特集2019.04

職場の防災・減災を進めよう自治体職員のメンタルヘルス
原発被災自治体職員の意識調査から

2019/04/12
災害発生直後の避難所運営も、その後の復興支援でも、自治体職員の働きは欠かせない。防災・減災を進める上でも、自治体職員のメンタルヘルスケア対策を考えることは大切だ。自治労福島県本部の澤田精一書記長に話を聞いた。
澤田 精一 自治労福島県本部
書記長

多い早期退職者

東日本大震災は、震災後8年が経過しても自治体職員にさまざまな影響を及ぼしている。

自治労福島県本部では、県内加盟単組(81単組、約1万7500人)の早期退職者やメンタル疾患休職者の数を独自に調査している。それによると、2011年度の早期退職者は434人、メンタル疾患休職者は232人だった。翌年度は早期退職者173人、メンタル疾患休職者は61人に減少したが、その後は数が増え、17年度は172人、191人、18年度は244人、184人と高止まりしている(グラフ(1))。自治労福島県本部の澤田精一書記長は「震災後、時間が経過しても深刻さが変わっていません。避難が続いている自治体などでは、より深刻になっている地域もあります」と解説する。

グラフ(1) 福島県内単組の早期退職者等の推移
出所:自治労福島県本部

人手不足と経験不足

自治労福島県本部は、原発被災自治体職員の意識や生活環境を明らかにすることを目的に、原発被災自治体職員を対象としたアンケート調査(第2次)を2017年11〜12月にかけて実施した。関係自治体の正職員・再任用職員・臨時非常勤職員など合わせて2530人を対象とし、1664票の有効回答数を得た。

調査の背景には、いくつかの課題があった。一つは、常態化する多忙化だ。対象自治体では通常業務に復興業務が加わり、決算換算(2016年度)で見ると復興に関する歳出は通常業務の歳出の約3倍に上る。澤田書記長は「自治体や職場によって異なりますが、過労死レベルの労働時間で働く職員もいます」と打ち明ける。

だが、その一方で正職員数は震災前とほとんど変わっていない。復興事業がいつまで続くかわからないので当局が採用を抑制しているためだ。人手が足りない部分は臨時・非常勤職員や他自治体からの派遣職員などで埋め合わせているが、こうした職員は全体の半数を占めている。

調査では働く上でのストレスについて聞いている。それによると「職務上の知識・経験不足」をストレスと感じている正職員は8割以上に上り、全体でも約7割に上った(グラフ(2))。「多忙化(職員不足)」も7割近くの職員(全体)がストレスを感じていた。

「多忙化の背景には人手不足のほかに職員の経験不足もあります」と澤田書記長は解説する。震災後には、正職員の中途退職が相次いだ。その結果、正職員のうち震災後に採用された職員は約4割に上る。震災後に採用され、経験を積む前に慣れない復興業務などを任されることも少なくない。

「復興事業は誰しも初めてですから。放射線対策など経験がないまま住民と接しないといけません。人手不足で若いうちに係長や課長になって、責任ある立場で説明に臨むことも少なくありません。精神的な負担になるはずです」と澤田書記長は話す。

グラフ(2) 働く上でのストレス(全職員)
出所:自治労福島県本部「原発被災自治体職員アンケート調査(第二次)」

定年まで働き続けられるかわからない

もう一つの課題として、生活環境がある。震災前から働いている正職員のうち約6割が、現在の居住地が震災前と異なると回答。震災後、別れて暮らす家族がいる正職員の割合は約5割。飯舘村や富岡町などに限定すると、その割合はさらに高まる。「避難先からの長距離通勤が負担になっている職員もいます」と澤田書記長は話す。

「職員が辞める理由はたくさんあります。放射能に対する恐れで辞める職員もいましたし、家族との別居といった家庭の問題で辞めた職員もいます。復興事業がいつまで続くか見通しが付かないことが、心の負担になっています」

実際、正職員に定年までの就労意向を聞くと、「定年まで働くつもり」と答えた人は5割弱に過ぎなかった。「こんなに低いとは思わなかった」と澤田書記長は驚きを隠せない。

調査の自由記述欄には「何をしたら、どこまでが復興の終わりなのかわからない」「震災事故が原因で住民も職員も人が変わってしまった」「7年間一度も落ち着いたことはない。異常なテンションである」「もえつきた」といった言葉も並んだ。

復興を支える自治体職員

震災当時、澤田書記長は南相馬市に勤務。地震発生直後から避難所対応などに当たった。「家族4人が犠牲になった職員もいました。自分のことも顧みず、使命感に燃えて避難所対応した職員もいます。ただ、時間の経過とともに考えることも増えてしまうはずです」と話す。その上で、「津波の被害を直接見たり、住民から厳しい言葉を浴びたりして、ストレスを抱えた職員も少なくありません。フラッシュバックやPTSDを発症している職員もいます」と言う。

「自治体職員のメンタルヘルスの課題は、熊本や北海道などの他の被災地でも起きていると聞いています。福島の体験を教訓にしてほしい」と澤田さんは訴える。

対策として澤田さんは、人員の補てんや、職員へのカウンセリング、コミュニケーションを含む予防策などを挙げる。ただし、小さい自治体ほどメンタルヘルス対策が難しいため、広域での対策の必要性を訴える。また、労働組合としてもメンタルヘルス対策を春闘要求に盛り込んだり、独自調査を展開したりして、対策の必要性を訴えている。

「復興事業や原発事故への対策はこれからも続きます。行政の立場からも復興をしっかり支えなければいけません。それを支えるのは、そこで働く職員です。職員が健康で働き続けられることは復興のためにも大切だと考えています。情報発信を含め、市民の皆さんの理解を得ていきたいと思います」

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