特集2018.12

社会とつながる労働組合運動明るく誰もが参加しやすい環境で
子ども食堂が地域の結節点に

2018/12/12
近年、生活困窮家庭の支援として全国的な広がりを見せている「子ども食堂」。組合員がボランティアとして参加する「川口こども食堂」を訪ねた。

「川口こども食堂」は、2016年3月にスタートした。立ち上げた佐藤匡史さんは建築系の企業に勤める会社員。19歳の時、父親の経営する会社が倒産し、生活困窮を体験した。

「19年暮らした大阪を離れて知らない土地に放り出されました。私は社会人として生活できるようになりましたが、もっと若い頃に生活困窮に陥っていたら、そうならなかったかもしれません」

社会人になってからも生活困窮に関する問題意識を持ち続けた佐藤さんは、児童養護施設などでボランティア活動に従事した。子どもたちと直接接するボランティアに携わりたいと考えていた時に「子ども食堂」のことを知り、川口市の社会福祉協議会に企画書を持ち込んだ。少しずつボランティアのメンバーが集まり、「川口こども食堂」がスタートした。2018年4月からは川口中央福音自由教会のスペースを借り、教会が実施してきた「ホープ食堂」と合同で「川口こどもホープ食堂」を月2回、実施している(隔週土曜日、教会主催が1回、「川口こども食堂」主催が1回の計2回)。

誰でも参加しやすく明るい雰囲気

食堂では、ボランティアが食事をつくり、100〜300円かもしくは無償で料理を提供。子どもや保護者にとってのコミュニケーションの場となっている。取材した日はボランティアと子どもたちなどの約15人ずつ計30人ほどが参加した。

「川口こども食堂」の雰囲気は明るい。この活動にボランティアとして参加するNTT労働組合データ本部の組合員・粕谷真紀子さんは、「川口こども食堂は、ご家庭の環境を問わず、誰でも気軽に参加できるにぎやかな雰囲気を全面に出しながら、実際に支援が必要なご家庭のお子さんもケアしているという点で、理想的な子ども食堂のあり方であると感じます」と話す。佐藤さんも、「地域の再生というか、近所の人と料理をお裾分けして、一緒にご飯を食べるような、アットホームな関係をつくり直せればいいなと思っています」と語る。その言葉の通り、食堂は和やかな雰囲気で誰でも参加しやすいものになっていた。

誰でも参加しやすい環境を準備しながら、佐藤さんたちは来場する子どもたちの生活環境の変化などに気を配っている。「明るい雰囲気の中でも困難を抱えた子どもがぽつんと訪れてくれたりします。そうしたケースでは、主任児童委員(児童を専門とする民生委員)の方など専門家と連携しながら、状況を改善できるように模索しています」と佐藤さんは説明する。

食事が地域の結節点に

「川口こども食堂」は、さまざまな分野で働く人たちをゲストに呼び、自分の仕事について子どもたちにレクチャーする時間を設けている。「子どもたちは自分の知っている職業の中から、将来なりたい仕事を選ぶ傾向があるそうです。この時間で、少しでも選択の幅が広がれば」と佐藤さんは狙いを話す。労働組合も協力できる分野だ。

課題の一つは、困難を抱えた子どもたちへのアウトリーチ。多くの子ども食堂が同様の課題を抱えている中、「川口こども食堂」では、そうした子どもたちとの接点を増やすために、制服や運動着のリユース販売を計画している。

ボランティアに参加する大人も新しいネットワークをつくっている。どの子どもにとっても、大人と話す良いきっかけになっている。一緒に食事の準備をし、食卓を囲む。「川口こども食堂」は、地域の一つの結節点になっている。

川口こども食堂のHP:https://www.facebook.com/kawaguchi.kodomoshokudo/

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