特集2018.06

#MeToo ハラスメントのない職場へ「#MeToo」から「#WeToo」へ
ハラスメントのある社会の一員でいいですか?

2018/06/13
世界中で大きなうねりとなった「#MeToo」運動。日本でこの運動をどう広げていくべきか。ハラスメントの根絶をめざすキャンペーン団体「#WeToo Japan」にかかわる大澤祥子さんに聞いた。
大澤 祥子 一般社団法人 ちゃぶ台返し女子アクション
代表理事/#WeTooオーガナイザー
「ちゃぶ台返し女子アクション」。2015年設立。団体名には、「男性中心の社会をひっくり返す」「市民が行動を起こして社会を変える」などの意味が込められている(大澤さん談)。調査活動や政策提言、教育活動、イベント開催などの活動を展開。

声を上げづらい理由

生きづらさを感じている女性はたくさんいます。でも、声を上げている女性は多くありません。そういう現状を変えようと3年前に「ちゃぶ台返し女子アクション」というキャンペーン団体を立ち上げました。

女性たちはなぜ声を上げづらいのでしょう。ヒアリングを重ねると、直面する困難を社会の問題ではなく個人の問題として内面化してしまう現状が見えてきました。「自分の能力が足りないから」「対処できない自分が悪いから」。それが仕方ないことのように受け取られていました。

特にセクハラや性暴力には、被害者側にも落ち度があったという風潮が今も強く残っています。例えば、被害に遭ったのは「露出の高い服を着ていたから」「誘いを断らなかったから」。性暴力にまつわる偏見と誤解がまん延し、被害者がバッシングされることもあります。こうした構造が女性たちに沈黙を強いてきました。

街中では露出の多い女性の広告があふれ、インターネットにも性に関する情報が氾濫しています。女性は性の対象として扱われ、男性はそれを消費する側の立場にあるという感覚は今も根深くあります。

「#MeToo」運動の意義

「#MeToo」運動で、女性たちが声を上げ始めました。この運動には二つの意義があります。一つは、被害に遭った人が自分のストーリーを語ること。それにより、語る人自身がエンパワーされる機会になります。もう一つは、被害が語られることによって性暴力やセクハラが身近な問題であると社会に可視化されることです。

「#MeToo」運動は、これまで沈黙しなければいけないと思っていた女性たちが、自分の被害を語ってもいいと思える力強い後押しになりました。声を上げる人が増えたことで、性暴力やセクハラが個人の問題ではないことを多くの人が認識するようになりました。海外の「#MeToo」運動では、被害の告発だけではなく、加害者が職を辞任したり、制度や政策を見直したりするといった実質的な変化につながっています。日本でもようやく「#MeToo」運動が広がりつつあります。財務省の事務次官が辞任したように、実際の変化につながったことは一歩前進だと思います。

「#WeToo」へ

一方、「#MeToo」運動にも批判はあります。「被害者に自分のストーリーを語らせることを強いている」「行き過ぎた被害の訴えで相手の名誉を傷付ける」といったことです。

被害者が声を上げて、加害者が責任を取ることの意義は大きいです。ただ、そこだけに視線が集中すると社会全体の問題であることが見えづらくなってしまいます。そのため、この問題に取り組む他の団体や個人が集まり「#WeToo Japan」という団体を立ち上げました。「#WeToo Japan」では、三つのミッションを掲げています。 (1)私たちは、性暴力、セクハラ、パワハラ、一切の暴力を許しません。 (2)私たちは、声を上げた人を支えます。 (3)私たちは、「これから」のために行動します。

ここでは日本社会の一員として、私たちがこれから何ができるのか。未来志向の考え方を打ち出しました。

「被害者対加害者」という構図でセクハラや性暴力の問題を捉えると、「自分には関係ない」と考える人がいます。加害者と被害者のどちらが正しいのかをジャッジするだけで、同じ社会を構成する一員として考えてくれない人も多いです。

「#WeToo Japan」では、私たちが同じ社会で暮らす一員として何ができるかを問い掛けていくつもりです。セクハラや性暴力の問題が起きたときに、傍観者のままいるのではなく、自分たちはどういう社会やコミュニティーの一部でありたいかを考えてほしいと思います。例えば、職場でセクハラが起きたときに、そういう職場の一員でありたいか。そう認識してもらうことが大切だと考えています。

声を上げた人を支える

声を上げた人を支えることも大切です。性暴力やセクハラの被害を告発した人は、社会や会社の和を乱した人と思われがちです。本当は被害を与える人が社会の和を乱しています。なのに、被害を我慢せず告発した人が和を乱したとすり替えられてしまうことがあります。

そのため、ちゃぶ台返し女子アクションでは、周囲の人が見て見ぬふりをしないように「第三者介入」という方法を広げることに力を入れています。「第三者介入」は、セクハラや性暴力が身の周りで起きたときに介入する方法を身に付けるためのトレーニング法です。アメリカの高校や大学などで導入されています。

トレーニングでは、なぜ、見て見ぬふりをしてしまうのか。自分のこれまでの経験を振り返りながら本当は、自分には介入できる力があることを学びます。セクハラや性暴力に対する感度を上げ、直接・間接的な介入の方法を実践的に学びます。日本でも、企業の予防研修に生かせると思います。

一方、「#WeToo Japan」では、あらゆるハラスメントをなくそうと訴えています。セクハラをなくすことはあらゆるハラスメントをなくすことにつながります。男女間の問題としてではなく、すべての人にかかわる問題だとフレーミングすることが大切だと考えています。

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