「平和四行動」に向けていま知っておきたいこと米軍ヘリ落下物事故
緑ヶ丘保育園園長の思い
寄せられた誹謗中傷
12月7日午前10時20分頃。「ドーン」という激しい音がした。1歳児たちが過ごす部屋の厚いトタン屋根が、落下物によってへこんだ。
園庭では2歳児、3歳児クラスの児童20人余りが遊んでいた。「一歩間違えば、大惨事になっていました」。緑ヶ丘保育園の神谷武宏園長は憤りを隠さない。
米軍は、落下物が大型輸送ヘリコプターCH53Eの部品だと認めた。だが、ヘリ飛行中に上空から落ちたものではないと否定している。
事故の翌日から、保育園には、「自作自演だ」などと誹謗中傷するメールや電話が寄せられるようになった。
「事故から1週間くらいは1日10件くらいメールが来ました」。メールには、「クソサヨク」「反日活動家」といった低劣な言葉がつづられていた。
「特に困ったのは電話です。私が電話を取ると、職員ぐるみの自作自演だろうと怒鳴ってくる。『お前たちのところに通う子どもは』と子どもたちを悪く言ってくる。さすがに頭にきて言い返すと相手はトーンを下げました。かけてくるのはほとんど男性。保育園が女性の職場だから電話してくるのかと思いましたね」
父母会が署名活動を展開
事故から3日後、父母会は緊急の会合を開き、「嘆願書」を全会一致で作成した。(1)事故原因の究明および再発防止(2)原因究明までの飛行禁止(3)普天間基地に離発着する米軍ヘリの保育園上空の飛行禁止─をその内容とした。
緊急会合の翌日から、父母会は署名活動を展開した。2月16日までに12万6907筆を集めた。父母会の代表者は2月13~14日に東京を訪れ、内閣官房、防衛省、外務省へ署名を提出した。
「役所の人たちの回答は通り一遍。決まった言葉だけ。中間管理職だから自分の言葉を言えないのはわかっています。でも、人と話している感覚はしなかったです」と神谷園長。父母会の一行は陳情後、持ってきた園児たちの写真を見てほしいと伝えた。対応した担当者の半分くらいが写真を見た。
「写真を見ながら、本音を話してくれる人もいました。希望は捨てていません」
魔法が解けた
NHKの情報番組「あさイチ」が父母会の活動を特集した(3月28日)。取材を受けた母親は、事故後に基地問題に向き合うようになった気持ちの変化を「魔法が解けた」と表現した。
「沖縄では魔法がかかっていないと生きていけないんですよ。基地の過重負担という状況で、基地の周りに住むことは、『見て見ぬふり』をしないと生きていけない。基地の中で働いている人もいるし、米兵と結婚している人もいる。家族の前で米軍反対と言いづらい人もいます。沖縄は、70年以上、基地があり続ける中で、そういう構図の中に置かれてしまいました」と神谷園長は訴える。こうした状況の中でも、父母会のメンバーは基地問題と向き合った。
「お母さんたちは辺野古にも行ったことがない人たちですよ。わが子の身に危険が迫って初めて、自分たちの問題だと気付かされたわけです」
「その視点は『命』です。『命』の問題に向き合うとき、私たちは問題を共有できます」
「なぜ沖縄だけに押し付けるのですか。これは日本の問題です。皆さんの考えが変わらないと問題は解決しません」
「皆さんには想像力を働かせてほしい。これは『命』の問題と気付くとき、問題を共有できるはずです」
保護者たちは4月から「チーム緑ヶ丘1207」という組織を発足させ、活動を継続している。