「平和四行動」に向けていま知っておきたいこと[座談会]沖縄在住の組合員が在日米軍基地に抱える思いは?
沖縄通信建設労働組合 嘉手川 のり子 NTT労働組合
西日本本部九州総支部 新里 沙和子 NTT労働組合
西日本本部九州総支部 高良 浩平 NTT労働組合
西日本本部九州総支部 宮城 正樹 通建連合
沖縄通信建設労働組合
日常の中の米軍基地
─日常生活の中で在日米軍基地について考えることはどのくらいありますか。
嘉手川1年ほど前に那覇市から浦添市に引っ越しました。那覇市内では正直そこまで感じなかったのですが、浦添市では夜間の米軍機の騒音が気になります。
宮城事件・事故があるとやはり気になります。オスプレイが落ちたときも身近に感じました。
新里私は車を運転しているときです。荒い運転の「Yナンバー」(米軍車両)のせいで事故に巻き込まれそうになることが頻繁にあります。
高良自分も「Yナンバー」の車が逆走してきたことがありました。飲酒運転の事件もありますよね。
宮城昨年も飲酒運転による死亡事故がありました。「またか」という思いです。事故後は、米軍内で外出禁止令が出たりしますが、2~3カ月すると解除されるので効果がどれくらいあるのかなと。
─騒音はどのくらい感じますか。
宮城オスプレイは22時以降は飛行禁止のはずですが、それ以降も飛んでいます。重低音が響きます。
新里私は沖縄国際大学出身です。大学のすぐそばに普天間基地があって、ヘリの騒音で講義が中断することが何度もありました。
─ほかにもありますか。
嘉手川うるま市で女性殺害事件が起きた時ですね。
宮城昨年も米兵が夜中に民家に侵入する事件がありましたね。
高良自分の後輩も酔っ払った軍人が家に入ってきたことがあるそうです。
宮城軽微な事故や事件なら基地の中に逃げてしまえば大丈夫という考えを持っているから、事件・事故が減らないのかもしれません。
新里地位協定を見直したりすれば変わるかもしれませんね。
基地があるのが当たり前
─基地があることで感じる不安はありますか。
新里ヘリがいつ落ちてくるかわからないという不安はあります。あと、基地があることで有事の際狙われやすいのかな、と。
石川北朝鮮がミサイルを撃ったときは、小学校でも注意を促すプリントが配られたそうです。もしかしたら狙われるかもという不安はあります。
嘉手川戦闘機やヘリが居住地域の上を飛んでいるのが怖いです。アメリカ国内では禁止されている飛行も、日本では禁止されていないことがあるようですし。
高良確かに、問題が起きると嫌だなと思うのですが、基地は生まれた時からあるし、「基地ありき」の生活なので、そこまで頻繁に考える暇もないです。
嘉手川基地があるのが当たり前ですからね。
新里確かにまひしているな、と感じることはありますね。県民も慣れ過ぎてしまって、声を上げることも減っている感じがします。
石川感覚がまひしていると言ったらそうかもしれません。声を上げる人は昔より少ない印象があります。
高良戦争を体験したおじいちゃんやおばあちゃんの方が思いが強いですが、そういう人が減っていると思います。
宮城情報労連の組合員でなければ、平和運動に携わっていなかったかもしれません。組合で活動している分、他の同世代より考える機会が多いと思います。
基地容認派もいる
─組合員以外の人と基地の話をすることがありますか。どのような反応がありますか?
新里二つに分かれますね。組合の平和行動に対して「すごいね」という人もいますが、「基地容認派」の人もいます。容認派の人と話をすると、「行進しているやつか。車線をつぶして迷惑だ」と言われることもあります。そんなときは、私たちは基地反対だけではなく、戦争や暴力がない世界をめざして行動している。基地だけの話ではないと言っています。
高良辺野古のゲート前へ行ったことがあると友人に話したら、冗談交りに「プロ市民か」と言われたことがありました。ただ、反対派の人たちにも「過激」というイメージはありますよね。
嘉手川そういう印象もありますね。私の場合も反応は二つに分かれます。基地で働いていたり、取り引きしたりしている人もいるので、それがなくなったら収入源はどうなるのだろうという話にもなります。基地は嫌だという人もいれば、一概に反対と言えない人もいます。私が少し気になるのは、容認派は基地が必要な理由を具体的に上げるのに対して、反対派は漠然とした理由で反対する印象があることです。
高良自分は一時期、基地で働くことをめざしていたので、基地がなくなるにしても、働いている人たちがどうなるのかが気になります。仮に県外に移設した後にどうなるのか、具体的に発信してもらいたいですね。
嘉手川基地の跡地がすべて観光用の施設になるのかも気になります。
宮城何かと言うと大型の商業施設になりますからね。地元の住民が暮らしやすくなるようになるといいのですが。
変わらない現状に対する思い
─政府が辺野古の基地建設を強行的に進めることについてどう思いますか。
新里出身大学の近くに基地があったので普天間基地はとにかく移設してほしいと思っています。辺野古の基地建設も反対です。新たな土地を提供して、環境を壊してまでやる必要はないと思います。でも、名護市長選挙の結果を見ると複雑な気持ちになります。
高良基地だけの問題ではないとはいえ、名護市民の声ですからね。私は普天間の移設は急いだ方がいいと思います。
宮城自公陣営は選挙期間中、基地問題に言及していませんでしたね。最近になって、沖縄工業高等専門学校の建物が、日本の航空法や米国の高さ制限基準に引っかかることがわかりました。防衛省は最初からわかっていたのに、説明しないまま進めてきた。普天間基地が危ないのはもちろんですが、辺野古も同じです。辺野古の住人が危険な目に遭っていいわけではありません。
─政府は、衆参の国政選挙や県知事選挙で基地反対派が勝っても工事を強引に進めてきましたね。それに対して声を上げても「変わらない」と感じることはありますか。
宮城そういう思いを持っている人は結構いると思います。反対派に投票しても変えられないという思いは大きくなっているかもしれません。
石川結局、普天間基地の移設と辺野古の基地建設がセットになっている限り物事が進みません。そうした中で諦めとか、言っても仕方がないという雰囲気もあるような気がします。
沖縄は差別されている?
─基地がなければこうした悩みもありません。沖縄がたくさん悩みを背負わされていると感じることはありますか。
新里在日米軍基地の割合が高すぎるという不公平感はあります。県外を旅行すると、なぜ沖縄に基地がこんなに集中しているのだろうって理不尽に感じることもあります。それから最近はインターネット上で沖縄の人がたたかれることが増えてきました。沖縄が差別的に扱われている感じも受けます。
石川基地の問題が、どこか遠くの離島で起きていることと見られている気がします。差別されているのではないかと思うときはあります。
高良観光で来て沖縄が好きという人はいますが、もう一つの顔、基地がたくさんあるところも含めて好きと言ってほしいです。オスプレイが東京の横田基地に配備されて、反対運動が起きていると聞きました。自分たちのところに来ると危機を感じるけれど、そうではないとどうしても……。一緒に考えてほしいですね。
嘉手川この間、テレビで「基地があるところが嫌なら引っ越せばいい」というコメントが紹介されていました。
新里沖縄なのに沖縄の人が出て行けと言われる…。
宮城インターネットやSNSが広がったことで、中途半端な情報が広がっているんでしょうね。沖縄の基地問題が本土ではどのように取り上げられているのか気になります。
高良表面的な話しか伝わっていないのかもしれないですね。
嘉手川まずは批判する前に現状を知ってほしいです。私は、小学生の頃、基地は沖縄にしかないと思っていました。嘉手納基地周回行動をして、基地がこんなに土地を使っていることを知りました。私の小学生になるめいっ子も基地は沖縄にしかないと思っています。沖縄県民も県外の人もお互いに基地について知った方がいいし、一緒に解決できる関係性があればいいなと思います。
─全国の組合員にメッセージを。
宮城まずは沖縄に来てもらって、観て、聞いて、感じてほしいです。それが一番ですね。
嘉手川嘉手納基地周辺も歩いて、大きさを感じてほしいです。
新里観光が動機でもいいので、まずは来てほしいですね。一般の組合員の人にも広く平和行動に参加してもらいたいです。