調査結果を比較すると、6万円下回っている。

労働時間に関する調査では、年間所定労働時間は1898時間、年間時間外労働時間は230時間、年間年休等所得時間は87時間、年間総実労働時間は2033時間であった。

2005年調査結果からの傾向を見てみると、年間総労働時間に関しては、2005年実績(2100時間)以降、2010年実績(2025時間)までは減少傾向を続けたが、2011年調査以降は横ばいとなっている。時間外労働時間についても同様の傾向がみられる。年次有給休暇分についても長期的にみると横ばいの傾向となっていることから、総労働時間は2000時間超の高止まりで推移している。

取引関係をめぐる現状と課題

システム開発プロジェクトにおいて、業務を多段階に分割し段階ごとに契約を取り交わす多段階契約は、全プロセスを一括契約するのに比べ、費用・納期の面で見積と実際のギャップが少ないなどのメリットが大きく、経産省や一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)がシステム開発のモデル契約書で採用している。

取引先との契約について多段階契約と一括契約のどちらが多いかとの問いに対し、多段階契約が約3割、一括契約が4割と現状では一括契約の割合の方が高い。

また、費用見積もりの際に、開発に要した人数と月数の積に応じて報酬が支払われる人月工数ベースの価格設定は、開発効率を高めるインセンティブが働かず、技術者の価値が反映されないことから、情報サービス産業が労働集約型の多重下請け構造から脱却できない元凶であるといわれている。今回の調査では、「人月工数ベース以外の価格設定を行う」は42.1%、「人月工数ベース以外は行っていない」が50.5%となっており、「人月工数ベース」で見積を行っている企業がやや多い結果となっている。

次に、不適切な価格設定や納期の影響について見ていくことにする。「価格設定」について適正範囲での契約が難しい場合の対応としては、「工程の見直しや簡略化」(72.3%)が際立って多く、以下、「会社全体での間接経費の圧縮」(48.0%)、「業務の一部の他社への業務委託」(42.9%)、「派遣社員、契約社員などの非正社員の活用」(31.6%)となっている(図1)。

【図1】「価格」について適正範囲での契約が難しい場合の対応(複数選択)
情報労連「ソフトワーカー労働実態調査2015」

「納期」についての適正範囲での契約ができない場合の対応としては、「従業員の時間外労働・休日出勤」(77.8%)がトップとなっている(図2)。

【図2】「納期」について適正範囲での契約が難しい場合の対応(複数選択)
情報労連「ソフトワーカー労働実態調査2015」

元請企業・下請企業別に給与水準を比較すると、元請企業の方が給与が高く、年代が上がるにつれて差が広がる傾向にある。また労働時間に関しても、下請企業ほど長時間労働の傾向がある。適正な価格設定、納期での契約が難しい場合、経費の圧縮や長時間労働、さらには人材育成機会の喪失などに悪影響を及ぼしているものと認識する。

取引関係の適正化をめざす

このため、これらの問題の解決に向けては、受注者への丸投げ等から生じる効率的ではない取引関係の適正化を図り、多段階契約などの適正な契約方式の転換、労働条件の改善、ワークライフバランスの一層の推進が必要であると認識する。さらには、IoT、AI、ビックデータの進展などの環境変化に対応していくためにも、質の高いIT人材の育成・確保が必要であり、学校教育等を含めた政策の確立が求められているものと認識する。

情報労連ICT政策

https://www.joho.or.jp/doc/book/

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