特集2018.06

#MeToo ハラスメントのない職場へハラスメント法制大転換の千載一遇のチャンス
世論のうねりがカギに

2018/06/13
ハラスメントの根絶へ向けて連合はどう取り組むのか。ILOや厚生労働省の審議会で、ハラスメントに関する議論が行われる。ハラスメント法制を大転換させるチャンスだ。
井上 久美枝 連合 総合男女・雇用平等局
総合局長

あらゆるハラスメントの根絶めざす

連合はあらゆるハラスメントの根絶をめざして運動を進めています。財務省のセクハラ対応が問題になった際には、あらゆるハラスメントを許さないという立場から事務局長談話を発出しました(「ハラスメントなき社会の実現を求める談話」4月18日)。世界各地でハラスメントの根絶を求める運動が広がっています。談話では、こうした国内外の声の広がりと連帯し、「法制度の確立を含めた運動を展開していく」と訴えました。

ハラスメントなき社会を求める潮流は国際的に加速しています。今年のILO総会の議題は、「仕事の世界における暴力とハラスメント」です。この議題は、今年と来年の総会で討議されます。うまくいけば、来年6月の総会でハラスメントに関する条約が採択されます。条約が採択されれば、国際的な大きなうねりになるでしょう。

ITUCのキャンペーン

なぜ今、暴力とハラスメントなのでしょうか。労働側は長年、ハラスメントの問題を議題として取り上げるよう働き掛けてきました。ITUC(国際労働組合総連合)は、「ジェンダーに基づく暴力」を特に重視したILO条約の採択を求めています。ITUCは現在、「ストップ!仕事におけるジェンダーに基づいた暴力」(Stop Gender Based Violence at work!)というキャンペーンを展開しています。

連合もITUC加盟組織として、昨年11月には「ハラスメントと暴力に関する実態調査」を実施しました。また、3月8日の国際女性デーのテーマを「暴力とハラスメント」にしたり、5月15日には「仕事の世界におけるハラスメントに関する記者勉強会」を開催したりして、ハラスメントの根絶をめざす運動を進めています。

ILOがハラスメントをテーマに議論

今年のILO総会(5月下旬から6月上旬)では、第一次討議が行われます。

討議のたたき台がすでに提起されています。次に上げる点が争点になりそうです。▽条約の形式か、勧告か。条約と勧告の両方か▽暴力とハラスメントの定義はどうなるか▽行為者の範囲をどうするか▽労働者の範囲はどうなるか▽あらゆる形態の暴力とハラスメントを禁止するか─。

労働側は、たたき台の内容を評価しています。例えば、労働者の定義は、あらゆる雇用関係や職業の個人までを含みます。ハラスメントの加害者および被害者には、クライアントや顧客も含まれます。また、使用者への防止措置義務を国内法令で採択すべきとしています。立証責任の転換も含まれています。

労働側は、条約と勧告の両方を採択すべきだと訴えています。条約の最終的な投票権を持っているのは、各国の政労使です。日本政府は現在、勧告で採択すべきとILOに回答しています。条約採択のためには政府の動向が大きなカギとなります。政府への働き掛けが重要です。

国内でもハラスメント対策の議論始まる

一方、国内でもハラスメントに関する議論が厚生労働省の雇用環境・均等分科会で夏から秋にかけて始まります。例年の流れであれば年末にかけて取りまとめが行われ、来年の通常国会での法案提出が想定されています。

厚生労働省は今年3月、「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書を取りまとめました。パワハラ対策はこの報告書を踏まえて議論される予定です。

パワハラに関しては現在、企業に防止措置を義務付ける法律がありません。労働側は防止措置義務の法制化を求めていますが、企業はガイドラインの設定にとどめるべきと主張しています。防止措置義務の法制化が論点の一つとなります。

また、パワハラに関しては、「業務の適正な範囲」や「平均的な労働者の感じ方」「中小企業対策」などが論点になります。労働側としては、「悪質クレーム」を含む、顧客や取引先からのハラスメントも取り上げていきたいと考えています。

セクハラ対策は、男女雇用機会均等法の見直しが議論されます。現在の均等法の規定では、事業主に防止措置義務が課されているだけで、セクハラ行為そのものへの規制はありません。取引先や顧客からのハラスメント対策も不十分です。規制の強化を求めていきます。

日本には職場における暴力とハラスメント全般を規制する法律がありません。厚労省の分科会ではハラスメント全般を規制する法整備も求めていきます。

大きなうねりに

このように来年6月に向けて、ハラスメントに関する国内法と国際的な条約の議論が同時並行的に行われます。ハラスメント法制を大転換させるまさに千載一遇のチャンスです。来年6月のILO総会でハラスメントに関する条約が採択されれば、日本の法整備にも大きく影響します。条約採択に向けて、日本の政労使が前向きな投票行動を行うためには、世論の動向がカギとなります。連合としてはホームページでILO条約に関する特設ページをつくるなどして、情報発信を強化していきます。「#MeToo」運動などの国際的な潮流と連帯し、大きなうねりにしていきましょう。

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