「労働時間」問題の現在地
働き方の変化はどう影響するのか在宅勤務で労働時間はどうなった?
組合員に聞くテレワークの実態
Aテレワークが始まったのは昨年3月くらいから。制度は会社にありましたが利用したことはありませんでした。出社は、緊急事態宣言中は週1回、宣言解除後は週2回ほどしています。
Bソフトウエア会社で働いています。全社的には7〜8割が在宅勤務しています。
C法人向けサービスでSEをしています。在宅勤務制度はコロナ前からありましたが、利用が育児や介護などの理由に限られ、使うと出世できないといううわさがありました。
それが、コロナ禍の影響もあってだいぶ変わりました。昨年2月くらいからリモートが基本になり、私も4月末から在宅勤務に移行しました。この1年半で出社したのは4〜5回しかありません。
Dコールセンターで働いています。テレワークは導入されていません。テレワークが実施されていない職場の声を、ということで参加しました。
──在宅勤務になって労働時間の変化は?
Aテレワークが始まった当初は、仕事と生活時間の区別があいまいになり、労働時間が長くなったという人もいたみたいです。テレワーク開始当初は「みなし労働時間制」でしたが、途中から通常の労働時間管理に変更されたことで、メリハリをうまくつけられるようになりました。
B会社としての残業時間は、基本的に横ばいか、若干減りました。仕事を効率よくやると給与が上がる評価制度になっているので、だらだら働かないようにしているようです。
昨年10月にコアタイムのない、「スーパーフレックス制」が導入されました。「中抜け」も自由になったので、その時間を差し引くと、全体の労働時間は長くならないようです。
C弊社もコアタイムのない「スーパーフレックス制」を導入しました。会社全体では労働時間は増えたようです。在宅勤務で通勤時間がなくなった分、朝早くから仕事を始める人が増え、労働時間が増えたことなどがあるようです。
ただ、個人的には労働時間は減りました。夕方に子どもの送り迎えをしていて、その分は「分断勤務」扱いにしています。帰宅後、19時くらいまで仕事をするのですが、それでも、以前は日中にお客さんを訪問して、その後会社に戻って22時くらいまで仕事をしていたこともあったので。一方、育児や家事の時間はとても増えました。ポジティブに捉えています。
──労働時間管理はどうなっていますか?
C端末にログインした時間と、ログアウトした時間が出退勤システムに連動しています。「分断勤務」で「中抜け」した時間は読み取れないので、事後的に自己申告する形になっています。
コアなしフレックスタイム制で在宅勤務だと、どうしても「性善説」にならざるを得ないと感じます。
悪く言えば、悪用することもできてしまいます。例えば残業時間が増えすぎたときに、働いた時間を申請しないとか。ただ、深夜や休日に働く場合には申請が必要ですし、時間外労働が月40時間を超える場合には、組合と労務の承認が取れないと働けない仕組みになっているので、過重労働を防ぐ仕組みはできています。
Aログイン・ログアウトで出退勤を管理するシステムになっています。そのほかにも、グループチャットで始業や休憩、終業を知らせたり、残業する際には理由を申告したりするようになっています。
「働き方改革」の効果もあって、コロナ前から「サービス残業」はするなということを、徹底して言われているので、残業時間を申告しづらいということはありません。
B労働時間の管理は基本的に自己申告です。スマートフォンに出退勤を入力します。働く時間は、朝5時から夜10時までの間で選べて、それ以外の時間帯や休日に働く場合は、申請が必要になります。
以前から客先常駐の職場も多かったので、その意味ではテレワークになっても労務管理はあまり変わりません。コロナ前から、労使で労働時間管理を強化してきたこともあり、「隠れ残業」の声は上がってきません。
D専用の端末を使ってお客さまからの問い合わせを受けるので、出社しないと業務ができません。受付時間も決まっているので、フレックスタイムも難しいです。
最初の緊急事態宣言の頃は、時差出勤や出勤抑制がありましたが、それ以降は従来通りの働き方に戻っています。
コロナ感染のリスクを抱えて出社することへの不安の声はあります。出社している分の手当を求める声は組合員からも出ています。
──働き方の変化は?
A単身赴任しているのですが、最初はちゃぶ台の上にパソコンを乗せていたので腰が痛くなりました。机や椅子を購入して疲労度がだいぶ変わりました。
テレワークになって、通勤時間や移動時間がなくなったのは良いのですが、会議が数珠つなぎになり休みなく続くのは改善してほしいと思います。
B在宅勤務だと周りに人がいないので、休もうと思えば休めてしまうのですが、終わらせないとずるずると時間が伸びてしまうので、かえって集中力がアップしたという話も聞きます。
C実際に働いているかわからないのは、出社していても同じで、在宅勤務だと余計に働いていないように見えてしまいます。だから、アウトプットを出そうという気持ちが強くなって、仕事が効率よく進むようになったと思います。そういうこともあるので、仕事の細かい管理はむしろされないようになりました。
在宅になるとミーティングがずっと続くことがあって1日13回ミーティングがあったこともあります。仕事を効率化させられまくったという印象です。
また、在宅勤務に伴って、机や椅子、モニターなどを自分で買いそろえました。通信インフラも整備しました。在宅勤務手当は出ていますが、環境整備への手当も出してもらえたらうれしいです。
B弊社では月額3000円の手当が出ていますが、在宅勤務をしていない人にも一律で支給されています。
Dテレワークをしていない人にも手当が一律で支払われるのはいいですね。
──NTTが単身赴任の原則廃止を打ち出しました。
A本社勤務など、いくつかの転勤を経験して昇格するイメージが一般的にあります。そういう課題をクリアできれば、転勤はない方がいいですよね。
C私の職場ではリモートで仕事が回っているので、転勤がなくてもやっていけるという手応えはあります。
B出張はほぼなくなっていますが、転勤をなくそうという話は今のところありません。オンラインだけでは人間関係を構築しにくいということもあるので、人材交流という意味でも、転勤はなくならないかな、と。
Dこれまでは転勤してこそ出世できるみたいなところがあったので、家庭環境のために出世を諦めた人もいました。転勤がないなら、子どものためにも、それが一番ですよね。
女性の多い職場なのですが、小さいお子さんがいる組合員は、出社した途端、子どもが熱を出したと幼稚園から電話がかかってきて帰らないといけない場合があります。そういう場合は、現状では休暇を取らざるを得ません。テレワークだったら違う対応もできるのになと思います。
──在宅勤務では、生活時間と労働時間の区別があいまいになると言われています。どうでしょうか。
Cあいまいになったと言わざるを得ません。在宅勤務になって各自に直接連絡が入るようになって、仕事終わりの時間にも電話がかかってくるようになりました。生活時間に仕事が舞い込んできたという感覚です。
また、スマートフォンでメールやチャットをどうしてもチェックしてしまいます。その時間が労働時間なのかはグレーなのですが、気になってしまうので、仕方ないなと思う部分です。
A営業担当だった頃は、土日にも電話がかかってきたことがありました。ただ、電話がかかってきても1〜2分で対応できる場合だと勤務時間として申請のしようもありません。
Bメールをさばくにしても、1時間かかれば勤務として気持ちよく申告できるのですが、数分で終わるようなことだと、勤務として扱いづらいという問題はありますね。
──つながらない権利についてはどう思いますか。
Cメガバンクや官公庁が顧客だと、トラブルが起きれば一刻も早く対応せざるを得ません。自分の今の業務では難しいと感じています。
つながらない権利を主張する場合は、自分以外にも、その仕事をできる人をつくらないといけません。すべての仕事を共有しようとすれば、無理も出てくるような気がします。
B弊社ではインシデント管理の観点から、会社の窓口でいったん受け付けてから、担当者に回すようにしています。勝手に仕事を引き受けさせないようにするためなどです。
顧客からは待ち時間が長くなるとか最初は抵抗もあったのですが、長い目で見るとその方がメリットがあると説明して浸透させてきました。ただ、トラブル対応などがあれば、担当者につながざるを得ないので、そうした例外を狭めていくことが大切だと思います。
──テレワークを続けたいと思いますか?
Aテレワークをやってみると、みんな意外と仕事が回ることに気付いたのではないでしょうか。通勤時間もなく、効率もいいです。ただ、出社をまったくなくすのではなく、週2日出勤など、メリハリを付ければいい制度になるのではないでしょうか。
Bテレワークはぜひ残したいと思いつつ、人材交流や人間関係構築のためにも出社することは必要だと思います。
Cデメリットを挙げるとすれば、新しい人との交流がないことですね。テレワークは続けたいですが、出社できる環境も必要だと思います。実は今、隣のマンションが大規模改修していて騒音がうるさくて。住環境は簡単に変えられないので、出社できる環境は残しておいてほしいと思います。
D通勤に1時間以上かかっている人もいます。自分の職場でテレワークを導入するとなると、どのくらい設備投資が必要になるのかなど議論しなければいけないことは多いのですが、メリット・デメリットを労使で話し合って、働きやすい環境をつくっていけたらと思います。