常見陽平のはたらく道2021.05

テレワーク時代の
新入社員にどう接するか

2021/05/18
テレワーク時代。新入社員との接し方もこれまでと同じとはいかない。先輩社員はどうすればいいか。

今年も新入社員がやってきた。「人類が新型コロナウイルスショックに打ち勝った」など、とても言えない状況だが、企業におけるコロナ対策は昨年の同時期に比べると、だいぶ進んできた。これもあり、昨年度はオンライン化した入社式や新人研修などを対面に戻す動きがあった。

新入社員とどう接するか。ただでさえ世代間ギャップがあるだけでなく、コロナ時代の変化も大きい。テレワークが広がる中、新人にどのように接して育てるか。

具体的な接し方、育て方の前に、まず今年の新入社員の歩みについて理解しておきたい。言うまでもなく、デジタル・ネイティブ世代である。初めて持った携帯電話がすでにスマートフォンという人もいる。新型コロナウイルスショックの影響もあり、大学の講義も、就活もオンライン中心だった。オンラインコミュニケーションは新入社員の方が上手かもしれない。

新入社員の心境も理解したい。思い描いていたような2020年は突然、消えてしまった。本来であれば東京五輪で盛り上がっていたはずだ。卒業旅行にも行けなかった。私自身、大学の現場では、若者の喪失感と日々向き合ってきた。コロナの影響で保護者の収入が減少し、アルバイトの機会が減り大学生活を諦めなくてはならない学生について報じられている。もちろん問題だが、現場の肌感覚ではむしろ、仲間と会えなくなったこと、コロナの打撃を受けた業界の求人が減るなど「夢の喪失」の影響が大きい。

今年の新人と接する際には、距離感に気を付けつつも寄り添い、心の不安を解消する姿勢が求められる。デジタル関連の使いこなし方については、むしろ「教えていただく」という姿勢で接するべきだ。

ここで見直したいのは、テレワークの作法、人の育て方を見直すことである。いま一度、快適なテレワークについて考えてみよう。この1年間でだいぶ知見がたまったことだろう。テレワークに必要なのは、思いやりであり、想像力だ。新入社員は学生時代と同じ、狭い部屋で一人、不安な気持ちで仕事をしているかもしれない。回線の影響で話が聞き取りづらいことだってある。イライラせずに、おおらかに接することが必要だ。特に新人に対してはイライラしたり、威圧的に接してはいけない。相手に関心を持つことは大事だが、服装や部屋について触れることは紛れもないリモハラなので気を付けよう。

距離のとり方にも気を付けよう。手厚いフォローという名目でしつこくしても意味がない。面談は定期化すると、逆に納得度が増す。相談してきたときにはすぐに対応する。

ほめて育てることにもこだわりたい。叱って育てられた機会が少ない世代である。「だから根性をたたき直すんだ」と気合いを入れても意味がない。そもそも「ダメ出し」は頭も心も受け付けないのである。「こうするともっとよくなる」という指導がこの世代には響く。さらに、個人を育てるのではなく、組織としてその代を育てると、勝手に人が育つ循環ができる。

新入社員が入ってくるたびに意識するべきは、「自分は若くない」ということだ。新人を育てるという熱は大事だが、自分をアップデートする機会だと捉えよう。

常見 陽平 (つねみ ようへい) 千葉商科大学 准教授。働き方評論家。ProFuture株式会社 HR総研 客員研究員。ソーシャルメディアリスク研究所 客員研究員。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)、『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『なぜ、残業はなくならないのか』 (祥伝社)など著書多数。
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