常見陽平のはたらく道2017.06

私たちは、いつになったらダイバーシティーに本気になるのかという問題

2017/06/14
ダイバーシティー推進が叫ばれる昨今だが、私たちはそれに「本気」で取り組んでいるか。見た目の「プロフィール主義」を乗り越えなければ、先は見えない。

ある大手企業の経営陣との打ち合わせでの出来事だ。副社長がこう言った。

「ウチも多様性が必要だ。“オカマ”をとれ!」

本当に多様性を求めているのかどうか、怪しくなるような一言に絶句してしまった。少し前の話ではある。ただ、これもまた現実だ。

解説するために、あえて文字にするが「オカマ」はいまだに地上波でもたまに使われる表現ではあるし、当事者たちが自分のことをそう呼んでいることもあるのだが、極めて差別的な表現であることは間違いない。もともとは性交渉のスタイルが違うことに由来する言葉だからだ。LGBTへの理解が求められる今日この頃なのだが。

私たちはいつまで「ダイバーシティー推進」を叫ぶのだろう。「ダイバーシティー推進」なる言葉があるということは、逆にこれが十分に進んでいないことを可視化している。新卒採用で「ウチは学歴差別がありません」という企業があるということが、世の中にはまだそのような差別があることを可視化するのと同じことだ。

ただ、私はこの「ダイバーシティー推進」はタブーを度外視し、何度でも真剣に議論しなくてはならないと考えている。私の父は、生前、障がい者手帳を持っていた。結局、39歳の若さで亡くなり、母が猛烈に働き切り盛りするひとり親家庭で育った。いかにも、ダイバーシティー推進の象徴のような家庭で育ったわけだが、そうであるからこそ、この問題は冷静に論じなくてはならないと思っている。

そのダイバーシティー推進は、労働者にとっても、企業にとってもメリットがあるものなのかということが問われるのは言うまでもない。ここでの労働者にとってのメリットは、単に雇われるだけではなく、活躍することができるという意味でなくてはならない。企業にとっても、単にイメージ向上の意味ではなく、雇うことによって儲からなくては意味がないと考えている。

古巣リクルートに関する本を準備していた際に、元人事部の方に聞いた話だ。彼の分析によると、80年代、創業者の江副浩正氏がリクルート事件で失脚するまでの間の同社を支えたのは、女性、高卒、アルバイトだという。男女雇用機会均等法が施行される前から女性を積極採用していた。まだ大学進学率が高くなかった時代であり、高卒者の中にも優秀層はいた。さらには、アルバイトの者にも大胆に仕事を任せ、納得感のある報酬を与えたのだった。

日本におけるダイバーシティー推進では、プロフィールが過度に注目されている。「多様な人が働く」のと「多様な働き方を用意する」というのは、似て非なるものである。「多様な人が働く」に寄り過ぎていることが問題ではないか。

プロフィール主義を超えて、どのようにすれば成果が出るのかを考えたい。今のダイバーシティー推進は、美しい顔を装って、差別意識そのものではないかと問題提起したい。

常見 陽平 (つねみ ようへい) 千葉商科大学 准教授。働き方評論家。ProFuture株式会社 HR総研 客員研究員。ソーシャルメディアリスク研究所 客員研究員。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)、『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『なぜ、残業はなくならないのか』 (祥伝社)など著書多数。
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