特集2017.11

「非雇用」のいまとこれから労働契約と請負契約の違いは?
非雇用型就業の法的ポイントを知る

2017/11/14
非雇用型就業の法的位置付けを識者に解説してもらった。労働契約と請負契約の違い。労働者性を巡る問題などを整理する。
長谷川 聡 専修大学准教授

労働契約と請負契約

「非雇用型就業者」という言葉は一般に労働契約以外の役務提供型契約で働いている人を意味しますが、厳密な定義はまだ定まっていません。今回はそのことを前提に、非雇用型就業の概要や位置付けについてお話しします。

東洋大学の鎌田耕一教授は、非雇用型就業者を次の五つに分類しています。(1)専門職型(2)自営業者型(3)業務委託型(4)フランチャイズ型(5)テレワーク型─です。これらは、それぞれが独立した類型ではなく、互いに重なっている領域があります。

非雇用型就業は、法的には請負や委任といった形式をとります。そのため非雇用型就業者は、形式上は労働基準法の保護を受けることはできません。

労働契約と請負契約の違いは、指揮命令の有無にあります。労働契約とは、労働者が使用者の指示に従って働き、その対価を得るという契約です。一方、請負契約とは、仕事の完成に対して報酬を支払う契約であり、発注者が仕事を完成させる方法について指揮命令をすることはありません。

このように指揮命令があるかどうかが、労働契約と請負契約を区別するポイントです。しかし実際には具体的な指示を行わない労働契約や細かい指示のある請負契約があるように、両者の線引きは簡単ではありません。どこまでが労働者で、どこからが非雇用型就業者なのか。労働契約と請負契約の間では、このような「労働者性」を巡る問題が生じます。

労働者性の判断

「労働者性」には、先ほど言及した労働基準法上の労働者と、労働組合法上の労働者があります。

労働基準法上の労働者のポイントは、使用者の指示を受けて作業することです。これは「人的従属性」と呼ばれます。指示を受けて拘束されているから、そのような状態の労働者に保護を与えるという考え方です。

もう一つ、労働者が使用者に経済的に従属しているかも付随的に考慮されます。労働者が使用者と対等な立場で交渉することができないために、十分な労働条件を得られないという問題です。これは「経済的従属性」と呼ばれます。

一方、労働組合法上の労働者は、使用者の指示を受けることを前提としていません。ここで問題となるのは労働者が相手方の会社組織に組み込まれているかです。例えば不可欠な労働力として組織に組み入れられていたり、第三者に対して組織の一部として扱っていたりする場合です。これは「組織的従属性」と呼ばれます。また、経済的従属性も併せて考慮されます。労働組合法上の労働者の方が労働基準法上の労働者より幅広く捉えられます。

「非雇用型」保護の現状

その上で、非雇用型就業者の法的保護の現状を見てみましょう。

非雇用型就業者には、労働基準法や労働契約法の保護が及びません。しかし、法的な保護がまったくないわけではありません。民法や下請法などの保護は適用されます。例えば、契約の際に大きな勘違いがあったら無効にできるとか、詐欺に遭ったら契約を取り消せるとか、民法にはそのような決まりがあります。

労働法でいう解雇のような事案を扱った判例もあります。一つ事例を挙げると、置き薬の販売業者が、長年取引を継続してきた会社から突然、商品供給契約を打ち切られたことについて、買い主の地位を有することの確認を求めて認められた事例があります。契約が継続するという合理的な期待に基づいて投資してきたのに、その分が回収できなくなってしまうような契約解除は、法的にも認められないということです。また、下請法には、資本金に格差がある場合などに優越的地位の濫用の禁止という考え方を基礎とした規制が設けられています。完成物の受け取り拒否や、下請け代金の支払い遅延などが規制の対象となっています。

最近では、非雇用型就業者が労働組合法上の労働者として認められる事例が増えています。

非雇用型の保護規制のあり方

非雇用型就業者の法的保護をどのように考えるべきでしょうか。労働者との対比でいえば、指揮命令関係にないことや働き方の多様性にどのように対応するかが課題となります。

例えば、非雇用型就業者にアンケートを採ると必ず出てくる不安要素に、単価の低さ、報酬の少なさがあります。労働者ならば最低賃金である程度対応できますが、就業時間数を任されていることが多い非雇用型就業者には時間あたりで最低額を決めることは難しいです。

また、「最低工賃」を決めるにしても、例えばプログラムの仕事一つとってもその内容はさまざまです。その仕事一つひとつに最低工賃を設定することは現実的ではありません。

とはいえ、報酬額を決めるときにその仕事の完成にどのくらいの時間がかかるか考慮されることが多い実態もあります。定形的な仕事で、「これくらいなら、このぐらいの時間でできるだろう」という仕事が、どの業界にもあると思います。そのような仕事に対して、時間見合いで最低工賃を設定するという考え方はあり得ると思います。

立法論として最低工賃より取り組みやすいと考えられるのは、解約規制です。解雇されることが労働者にとって大きな打撃になるように、非雇用型就業者にとっても生活を依存していた取引を突然打ち切られれば同じように大きな打撃になります。非雇用型就業者の生存権を保障するために、民法よりワンランク厳しくした解約規制を導入する方法が考えられます。

新しいチャレンジ

労働基準法の適用範囲を広げることはできないかという質問も受けます。これにはいくつか困難があります。「労働者」は「使用」という言葉を使って定義されていますし、多様で指揮命令という発想がない非雇用型就業者に労働基準法をワンセットで適用することは困難です。また、非雇用型就業者自身が労働基準法の適用を受けたいと考えているかも考慮する必要があります。時間や場所に縛られず自由に働きたいというニーズは、非雇用型就業者の間に一定程度あるからです。労働基準法は刑事的に不利益を及ぼす効果ももつので、適用対象を厳格に判断しようという一般的な傾向もあります。

とはいえ、労働基準法が想定する労働者の幅が広がっているのも事実です。例えば、裁量労働制で働く労働者です。裁量労働制の適用労働者は、使用者から細かい指揮命令を受けない働き方をしています。労働組合としては、労働基準法が想定する労働者の範囲が指揮命令関係のはっきりしない者にも広がっているということを訴えることができると思います。

イギリスでは、「employee」(被雇用者)、「worker」(労働者)、「self employed」(自営業者)のように、雇用労働者と非雇用型就業者の間に「worker」という類型を設けて保護の対象にしています。このように中間の形態を設けることも立法論的には検討課題として考えられます。

労働組合としては、非雇用型就業者の組織化が課題になるでしょう。非雇用型就業者でも労働組合を結成して団体交渉できる場合があります。しかし、発注者との契約が一時的だったり、複数の相手と契約していたりする非雇用型就業者の場合、これまでのように企業別に労働組合を組織することは困難です。労働組合は新しい課題へのチャレンジが問われていると思います。

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