特集2019.10

「共助」をもっと考えよう個人でもなく国家でもなく
中間団体である労働組合が必要な理由

2019/10/15
自助努力だけではなく、国家権力による統制だけではなく、その中間にある人々がつながる中間団体があるからこそ、主体性に基づく社会が生み出される。労働組合という中間団体の意義を考える。
中島 豊一 情報労連アドバイザー
特定社会保険労務士

虚実が交錯する世界で

「インスタグラム」では周到に準備された「ばえる」画像が拡散し、「いいね!」をお金で買う「インフルエンサー」もいます。インターネットは神のごとく何でも教えてくれますが、逆に何が真実なのかわかりません。このように虚実が交錯する世界で、人々はニヒルがクールだと考えるようになってはいないでしょうか。

真実を見失った人々

1991年に独裁的計画経済が否定された一方、2008年に新自由主義が世界恐慌を引き起こした結果、人々は真実を見失い、蹴落とし、蹴落とされる哲学なき経済にのめり込んでいます。

そのため労働者の現実は過酷です。情報労連には、「ノルマ未達成で賃金を半額にされた」「年休は社長が与えるものだと言われた」「多重請負で自分がどの会社に所属しているかわからない」などの労働相談が寄せられています。

また、厚労省労働局には毎年100万件以上の相談があり、相談内容のトップはいじめです。いじめは弱い者をいじめる醜い差別です。現実の日本では差別が横行し、労働分配率は下がり続け、労働者の人間的尊厳は軽んじられています。その上、AIによる人間疎外の危険性も高まっています。

人間的尊厳を守ることこそ真実

この現実に目を閉ざすニヒルは思考停止であり、AI時代には人間の真実を探求することこそクールです。真実とは何か。それはすべての人々の人間的尊厳を守ることです。なぜそれが真実と言えるのか、それは人間が理性により合理的に思考すれば必ずたどり着く結論だからです(カント)。そしてそれは「正義」と呼ばれます(ロールズ)。ですから、労働組合が労働者の人間的尊厳を守る労働条件を確立することは正義です。

凛として立つ労働組合

しかし、例えば「働き方改革」が労働者にとって有利であっても、それが国家による改革なら、労働者の主体性を弱体化させ国家への依存度が増し、やがてパターナリズムを経て独裁国家を生むでしょう。

一方、すべてが自己責任とされるなら、弱い者ほど差別される不寛容で不安定な社会が形成され、不安定な社会を統治するため国家権力が強化されるでしょう。それを許さないのが、NPO、協同組合、労働組合などの、国家でもない民間でもない中間団体です。中間団体が人々の社会参加を拡大することにより、国家から価値観を強要される社会でもなく、蹴落とし蹴落とされる自由放任社会でもない、国民一人ひとりの主体性に基づく社会を創造することができます。

労働組合は生産現場の最前線に位置し、労働者一人ひとりの声を集めることができます。だから技術革新の主体は会社よりむしろ労働組合であり、同時に労働組合は民主主義の推進母体です。だからこそ労働組合は、憲法や労組法により特別な地位が与えられており、国家、政党、企業から独立し、正々堂々、凛として立つ存在なのです。連合がめざす「分かち合い社会」は、個人でもなく国家でもない中間団体である労働組合の躍進なくしては実現しません。


【参考図書】

・「分かち合い」社会の構想 連合総研編 岩波書店

・ロールズ正義論入門 森田浩之著 論創社

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