「平和四行動」に向けていま知っておきたいこと今こそ民意の結集を
「知事選後」に備えよ!
毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図』『日本はなぜ米軍をもてなすのか』など、共著に『普天間・辺野古 歪められた二〇年』など。
辺野古を巡る現状
「32工程のうち着工はまだ6カ所。2度と後戻りできない状態ではない」
沖縄県の翁長雄志知事は3月24日、同県浦添市で開かれた県主催の「辺野古・大浦湾シンポジウム」のあいさつで、こう強調した。
翁長知事が、辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回を「必ずやる」と宣言してから3月25日で1年が過ぎた。この間、承認撤回に踏み切れず、辺野古新基地建設の工事を阻止できない翁長知事の政治手法に疑問符が付き、「オール沖縄」内部の分裂も表面化。「保守革新を超えた枠組み」の象徴となっていた県経済界の有力者が、相次いで「オール沖縄」を脱退する動きも出ている。
こうした中、夏にも本格的な埋め立てが始まる、と報じられている。メディアの報道も集中するだろう。冒頭の翁長知事の発言は、秋の知事選を前に「あきらめムード」に傾く民意に歯止めをかける狙いもうかがえる。
土砂投入の情報と相まってメディアでは連日、知事の「承認撤回」のタイミングや県民投票に関する動向が伝えられている。だがこれらは、知事選までの駆け引きの面も否定できない。現時点で沖縄県が選択できる政策は限られている。その選択肢についても、これだけ大っぴらに手の内が明かされている限り、ありとあらゆる「合法的」な手段を用いて工事を強行してきた政権内部では対応策を検討済みのはずだ。「県民投票」も「撤回」も「伝家の宝刀」とは言えず、工事を止めるのは困難な状況にある、と考えたほうがいいだろう。
基地反対の民意がカギ
おそらく沖縄県民の多くは、そうした展開を織り込み済みのはずだ。辺野古には基地を造ってほしくない。しかし、「反対」の意思表示をすることに意味はあるのか、という現実的な課題に沖縄県民はすでに直面しているのではないか。
そんな中、4月に入って翁長知事のすい臓に腫瘍が見つかり、手術入院することが明らかになった。翁長知事が知事選に立候補するかは不透明だが、新基地建設に反対する候補は知事選後にどうやって工事を止めるのか、説得力のある形で有権者に提示する必要がある。
だがそれは容易ではない。ただ、知事に圧倒的な民意の後ろ盾があれば、工事が行き詰まる可能性は依然ある、ということは唱え続けられるべきだろう。
沖縄防衛局の地質調査で、埋め立て予定海域に多数の軟弱地盤があることが判明した。報告書は「構造物の安定、地盤の圧密沈下、地盤の液状化の詳細検討を行うことが必須」と警告している。国は否定しているが、埋め立て予定海域に活断層が存在する可能性も専門家が指摘している。
翁長知事がこれらを理由に承認撤回すれば、国は少なくとも司法の場で徹底した情報開示や論理的整合を求められる。そうなれば、司法が承認撤回を「無効」と判断したとしても、技術的難度や環境への負荷などが明らかになり、設計変更申請は避けられないだろう。設計変更は、公有水面埋立法で知事の承認事項と規定されており、知事の判断次第で工事の進捗に影響を与えるのは必至となる。政治的判断が問われる局面で国が警戒するのは、知事に新基地反対の民意の後ろ盾がどれくらいあるのか、ということだろう。
「本土」の民意の責任
日米安保にかかわる問題について、司法が踏み込んだ判断を示すことは残念ながらこの国ではほとんど期待できない。日米の政策変更を促すポテンシャルは、民意に裏打ちされた政治の力しかないと考えている。そのためのカードは県側にまだ残されている。
筆者は沖縄の有権者に、知事選後に備えよ、と呼び掛けたい。今、必要なのは分裂ではなく結集であり、問われているのは「新基地を止めたい側」の大局観だろう。
ここまで「沖縄の民意」を軸に論じてきたが、新基地建設を強行する政府を支えてきたのは「本土」の民意である。沖縄県民に分断を強いてきた国の政策を封じる責務は、「本土」の側にあることを最後に強調しておきたい。