特集2018.12

社会とつながる労働組合運動地域とつながり、行動する
「社会から期待され、共感される運動」へ

2018/12/12
情報労連は2006年、「情報労連21世紀デザイン」をまとめ、運動の方向性を示した。「社会から期待され、共感される労働組合」になるため、地域社会との連帯などを掲げている。
春川 徹 情報労連政策局長

「情報労連21世紀デザイン」とは

情報労連は、労働運動を取り巻く時代や環境の変化を踏まえ、新たな運動の方向性と政策を掲げる上での根本的な考え方を明確にするために、第42回定期全国大会(2003.7.10)の決議の下、経済成長を前提とした社会を見直し、人々の「自立・自律」と「協力・協働」による「暮らしやすい社会」を21世紀にふさわしい社会と位置付け、そのビジョンの具現化に向けて論議をスタートした。

以降、情報労連内部での論議に加え、外部機関(NPO等)との意見交換や構成組織との諸会議での論議等を経て、3年後の第45回定期全国大会(2006.7.19)に、「情報労連21世紀デザイン」を取りまとめた。

この「情報労連21世紀デザイン」は、現在に至る12年の間、情報労連のビジョンとして、さまざまな政策提言や活動の源流となっている(なお、第57回定期大会(2018.7.13)では、時代の変化に合った表現に改めるなどの最新化を行った)。

この「情報労連21世紀デザイン」がめざす「暮らしやすい社会」とは、性別や年齢の違い、障害の有無、貧富の差などにかかわらず、「ケイパビリティ(選択可能な生き方の幅)」が誰にでも平等に保障される社会である。

具体的には、(1)経済的な豊かさだけではなく、多様な価値観が尊重される(2)個人のレベルにおける、自立・自律を前提とした自分らしさ、自己実現、多様な生き方ができる(3)多様な生き方の選択肢の拡大と家庭生活や地域コミュニティーなどの活動に向けた時間の創出ができる─社会を指している。

そして、「暮らしやすい社会」を実現するために、情報労連21世紀デザインでは、「総合労働政策」「社会保障政策」「情報福祉政策」─の三つの政策を掲げるとともに、個々人の自立・自律と協力・協働を促す「行動」を提言し、三つの政策と自らの行動を基本とする着実な前進の下、「暮らしやすい社会」の実現をめざすこととしている(下記図表参照)。

また、「総合労働政策」の中で、「時間主権の確立」を提言している。これは、誰もが労働時間を見直すことで仕事と家庭生活の両立を果たし、市民社会との協力や協働などに費やせる自由時間の創出に向けることであり、個々人の自立・自律的な生き方の充実を可能とするとの考えに基づくものだ。そのため、この「時間主権の確立」を図ることによって、私たち一人ひとりの「行動」への取り組みが可能となる。

図表 情報労連21世紀デザインの全体イメージ

「行動」がなぜ必要なのか

情報労連がめざす「暮らしやすい社会」像は、先述の通りであるが、その実現は情報労連単体の取り組みだけでは困難である。そのため、その実現に向けては、社会との価値の共有が不可欠であり、地域とのつながりやコミュニティーの形成、さまざまな団体との連携など、私たちが地域やコミュニティーの一員として参画・行動するなど活動の幅を広げて取り組む必要がある。

また、一方では情報労連のスケールメリットを生かすことによる社会貢献も可能であり、これらの取り組みの積み重ねが、労働組合が社会に欠かせない存在として、社会からの期待と共感につながってくる。まさにこれらの取り組みそのものが「情報労連21世紀デザイン」の示す「行動」である。

この「行動」の基本は、これまでの企業内社会中心の活動にとどまるのではなく、労働組合・組合員(家族含む)が自らの活動ベース(プラットフォーム)を拡大し、自らの行動によって、地域やコミュニティーなどで地域住民・NPO・市民団体・教育機関などと連携し活動を行うものだ。

情報労連は、労働組合・組合員(家族含む)による自らの「行動」を基本に、より多くの組合員(家族含む)がさまざまな活動に参画できる仕組みづくりなどの環境整備を図るとともに、労働組合の特性を生かした活動として、行政や地域住民、NPOなどと連携した防災・減災への貢献や子育て・介護支援、教育機関との連携、組織外へのICTスキル向上機会の提供など、さまざまな「行動」を掲げている。

具体的な活動内容

情報労連が「行動」の具現化して取り組むものとして、「明日Earth」がある。これは、明日の地球をつくるための活動の総称であり、その考え方のベースは、争いのない平和な世界をつくる、自然を守り持続可能な地球をつくる、貧困をなくし子どもたちの明るい未来をつくる─ことだ。

具体的な内容は、平和四行動(沖縄、広島、長崎、根室)をはじめ、被災地ボランティアや環境保全活動、大学と連携し学生に働くことの実態や魅力発信を行う「明日知恵塾」「愛の基金カンパ」やプルタブ回収運動など多様な取り組みを継続的に行っている。いずれも労働組合・組合員(家族含む)の自らの行動を基本に、日本全国の仲間がそれぞれの地域で活動し、同じ想いを持つ地域や団体の人々のつながりを深めながら、取り組みを進めている。

今後の展望

社会から期待され、共感される運動のさらなる展開に向けては、現在、取り組みを行っている「明日Earth」を継続・発展させていくことが重要となる。そのためには、労働組合・組合員(家族含む)の活動ベース(プラットフォーム)の拡大と充実が必要であり、その環境整備を引き続き行っていかなければならない。地域社会等とともに新たな価値を創造し、社会と価値を共有できる活動を私たちが実践することが、「暮らしやすい社会」の実現への一歩となる。

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