渋谷龍一のドラゴンノート2018.12

【第2編】働く〜もう「非正規社会」だって わかっていますか〜戦力なのに戦力外?

2018/12/12

この連載で繰り返し述べてきた「日本のキホン」を続けてきた代償が、主婦パートに回されていることを理解するには、主婦パートを母親や妻と見るだけでなく、労働者だと認める必要があります。労働の話を続けてきたのはこのためです。

パートタイマーの賃金は低くて当然と思い込まされてきました。本来家庭にいる人が企業に出てきて「お気楽な仕事」「片手間の仕事」をしているというのです。そんな仕事ぶりなら副収入用の賃金でよくて、大黒柱である夫の収入とは差があって当然というわけです。しかし、いまや主婦パートの9割が正社員の経験者です。男性と同様に学生時代を過ごして卒業し、就職して男性と同等に仕事をしてきた人が企業に戻るのですから、戦力になって当然です。

それなのに低賃金のままです。税金と社会保険料による年収の逆転現象を避けるための「壁」もあって、企業は無理して主婦パートの賃金を上げなくてよいのです。

会社で「あなたは戦力です」と言われても戦力外の賃金ですし、一人前の労働者と見なさない税や社会保険制度のままです。あなたも「副収入」という言葉に引っ張られていませんでしたか。実は、家計が苦しく辞めるわけにはいかないことを見透かされ、つけ込まれているのが、非正規労働者で最も多くを占める主婦パートです。非正規問題の原型なのです。

同じように学生アルバイトに正社員のような役割や責任が求められています。賃金はやはり低いし、もちろん扶養家族。でもバイトを辞められない事情があるし、思い切って辞める決心をしても辞めさせてもらえない。売れ残り商品まで買わされています。なぜこれほど自信満々につけ込まれるのか。ブラックバイトというと、まるで別物のように聞こえますが、実は非正規問題の原型である主婦パートの応用です。戦力なのに戦力外扱いで一人前の労働者とは認めない。企業はこのビジネスモデルのテスト走行をもう終えているのです。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
『女性活躍「不可能」社会ニッポン原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)で2016年貧困ジャーナリズム賞を受賞。
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