労働組合は、だから必要だ!「派遣かふぇ」主催者に聞く
派遣労働者から見た労働組合
「派遣かふぇ」を始めたきっかけ
「派遣制度で困ったことのある人たちと話をしたかった」
派遣社員として働く「yurara@派遣社員」さん(ツイッターアカウント@yurara0601)は、2018年11月、派遣で働く人たちを集めて「派遣かふぇ」を開いた。派遣で働く人6人と関心を寄せてくれた数人が集まった。慶弔休暇や通勤費のこと。台風災害時の出社の扱いのこと。正社員との人間関係のこと。共通の話題で盛り上がった。「悩んでいるのは自分一人ではないとわかった。初めて会ったとは思えない雰囲気でとても楽しかった」とyuraraさんは振り返る。
yuraraさんは就職氷河期世代。最初の就職先での雇用形態は特定派遣だった。その後、別の会社で正社員として働いてきたが、育児と仕事の両立などの事情があり退職。その後、パートなどを経て、派遣社員として働いている。これまで、正社員になりたいと派遣先に直接雇用を申し入れたことがあったが、かなわなかった。自分の職場では、若い世代も正社員になれないまま。若い派遣社員が正社員と同じように働きつつも、数年後には正社員との格差が開いてしまう現状に疑問を抱いてきた。
声を聴いてもらおう
yuraraさんは2018年2月、立憲民主党の「立憲かふぇ」に参加した。「立憲かふぇ」に参加したのは、「政治家や官僚が現場の実情を知らないだろう」と感じていたから。「草の根の声を聴くと言っていたので、聴いてもらおう」と思った。
その際、出席していた議員に派遣の現状を伝えたところ、党の厚生労働委員会のメンバーにメールを出してくれ、その後、数人会ったうちの一人が情報労連組織内議員の石橋みちひろ参議院議員だった。yuraraさんは「派遣労働者の待遇改善に積極的に取り組んでいる政治家がいて驚いた」と明かす。石橋議員をゲストに「派遣かふぇ」を開きたいと要望したところ、快諾を得た。
「派遣かふぇ」では、改正労働者派遣法によって、派遣労働者がかえって追い詰められている現状を石橋議員に伝えた。期間制限のタイミングで雇い止めが起きていること、派遣元での無期転換の際に労働条件の引き下げが起きていること。特に、改正時に設けられた「雇用安定措置」が機能していない現状を伝えた。
石橋議員は、そうした現状を国会の厚生労働委員会で取り上げ、雇用安定措置の実態を調査するよう訴えた。
「私たちの話を聞いてくれるだけでよかったのに、私たちの代わりに国会で制度の不備を指摘してくれたことは、とてもうれしかった。希望が見えました」とyuraraさんは振り返る。
労組のイメージが変わった
yuraraさんは、これまで労働組合に加入したことはない。労働組合に対して抱いていたイメージは「9条改憲反対」。その印象は「派遣かふぇ」を開いたことで変わった。
「『派遣かふぇ』では、組合員の人が労働組合について説明してくれました。その話を聞いて、組合員の人も同じ感覚で話ができる人だとわかりました」
「派遣社員は労働組合の恩恵を受けづらい存在です。でも、だからこそ労働組合の大切さがわかりました。派遣の待遇が悪くなってしまったのは、守ってくれる労働組合がなかったから。労働組合は何もしていないように見えるかもしれませんが、蛇口をひねれば水が出るように、それがなくなって初めてその大切さに気付くのではないでしょうか」
それに加えて、労働組合の組織内議員の重要性も感じた。
「労働問題に精通する議員とつながれたことはとても大きかったです。石橋議員のような議員が国会で活動できるのも労働組合の後押しがあるからこそ。労働組合の存在意義は大きいと今は思っています」
労働組合の力は、派遣労働者を含めたすべての労働者のために生かすことができる。そのことを気付かせてくれる言葉だった。