特集2018.04

家族の視点から働き方を見直す「仕事」と「家族」パパたちが家族のために料理をつくれば社会は変わる
「パパ料理」を始めよう!

2018/04/16
パパたちが家族のために料理をつくる。それが「パパ料理」だ。本誌連載でおなじみのパパ料理研究家の滝村雅晴さんに、「パパ料理」誕生のきっかけや、「パパ料理」を始めるための秘訣を聞いた。
滝村 雅晴 パパ料理研究家

─「パパ料理」を始める前の生活は?

「パパ料理研究家」になる前は、デジタルハリウッドというメディアコンテンツ系の教育機関で14年間、働いていました。学校が急成長し、時代の先端をいく仕事をするのが楽しくて、仕事にのめり込んでいました。

長女が生まれたのが33歳のとき。それまでは、会社でどれだけ長く働けるかが自分の中の優先事項でした。夫婦2人で存分に働きました。食事は全部外食でもよかったですし、家には寝に帰るくらい。そんな家に赤ちゃんができて生活が一変しました。

─赤ちゃんが生まれて、家事をするようになったんですね。

家事というと聞こえはいいですが、最初は自分がつくった料理がおいしくて、毎週末凝った料理ばかりをつくっていました。洗い物はせずに、つくりっぱなしで終わり。おいしいところだけやって、酔っ払って寝るということをしていました。

その後、妻とトラブルがあって、自分は家事としての料理をしていなかった、趣味の料理をしていただけだということに気付きました。家族のために料理をしているつもりが間違っていました。

自分がつくりたいものをつくっても家族は喜ばない。家族のための料理は趣味のための料理とは違う。そこで、家族のための料理は男の趣味料理ではなくて、家族のためにつくる「パパ料理」じゃないといけないと気付きました。

─そこから「パパ料理」が生まれたんですね。

「パパ料理」は、妻や子どもがおなかを減らしていることにパパが気付いてつくるお父さんの料理です。妻や子どもがおなかを減らしていることに気付くためには、相手をいつも思いやる気持ちが大切です。その気付きの力は仕事ではなかなか養われません。家族を思いやる中で養われる力だと思います。「パパ料理」は相手を思いやる料理です。

─起業しようと思ったきっかけは?

お父さんが家族のために料理をつくるという「パパ料理」を誰も仕事にしていませんでした。僕は誰もやっていないことをするのが好きなんです。

起業してから今年の4月で10年目に入ります。その間、世の中もだいぶ変わってきました。

この間、さまざまな場所で料理教室を開いてきました。昨年からは、自分が主催する料理教室も始めました。全6回で買い物から料理、後片付けまで一通りの作業を習慣化するための料理塾です。

─どんな内容で開催していますか?

「パパの料理塾」では、(1)気付き(2)理解(3)実践(4)行動(5)習慣化─という五つのメソッドを中心に開催しています。パパたちに、家事や育児の大切さに気付いてもらい、それを習慣化してもらうためには、単に技術だけを教えても意味がありません。気付きから習慣化まで、一つずつステップアップしていくことが大切です。

特に大切なのは「気付き」です。「なぜ自分が家事をするのか」「なぜ家庭を大切にするのか」。これまで家事をしてこなかった男性たちは、その意味付けがなかなかできません。だから、やる気が起きません。料理塾では、その意味付けから始めています。

─どのように気付いてもらっているのですか。

僕の長女の話をしています。僕は長女が生まれてパパ料理研究家になりました。料理研究家になったことで、子どもたちに料理をいっぱいつくって、娘たちと一緒にご飯をたくさん食べられる。そう思っていました。でも、長女は2012年1月に8歳8カ月で天国に旅立ってしまいました。ずっと一緒にご飯を食べられると思っていたのに、食べられなくなってしまいました。

だから、お父さんたちには「家族で食卓を囲める回数は有限です。家族の誰かが病気になるかもしれないし、そうではなくても、子どもはあっという間に大人になります。誰かの話ではなく、自分の身に降りかかる話だと思って、考えてみてください」。そう伝えています。

今日、お父さんたちは仕事が忙しいからといって、家族と一緒に食卓を囲めないかもしれない。けれど、家族と一緒に「いただきます」を言えるのは、その日が最後かもしれない。極端かもしれないですが、そういうことだって起こり得ます。

長女は、亡くなる1カ月前からご飯を食べられなくなりました。僕は料理をたくさんの人に食べてもらえるような仕事をしていたけれど、目の前にいる娘は僕のつくった料理を食べることはできない。つくってもらった料理を食べるのも幸せだけど、自分がつくった料理を食べてくれる家族がいることは、もっともっと幸せです。それが僕が、娘から教えてもらったことです。

─自分の人生にとって何が大切なのかという気付きになります。

自分や家族が健康なのは、当たり前のことではないのだと感じました。仕事をバリバリできるのもある意味で恵まれた環境だと思います。

食べることは生きること。誰かにご飯をつくることは誰かを生かすことです。お父さんたちが今何を優先するのか。家族に対して何をやってあげるべきかを考えてほしいと伝えています。

─受講生の皆さんの反応は?

すごいですよ。劇的に変化します。妻から一生戦力外だと思われていた人が買い物で無駄買いをせず、手際よく料理をして、後片付けまでできるようになります。もちろん、僕の鉄板レシピを伝授しているので料理もおいしくできます。

「パパ料理」の大事なところは、同じレシピを何度もつくることです。おいしかったらまたつくる。そのときに一番うれしいのは、「パパまたあれつくって」という言葉です。

料理塾ではFacebookのコミュニティーを作成して、つくった料理をみんなで共有して、「いいね」したり、アドバイスしたりしています。仲間がいるとがぜんやる気になります。この仕組みも大切です。

─社会的には家事・育児をしない男性はまだまだ多いです。

やっている人とやらない人と両極端になってきたと思います。一番のポイントは、子どもが生まれたタイミングです。それにより生活が一変するので、そのタイミングで男性が変わることが重要です。ライフステージが変化したときが、変わるポイントです。

─妻の皆さんに伝えたいことは?

人生100年と言われる時代です。毎日3食、あと何回料理をつくることになるのかを考えると、パートナーに料理をつくってもらうことは必須じゃないでしょうか。互いが料理をつくれるようになれば、互いの自由度も高まります。

─労働組合に期待することは?

人生の中で、仕事に集中したい時期もあれば、育児や介護のために時間を取りたい時期もあるし、勉強をしたい時期もあります。そういう意味で、長いスタンスでワーク・ライフ・バランスを考え、働く人たちが選択できるようにしてほしいと思います。点だけで見ずに広い視野を持ち、人生全体が豊かになるためのサポートを期待しています。

滝村さんが情報労連のメンバーを対象にして開いた料理教室
特集 2018.04家族の視点から働き方を見直す「仕事」と「家族」
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