渋谷龍一のドラゴンノート2019.10

【第3編】職場~企業と「カイシャ」・作法の違いを知っていますか~買いたたき2

2019/10/15

愛知県経営者協会『多様な人材の活用に関する実態調査報告書』は、珍しくカイシャが正直に買いたたきを認めています。正社員と同じ仕事をしているパートタイマーの賃金が正社員と同じという企業はたった5%。多くの企業では正社員の4割から7割の賃金です。これは時給のことで、ボーナスは半数の企業が支給せず、支給する企業も正社員の半額以下です。「非」正規とは「非」同一賃金労働者です。

さらに、第23話「戦力なのに戦力外」で述べたように、非正規最大勢力の主婦パートや学生アルバイトを大戦力だと広言しているのに社会保険料を負担していません。人件費の信じられない軽さこそ、買いたたきです。

なぜ、主婦パートだと低賃金でよし、とされるのか。実は男性正社員のように長時間労働者や過重労働ではない女性の労働者だからそれでよし、と決めつけられているからです。

そんなばかな、賃金は労働市場で決まるのだ、と経済学者は反論するでしょう。では、とてつもない長時間労働者の代表例で過労死や自死がみられる教員や医師はどうでしょう。学校の先生だから、お医者さんだから、大切な人間を預かっているのだから、そういう職業を選んだのだから、と保護者や患者だけでなく、多かれ少なかれあなたもそう思っていませんか。同じように主婦パートの賃金も低くてよいと思っていませんでしたか。この低賃金が非正規に広がるのです。

非正規賃金の買いたたきで、カイシャのもうけはいくらになるのでしょう。正社員と同じような働きぶりをみせるパートの賃金格差分と社会保険料回避分の合計が1時間ごとに2000円だとすると、1万人のパートを雇うカイシャは、1時間2000万円の利益をたたき出します。8時間で1億6000万円、24時間で4億8000万円です。この額が非正規労働者の苦しみの指標の一つです。「労働者の宿命」の重さを思い知ります。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
『女性活躍「不可能」社会ニッポン原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)で2016年貧困ジャーナリズム賞を受賞。
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