トピックス2020.05

石橋 みちひろ辺野古新基地建設阻止に向けて
米国国会議員との連携をめざす

2020/05/15
情報労連組織内・石橋みちひろ参議院議員が1月13〜18日、米国・首都ワシントンDCを視察訪問した。その目的は、辺野古新基地建設阻止に向けた米国国会議員との課題共有、ネットワークの構築である。訪米の目的や成果について報告する。
石橋 みちひろ 参議院議員
情報労連組織内議員

訪米を決意した理由

今回の訪米には主に二つの目的があった。一つは、沖縄県民の民意を踏みにじる形で政府が強行を続けている、沖縄の辺野古新基地建設工事をストップさせるために、米国国会議員と辺野古事業の問題点を共有し賛同を得ることだ。

昨年、重大な事実が明らかになった。大浦湾側の工事予定区域内に「マヨネーズ並みの超軟弱地盤」が広範囲に存在していたのである。政府は、「調査中」の一点張りで情報開示を拒み続けてきたが、昨年になってようやくその存在を公式に認めた。

しかし政府は、地盤改良によって予定通りの建設が可能だと主張し、その後も埋め立て工事を強行し続けた。だが、ここにきて政府がその根拠とした地盤調査の結果に重大な欠陥がある疑いが浮上している。このまま基地を建設すれば、外壁部が滑走路の重みを支えきれず、崩壊する可能性があることを専門家が指摘したのである。

さらに、政府が現在検討している地盤改良計画では、たとえ滑走路が造られても、その滑走路が長期間にわたって「不同沈下」を起こすことが明らかになっている。不同沈下とは、滑走路が斜めに不均等に沈んでいくことを意味する。ところが米軍の施設基準では、滑走路に傾斜があってはいけないことになっている。すると政府は、米軍の基準ではなく、国際民間航空機関(ICAO)の基準を採用すると言い出したが、米軍がそれに同意した証拠は今のところ出されていない。

しかも、昨年末に政府は、この新たに必要になった地盤改良工事を考慮に入れると、総工費が9300億円に増加し、工期もトータルで12年以上が必要になると公表した。沖縄県民の民意を踏みにじり、世界有数の大浦湾の自然を破壊して、その上、巨額の税金を投入して無理やりに造る滑走路が、米軍の基準にも満たない欠陥滑走路だというのでは、いったい誰のため、何のための基地建設なのだろうか?

この間、こうした疑問を防衛省や外務省などの政府担当者にぶつけてきたが、ちゃんとした資料や回答が出てきた試しがない。そうすると、果たして米国政府や米国議会の議員たちは、このような辺野古新基地建設にかかわる不都合な真実を知っているのだろうか、という当然の疑問が生じてきた。それが今回の訪米を決意した大きな理由だった。

結果的に、私たちが面会した上下両院議員やその政策スタッフのほとんどが、辺野古/大浦湾の超軟弱地盤の問題や二本の活断層が存在する疑惑などについて「初耳」との反応だった。議員らから私たちがワシントンDCまで出向いて情報共有をしたことへの歓迎と、今後の継続的な情報提供への期待感が示されたことは、今回の訪米の実質的な成果だったと思う。

米国国会議員とのチャンネルづくり

また、この機会に、米国民主党を中心としたリベラル系国会議員と私たちが直接、対話をできるチャンネルをつくり、国会議員間のネットワークを構築したいというのが、訪米のもう一つの目標であった。

今回は特に、「プログレッシブ議員連盟(Congressional Progressive Caucus)」という米国民主党のリベラル系議員の集まりとの連携を模索した。今回の訪米で、まず米国のプログレッシブ議連メンバーと面会し、日米の両議連間で連携していきたい意向を伝え、先方の感触を探った上で、帰国後、日本版プログレッシブ議連を立ち上げる──それが私たちの構想だったが、結果は上々だった。米国側から予想以上にいい反応を受けたのだ。

なお、今回の訪米メンバーは、超党派の野党系議員有志による「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」の中心メンバーである近藤昭一衆議院議員(立憲民主党)と、屋良朝博衆議院議員(国民民主党)、そして私の3人だった。

3日間程度の行動日程では、数人だけでも本人に会えれば上出来だろうと覚悟していたのだが、良い意味で完全に裏切られた。なんと、上院議員2人、下院議員にも15人、本人と直接面談ができたのである。また、政策スタッフとも上院議員10人、下院議員18人と面談できた。これだけでもとても大きな成果だったと思っている。

2020年版『国防権限法』

さて、この機会に、結果的に今回の訪米の一つの焦点となった、米国の『2020国防権限法』について紹介しておきたい。

『国防権限法』とは、毎年の国防予算の大枠を定めるもので、2020年版は2019年12月20日に成立した。私たちは、法案の作成段階からその内容に重大な関心を持ち、ウォッチしていた。それは、昨年6月の時点で、この法案を議論していた上院軍事委員会のバージョンに、辺野古新基地建設問題について大変重要な意味を持つ条項が含まれていたからだった。

それが「1255条項」で、そこには、国防総省に対して在沖縄米海兵隊のグアム移転を含む分散配置/移転計画の「検証」を求めることや、基地施設の代替地案を示すこと、また米国会計検査院に対して、この分散/配置についての会計検査報告を求める内容が含まれていた。辺野古への直接的な言及はなかったが、検証等の対象に含まれることが確実視されたのだ。

ところが、最終的に上下両院の協議を経て決定された法律からは、これらの記述が削除された。私たちも当初落胆したが、代わりに「1260K条項」と新たな「1255条項」が盛り込まれたことがわかったのである。

「1260K条項」は、法案の成立後「180日以内」に、「国防総省長官は、連邦議会の国防衛(軍事)委員会に対して、沖縄、グアム、ハワイ、オーストラリア、そしてその他の地域における米国海兵隊員の分散配置計画の実施状況について報告書を提出すること」を義務付けている。特に、分散配置の実施を制約・制限する「政治、環境、その他の要因」を示すことが併せて求められていることは注目に値する。私たちが提起している辺野古新基地建設にかかわる諸問題は、政治的にも環境的にも技術的にも新基地建設が成り立たないことを示しているからだ。

また、新たに挿入された「1255条項」は、「普天間代替施設に関連する日本政府の貢献」についての報告を、米国会計検査院の院長が連邦議会の関連委員会に行うことを求めている。会計検査院が辺野古新基地建設事業を検査対象とし、深掘りしてくれれば、欠陥滑走路が出来上がる可能性を含めて、問題点を浮き彫りにしてくれるかもしれない。

最後に

今後、継続的に米国議員側への働き掛けを行っていくためにも、米国民主党のプログレッシブ議連との連携・協力関係の構築はぜひ実現したい。当面まず、私たち自身のプログレッシブ議連の立ち上げに向けて準備を進めるつもりだ。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界が非常に困難な状況に陥った今、今後の展望は見通しづらい。だが、辺野古新基地建設工事の中止には引き続き取り組んでいく。皆さんの温かい応援と支援をお願いしたい。

新型コロナウイルス感染症の影響が拡大する最中の4月21日、政府は軟弱地盤の改良工事のための計画変更申請を沖縄県に対して行った。国難とも言える状況の中で申請を強行した政府に、強く抗議する。

図 地盤改良工事の検討案
出所:共同通信フォトサービスの資料を基にNTT労組新聞編集部が作成
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