特集2018.05

「平和四行動」に向けていま知っておきたいこと「不都合な真実」隠しと印象操作
沖縄基地問題に見る安倍政権の陰影

2018/05/16
文書改ざん問題などで安倍政権の強硬的な政権運営の手法が明らかになった。その手法は、沖縄名護市の辺野古新基地建設にも同様に見られる。沖縄からのリポート。
松元 剛 琉球新報社
読者事業局特任局長
座り込みをする市民を力づくで排除する機動隊員=4月23日(琉球新報提供)

際立つ「虚構の喧伝」

沖縄の米軍基地問題を巡る安倍晋三政権の対応は、「森友学園」「加計学園」「自衛隊の日報隠蔽」の各問題と通底する。その核心は「不都合な真実」を隠し通して強弁し、主権者を軽んじる姿勢である。呪文のように繰り返す「沖縄の基地負担軽減」「県民に寄り添う」という言説をパズルに例えてみると、ピースが埋まるほど、対米従属の果てに「軍事機能強化」「民意無視」「二重基準」という正反対の陰影がくっきりする。権力を持つ側の圧倒的な発信力にあぐらをかいた「印象操作」「虚構の喧伝」がこれほど際立つ政権はかつてない。その実例を辺野古新基地問題から照らし出したい。

軍事優先が命脅かす

米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設を巡り、人命と安全、環境保全を度外視した新事実が、2018年春になって相次いで発覚している。

4月中旬になって、米軍キャンプ・シュワブからせり出して埋め立てられる予定の新基地が完成した場合、隣接する沖縄高等工業専門学校や同基地内に立つ沖縄電力の送電鉄塔群、辺野古弾薬庫、辺野古区と隣り合う豊原区の公的施設が、航空機の安全運航のために日米がそれぞれ定める高さ制限を超えていることが判明した。飛んではならないはずの米軍機が飛ぶ危険区域に取り込まれ、住民や学生の命が脅かされているが、大手メディアの反応は鈍いままだ。

辺野古集落と国道329号線を挟み、丘を切り開いた土地に沖縄高専の校舎や学生寮が広がる。開校は2004年。現在は学生815人、教職員106人が在籍し、552人の学生が寮で暮らすが、ほとんどの校舎と寮が高さ制限に抵触している。

豊原区では、久辺郵便局などが基準を超えている。多数の爆弾を貯蔵する辺野古弾薬庫の建物も規制に抵触する。だが、防衛省は沖縄電力に鉄塔移設を打診した以外、この事実を地元にひた隠しにしてきた。沖縄タイムスの特報を皮切りに琉球新報も追い、両紙が安倍政権の「不都合な真実」にかみついている。

防衛省は「米側と調整し、高さ制限の適用は除外される」と繰り返すばかりで、詳しい理由を明かさない。米側の施設統一基準は、滑走路から2286メートルの範囲にある工作物の高さを制限している。辺野古新基地の場合、標高約55.7メートルを超えてはならない。

「辺野古唯一」は虚構

辺野古周辺は丘陵地が多く、高い建物もあるため、安全基準を踏まえると、当初から航空基地建設地に適さないことは明白だったはずである。2001年に日米が合意した当初の移設案は辺野古沖2.2キロに滑走路を建設する軍民共用案だったが、06年に沖縄県側の意向を一切聞くことなく、日米は沿岸部にV字滑走路を埋め立てて造る現行計画で合意した。市民の抗議行動を抑え込む政治判断を優先し、滑走路を陸に近づけたのだ。市民の阻止行動が及ばないシュワブ基地内から工事を進めるために計画を変更し、高さ制限違反の事態を招いた。防衛省は無理筋であることを承知した上で、これを伏せ続け、建設を強行してきた。

高専や集落の後に造られることになった辺野古新基地に例外を設けることは、軍事優先の米軍に唯々諾々と従う二重基準そのものだ。

一方、沖縄防衛局が2017年に実施した地質調査により、新基地建設予定海域に活断層が走っている可能性があることもわかった。これは3月に琉球新報が報じて明らかになった事実だ。地震が起きて地盤がずれたり、津波が発生したりすれば、滑走路などの破壊だけでは済まず、有害物質が海に流出する可能性が大きい。さらに報告書は海底地質に「泥状の軟弱地盤」があることにも触れている。滑りやすい弱い地盤の上に巨大な航空基地を埋め立てて造る危険性も浮上した。こうした重大な事実を伏せたまま、ひそかに安全基準の例外を乱発し、安倍政権は新基地建設を強行してきた。「辺野古が唯一の選択肢」と繰り返す説明は虚構性が鮮明になりつつある。

安倍晋三首相が国会で言及したように、「本土の理解が得られない」という政治的理由で沖縄県内の「辺野古」にこだわっているにすぎない。

安倍政権による着工から満1年の辺野古新基地の建設海域。護岸が伸び、自然環境への脅威が強まっている=4月24日(琉球新報提供)

「安保5条適用」の印象操作

トランプ米大統領の就任後、17年2月にあった日米首脳会談で、尖閣諸島は、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象と確認され、大々的に報じられた。まず押さえねばならないのは、米国が日米安保第5条を適用するということは「米国の議会に諮る」という意味にすぎないということだ。

日米安保条約5条は、日本の施政下にある領域に対する武力攻撃が起きた場合、日米両国が「自国の憲法上の規定及び手続きに従って」対処する定めだ。合衆国憲法は「戦争の宣言」を政府ではなく、連邦議会の権限としている。

米軍兵士が日本の領土を守るために血を流すだろうか。もし、尖閣で日中の紛争が起きた場合、その可否を決める権限は米議会にあるが、琉球新報の歴代ワシントン特派員の知日派を含めた米側の専門家への取材によると、米軍が尖閣防衛のために立ち上がる可能性はゼロに近く、非現実的だ。安倍政権にとって「不都合な真実」の最たるものだろう。

日本の外務官僚と防衛官僚は政府間合意に基づくこの事実を誰よりも熟知しているはずなのに、尖閣で危機が勃発すれば、あたかも米軍がすぐに駆け付けるかのような情報操作に走っている。2015年4月に定まった日米新ガイドラインによると、島嶼防衛は自衛隊が主体的に担い、米軍の任務はあくまで補完的役割にとどまる。ここでも在沖米軍の出動は想定できないのである。

「負担軽減」の虚飾

安倍政権が振りかざす「沖縄の負担軽減」は虚飾に満ちている。16年12月、沖縄本島北部の「北部訓練場」の過半約4000ヘクタールが返還され、菅義偉官房長官は「戦後最大の返還」と胸を張って見せた。だが、返還地は、米海兵隊が戦略報告2025で「使用不能な土地」と明記した使いものにならない土地だった。直前に危険機種MV22オスプレイが名護市の浅瀬に墜落した事故への県民の怒りと不安が渦巻く中、菅長官はわざわざ沖縄に退任直前のケネディ駐日米大使を招いて盛大な返還式典を挙行してみせた。

「使えない土地」を返す見返りに、米軍は東村高江などで最新のヘリ着陸帯を六つも手中にして焼け太りした。負担軽減は名ばかりで、北部訓練場の機能が格段に増強され、本島北部が軍事要塞化しつつあることは、ほとんど報じられなかった。

在沖海兵隊の存在意義にも疑義が膨らんでいる。在日米軍再編により、沖縄の主力歩兵部隊の約8000人がグアムに移ることになっている。運ぶべき戦闘部隊の大半が沖縄から姿を消すのに、輸送部隊が居座る辺野古新基地建設に巨費が投じられる壮大な無駄に対しても、安倍政権は頬かむりを貫こうとしている。沖縄で定点観測すれば、辺野古新基地を造る理由は崩れるばかりである。

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