特集2017.11

「非雇用」のいまとこれからプラットフォームビジネスに潜むリスク
仕事の請負・細切れ化のキケン

2017/11/14
「Uber」を代表格とするプラットフォームビジネスが世界中で広がっている。労働者には仕事の請負化・細切れ化という負の影響が及んでいる。現状と課題を聞いた。
菅 俊治 弁護士
日本労働弁護団常任幹事

─労務供給型プラットフォーム事業とは何でしょうか。

いわゆる「シェアリングエコノミー」と呼ばれるビジネスモデルの一つです。労務を供給してくれる人をインターネット上のプラットフォームに募り、その労務を消費者にサービスとして提供するビジネスです。

特徴的なのは、労務仲介の場を提供する「プラットフォーマー」と呼ばれる事業者が、労務を供給している人に対して、使用者としての責任を負わないということです。プラットフォーマーの代表格である「Uber」は、こうしたビジネスモデルで莫大な利益を上げています。

─プラットフォームビジネスが拡大している背景は?

インターネットやスマートフォンの普及に加えて、ビッグデータの活用が進んだことが背景にあります。これにより、労務を提供したい人とサービスを受けたい人を、インターネット上で自動的に結び付けることが可能になりました。原理的にはハローワークの仕組みと大きくは変わりません。

─なぜ「請負」の形式になるのでしょうか。

技術的には雇用という形態で労務を媒介することは可能です。にもかかわらず、プラットフォーム事業者は請負という契約を用いることで、賃金や労働時間、社会保険料の支払い、安全配慮義務や団体交渉応諾義務などの使用者としての責任を免れています。

プラットフォーム事業者は、労務提供者と消費者を結び付ける場所を提供しているだけで、労務提供者の使用者ではないと主張しています。労務提供者とプラットフォーム事業者の契約形式は、請負契約となっています。しかし、労働法令が適用されるかどうかは、実態に即して判断されます。

─実態はどうなのでしょうか。

日本で「Uber」は導入されていないので、海外の事例を紹介します。請負契約の前提には、仕事を引き受けるかどうかの諾否の自由があります。しかし、「Uber」の事例を見ると、仕事の受託率が一定値を下回るとアプリの登録が解除されて仕事ができなくなります。また、どのようなコースを走るのかも指定されていて、運賃もドライバーは決められません。「Uber」がドライバーの報酬比率を勝手に切り下げることもしばしばです。そのため、海外では「Uber」ドライバーの労働者性を認め、最低賃金や労災を適用するように裁判所が判決を下した事例があります。

─日本ではどうでしょうか。

日本では、「UberEATS」というタクシーとは異なる、料理の宅配サービスはすでに導入されています。配達員は仕事の受託率を維持しなければならず、配達コースの指定もあります。運賃も決められません。このような実態からすると、独立した請負労働者とは言えないのではないかと考えています。

─他の業種・業態の現状は?

プログラミングやウェブデザイン、翻訳、記事の執筆などの分野では、プラットフォーム事業が「クラウドソーシング」と呼ばれ、先行的に広がっています。プラットフォームビジネスの登場で労務提供者が増えて、価格競争が厳しくなっています。感覚的には単価が4分の1に下がったという人もいます。

─「ギグ・エコノミー」(継ぎはぎ労働)という言葉も出てきています。

プラットフォーム事業では、以前はフルタイムだった仕事が解体され、必要なときに必要な仕事だけが、細切れの労働として外注されるようになります。そのため短期かつ低賃金の仕事をつなぎ合わせて生計を立てなければならないという問題が生じていて、これが「ギグ・エコノミー」と呼ばれています。

プラットフォーム事業の恩恵を受けられる労働者は、一部に限られています。安定した収入源のある人たちが空いた時間を活用してプラットフォーム事業で働くのであればいいのですが、それを主たる生計費にする人たちは、低賃金のため長時間労働にならざるを得ません。

─ライドシェアでは安全性の問題も指摘されています。

公共交通の世界に市場原理をそのまま持ち込むと安心・安全なサービスが切り崩されてしまいます。実際、イギリスでは「Uber」ドライバーによる犯罪が相次ぎ、ロンドン市が「Uber」の営業許可を失効するにまで至っています。

公共交通以外でも、品質に関する責任があいまいになるために、同様の問題が生じやすくなります。

─求められる対策は?

産業や職種ごとに戦略を立てる必要があると思います。ライドシェアに関してはまず導入を許さないことが大切です。

次に、軽易な定型作業に関しては、家内労働法などと組み合わせて、最低賃金を設ける方向性が求められます。デザインなどの高度な専門業務に関しては、プロフェッショナルの団体を組織して交渉力を高めることが重要です。

また、政府や地方公共団体に関しては、公契約条例を活用した発注価格の適正化が求められるでしょう。労働組合は、発注価格の適正化に向けた調査・提言活動などを展開してほしいと思います。

特集 2017.11「非雇用」のいまとこれから
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