特集2021.11
「労働時間」問題の現在地
働き方の変化はどう影響するのか労災基準に新たな項目を追加
労働時間以外の要因も評価対象に
2021/11/12
脳・心臓疾患を発症した場合の労災認定の新しい基準の運用が今年9月から始まった。
基準が見直されたのは20年ぶり。厚生労働省の「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」が7月16日、過労死等の労災認定の基準に関する報告書をまとめた。報告書は、これまでの「過労死ライン」を維持したものの、時間外労働以外の負荷要因を評価の対象として明示した。
報告書は、(1)現行基準を維持する項目(2)新たに追加すべき項目──を提示した。
(1)の現行基準を維持する項目では、▼発症前1カ月に100時間を超えた時間外労働および2〜6カ月平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性が強い▼月45時間を超えて長くなるほど、関連性は強まる──といったこれまでの「過労死ライン」は維持した。
その上で、現行基準に次のような新たな項目を取り入れることが適切だとした。
労働時間については、「1カ月100時間もしくは2〜6カ月平均で月80時間」に及ばないもののこれに近い時間外労働と、労働時間以外の一定の負荷があれば、業務と発症との関連が強いと評価すると明示した。労働時間以外の負荷要因としては、「休日のない連続勤務」や「勤務間インターバルが短い勤務」「身体的負荷を伴う業務」などを評価対象として追加した。
また、短期に起きる出来事として、「発症前おおむね1週間に継続して深夜に及ぶ時間外労働を行うなど、過度の長時間労働が認められるなどの場合は、業務と発症との関連性が強いと判断できる」とした。
新しい基準の運用は今年9月からスタートしている。時間外労働が月80時間未満で労災認定されたケースは、2020年度では認定された案件の1割未満になっており、今後の動向が注目される。