特集2017.11

「非雇用」のいまとこれから請負労働者の組織化をどうする?職種・業種を核に相互扶助の強化を

2017/11/14
請負労働者が増えていくのであれば、労働組合はどのような対応ができるだろうか。組織化の戦略について考察する。
遠藤 公嗣 明治大学教授

ユニークな日本の法解釈

請負という形式でも雇用労働者に近い働き方をしている人は昔からいます。典型的な例が大工の一人親方です。日本では、大工の一人親方は労働組合法上の労働者として労働組合を結成することができます。戦後、一人親方が労働組合を結成した際に労働委員会ではこれを認めるべきかが大きな問題となり、議論の末、労働組合として認められました。

これは他国に比べてとてもユニークな仕組みです。最近では、NHKの集金員や住宅設備の修理業務委託契約者、コンビニの店長も労働組合法上の労働者として認められています。アメリカでは、このような労働者は労働組合を結成することができません。

三つの活動

労働組合論の古典であるウェッブ夫妻の『産業民主制論』(1897)は、労働組合の活動を三つの項目に定式化しました。一つ目が、相互扶助。二つ目が、団体交渉。三つ目が法律制定です。この中で、労働組合だけが実行できる活動は、二つ目の団体交渉です。

アメリカの請負労働者は労働組合を結成できないため、ウェッブ夫妻が定式化した三つの項目のうち、一番目と三番目の活動に積極的に取り組んでいます。つまり、充実した保険を安価で提供したり、州議会に働き掛けて下請けの労働条件を向上させるためのロビー活動に力を入れたりしています。

こうした活動で約35万人の請負労働者を組織しているのが「フリーランサーズ・ユニオン」です。この組織を設立したサラ・ホロヴィッツは、大学で労使関係を専攻しました。彼女は、ウェッブ夫妻の定式を生かして、このような大きな組織をつくったに違いありません。

一方、日本には約62万人の一人親方を組織した全建総連という労働組合があります。この組合は、団体交渉もしますが、ウェッブ夫妻の定式で言う、相互扶助活動に積極的に取り組んでいます。

こうして見ると、請負労働者の組織化のヒントが見えてきます。ウェッブ夫妻の定式化した一つ目の相互扶助機能を活動の中心とすることです。それにより、全建総連のような大きな組合を組織化することも可能です。さらに日本の場合、定式の二番目である、労働組合法上の労働組合を結成することができます。これで使用者に団体交渉を申し込むことができ、不当労働行為があれば労働委員会の救済も受けられます。これはアメリカのフリーランサーズ・ユニオンにはできない、非常に大きなメリットです。一人親方に労働組合の結成を認めるというユニークな法解釈が、今になって大きな恩恵を与えることになりそうです。

お友達の世界

しかし、ここに従来の労働組合のイメージをそのまま当てはめようとしても組織化はうまくいきません。なぜなら、そうした請負労働者は、一つの会社に居続けることを前提としないからです。これまでの企業別組合とは異なる発想で組織化をめざす必要があります。そのためには、働く場所が変わっても組合員であり続けることのメリットを明示しないといけません。

一つには、「お友達の世界」をつくることが大切です。例えば、A社では就業前に掃除をしないといけないがその分の給料は支払われないとか、B社は仕事の単価が低いとか、そういった労働条件に関する情報を交換できる場所をつくることです。労働条件の悪い会社は人を採用できなくなり、条件を上げざるを得なくなります。

合同労組との違い

これまでの合同労組との違いは、組合に定着するための「核」がより見えやすくなったことだと思います。職種や業種を核にすることで団結できる軸が明確化し、定着率が上がるのではないかと考えています。

仲間が集まって情報交換するための場所を現実の空間や仮想空間に設けると良いと思います。組合事務所ではなくても、そこに行けば組合の仲間がいる、そういう場所がつくれると良いでしょう。

組合員であり続けることのメリットとしてもう一つ考えられるのは、保険や共済のメリットを明確にすることです。

一つの例として労働組合に検討してほしいのは、請負労働者の健康保険や年金に関して、組合員と同じようなメリットのある制度に加入できるようにすることです。これは請負労働者にとって大きなメリットになるはずです。

業種別職種別ユニオン

このように一つの職場に定着しない働き方は、中小企業労働者や非正規雇用労働者にも当てはまる側面があります。業種別職種別ユニオンのあり方を模索する動きも出てきています。そこでは、個人が企業横断的な組合に加盟して、職場を移動しても同じ組合に加入する仕組みをつくっています。

請負労働者も、中小・非正規雇用労働者も、一つの企業に勤続し続けるという発想での組織化には限界があるのではないかと思います。労働組合には、新しい発想での組織化が求められています。

フリーランサーズ・ユニオンのWebサイト
https://www.freelancersunion.org
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