特集2019.10

「共助」をもっと考えよう金融分野における共助
働く人のための金融機関「ろうきん」

2019/10/15
1950年に生まれた「ろうきん」は、金融セクターから排除されていた労働者の金融へのアクセスを可能にした助け合いの精神から生まれた金融機関だ。金融分野における共助の取り組みを紹介する
一般社団法人全国労働金庫協会 進藤 真 組織渉外部長(右) 村上 貴幸 経営企画部長(左)

戦後の助け合いから生まれたろうきん

金融の分野にも共助の世界がある。働く人たちの助け合いの中から生まれた金融機関ろうきんがそれだ。

ろうきんはその成り立ちからして銀行とは異なる。1950年、岡山と兵庫に労働者のための金融機関「労働金庫」が誕生した。戦後、働く人たちのお金を借りる場所は高利貸しや質屋に限られ、銀行は企業にしか融資しなかった。そんな中、働く人たちは資金を出し合って自分たちの金融機関をつくった。

こうした成り立ちの違いがろうきんと銀行の原理の違いに反映されている。銀行が株式会社で利潤追求を目的とし、その利益を株主に配当するのに対し、ろうきんは非営利組織であり、利益は主に組合員である会員に還元される。また、銀行は銀行法に規定されるのに対し、ろうきんは労働金庫法に規定される協同組織だ。労働金庫法は1953年、議員立法によって施行された。運動があって、それから法律ができたのだ。

「すごい経営者が設立したのではなく、働く人たちが自分たちのためにつくったのがろうきん。働く人たちのための金融機関という理念が一番大切です」と一般社団法人全国労働金庫協会の進藤真組織渉外部長は話す。

働く人に寄り添ったサービス

この成り立ちの違いが商品・サービスにも反映されている。ろうきんは営利を目的としていないので、生まれた利益は利用者に還元される。カードローンなどの金利が低く設定できるのもそのためだ。それだけではなく、例えば1995年の阪神・淡路大震災の際は被災者への「緊急特別融資制度」をどの金融機関よりも早く発足させた。2011年の東日本大震災でも震災直後から緊急特別融資制度を展開。その後の自然災害でも、一般の銀行よりも低い金利で災害救援ローンを実施している。

さらに「派遣切り」が社会問題となった2008年には厚生労働省と連携し「就職安定資金融資制度」を取り扱ったり、「緊急生活応援ローン」を実施したりした。バブル崩壊やリーマン・ショックのような金融危機に直面しても、ろうきんの経営が揺らぐことはなかった。投機的な融資を行ってこなかったからだ。

また、ろうきんはさまざまなCSR活動を展開している。各地でNPO・NGOなどへの助成制度を設けており、市民社会とのネットワークを強めている。2019年3月に定めた「ろうきんSDGs行動指針」では、NPOや社会福祉法人などと連携し、地域の社会的課題の解決に取り組んでいくとうたっている。

「SDGsの『誰一人取り残さない』という目標や、誰もが金融にアクセスできるという『金融包摂』の考え方は、ろうきんがもともと取り組んできた運動と同じです」と経営企画部の村上貴幸部長は話す。SDGsがめざすことに元来取り組んできたのがろうきんなのだ。

助け合いが一層大切に

「ろうきんは働く人たちの共助の中で生まれた金融機関です。助け合いが求められる中で、ろうきんに求められる役割は一層高まっています」と進藤部長は話す。中でも進藤部長は、「銀行よりも身近で、相談しやすいことがろうきんの一番の強み」と強調する。働く人たちの立場に立って話すことができるのは、働く人たちの助け合いの金融機関だからだ。

また、進藤部長は、「労働組合が組合員との一体感や助け合い感覚を高めるためのツールとしてろうきんを活用してほしい」と訴える。そのために労働組合には、組合員の生活設計・生活防衛・生活改善などをテーマにした学習会やセミナーを活用してほしいと話す。

村上部長は「自己責任が強調される一方で、助け合いはこれからもっと注目されていくはず」と話す。「これからの時代、志を同じくする人たちと手をつないで助け合っていかないと、みんなが幸せになれないと思っています。ろうきんは金融というポジションで、地域や労働組合をつなぐネットワークを構築する役割を果たしていきたい」と語る。

世界から注目されるろうきん

ろうきんの取り組みは、金融セクターから排除されていた労働者を金融にアクセスすることを可能にした取り組みとして、世界からも注目されている。今年3月、国際労働機関(ILO)は「日本において70年にわたり勤労者の金融アクセスを強化することで、包摂的な社会を構築してきた取り組み」とする報告書を発行した。この報告書の結論は次の一節で締めくくられている。

「伝統的な金融機関は自動化された意思決定のアルゴリズムを用いており、一人ひとりの顧客のニーズに合わせた柔軟なサービスを提供して、最も社会的に弱い立場の人が多重債務に陥った際に支援するようなことは通常ない。労働金庫は人間味のある、顧客に合わせた働き掛けをして、深刻な債務や自己破産に陥ることを防ぐ、労働者の銀行であることを示してきた」

金融と助け合いというとすぐにイメージが結び付かないかもしれないが、実は身近なところに世界からも注目されるような金融機関がある。その助け合いの実践をより強くしていくのは私たち働く人である。

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