労働組合は、だから必要だ!労働組合をもっと身近に
学生に労働組合を伝える活動
特別執行委員
労働教育の現状
皆さんは、「労働者の権利」や「労働組合」について、いつ学んだか覚えているでしょうか。現在、日本の学校教育は、学習指導要領に基づき小学校から高校まで体系的に行われており、労働に関する内容も、「社会」や「公民」の授業で扱われています。近年、若者を取り巻く労働環境の厳しさが増す中、労働教育の重要性が再認識され、学校教育においても年々充実が図られています。しかしながら、2014年に連合が行った調査では、18〜25歳の若者の約7割が「働く上での権利・義務を学校教育でもっと学びたかった」と回答しています。このギャップは一体何でしょうか──。
その要因の一つに、進学率の上昇が考えられます。今や大学等の高等教育へ進学する人は全体の過半数を占めています。しかしながら、大学等は学習指導要領の範囲外であり、労働法等の専門分野を専攻していない限り、労働教育を受ける機会はほとんどありません。そのため、多くの若者が社会に出る直前の大学在学時に、労働教育の空白が生じてしまっているのです。
『連合寄付講座』受講による効果
公益社団法人「教育文化協会」は、2005年から大学との連携による『連合寄付講座』を実施しています。開設以降、連携大学は徐々に増加し、2019年度は全国24大学で開催。これまでの受講者数は約1万8000人にまで拡大しています。この講座は、ワークルール等の基礎的な知識を身に付けるだけでなく、現場で活動する組合役員から直接話を聞くことで、働くことや労働組合に興味を持ってもらえるよう工夫がされており、まさに労働教育の空白期間を埋める役割を果たしています。
昨年、受講生を対象に行った調査では、知識・意識の両面でプラスの効果が確認されました。例えば、受講時点から高かった「割増賃金(74.2%→84.3%)」「最低賃金(80.0%→87.9%)」等の労働者の権利に関する認知度は、受講後にさらに高まっており、同時に、職場でのトラブルに対しても、「静観型(24.4%→21.0%)」から「活動型(38.9%→44.6%)」へと自ら行動を起こして現状を改善しようとする意識が高まっています。
また、「労働組合が社会に与える影響」についても、「男女の雇用面での平等が進む(46.8%→73.0%)」「社会保障が充実する(52.4%→73.0%)」等、すべての項目でポイントが上昇し、ワークルール等の知識や労働者の権利意識の向上とともに、労働組合に対する理解も深まることが明らかとなりました。これは、労働組合の具体的な取り組みの紹介を通して、単に組合員のためだけの活動ではなく、広く社会的に価値ある取り組みを行っていると理解されたものと考えられます。
学生と労働組合をつなぐ
本調査では、入社後の労働組合への加入意思にも、受講による効果を見て取ることができます。受講前は「わからない(31.3%→13.7%)」と回答していた学生も、受講後には大幅に減少しており、「加入したい(50.0%)」「声を掛けられたら加入してもよい(32.3%)」を合わせれば、実に8割を超える学生が労働組合の加入に肯定的という結果が得られました。加えて、ほとんどの学生が本講座を友人や後輩に勧めたいと高く評価しており、その理由の上位には、「社会人になった時に役立つから(74.9%)」「労働組合を身近に感じることができたから(48.2%)」が占めています。
このように、大学生が労働組合と直接かかわることはほかでは得難い機会であり、労働組合に対する印象にも影響を与えるなど、プラスの効果をもたらしています。当然、義務教育段階から行う労働教育も重要です。しかし、「働くこと」をよりリアルに捉え、自分事として真剣に向き合うことができる社会に出る直前にこそ、充実した労働教育を受ける機会が求められているのではないでしょうか。