常見陽平のはたらく道2017.07

働きがいも高める21世紀の評価システムを考え続けよう

2017/07/21
日本企業はバブル崩壊後の90年代半ばから、評価システムを模索し続けてきた。この時代にふさわしい評価システムとは何だろうか。

会社員時代の出来事だ。入社以来、最もよく働き、高い成果を出したときのことである。期待して査定のフィードバック面談に臨んだ。ボーナスの額は横ばいだった。個人の業績としては高い評価を得ることができたが、事業部の業績が振るわなかったからだ。逆に、全社や事業部の業績が好調で不当に高いボーナスをもらったこともある。納得感はない。

バブル崩壊後の90年代半ばから、日本企業は評価システムを模索し続けてきた。「年功序列はおかしい。業績が高い若手を評価するべきだ」「働いた時間ではなく、成果で評価するべき」。この手の意見を正論だと思う人も多いことだろう。ただ、物事は想定したようには進まない。いまだに日本企業は模索を続けている。

いわゆる成果主義的評価については、常にその弊害が指摘されている。「チーム内で競い合うので人間関係がギクシャクした」「萎縮してかえって大きな目標にチャレンジしなくなった」「短期的な目標を重視するがゆえに中長期の目標を疎かにしがちになった」「市場の変化を追いきれなくなった」などの批判である。

この取り組みが、労働時間の短縮に貢献するという考え方もある。ただ、必ずしもそうはならない。成果主義導入で話題になった、ある大手企業の、担当者に直接聞いた話だ。当初、成果主義を導入する際に目的としていたのは、長時間労働の是正だった。チャレンジ精神あふれる組織風土だったゆえに、残業が慢性化していた。これを是正しようとしたのだが、組織風土と相まって、かえって残業が増えた。このような例は、国内外で報告されている。

人材マネジメントは、経営目標を達成させるために行われる。これは別に、成果主義的な評価制度を導入しているかどうかは関係ない。労働者の納得は必要だが、重視しすぎて成果が出ないのも困る。

経営者側の視点から言うならば、問われるのは、その目標設定は最適かということだ。経営戦略との一貫性はあるのか、短期はもちろんだが、中長期で企業の発展につながるのかという視点が必要だ。

この評価のシステムというのは、単に成果を出すためだけではなく、どのような企業にしたいかという意志とも関係するものである。人手不足であり、人材獲得競争が熾烈になる中、その評価システムは働きがいがあるのかという点も問われる。

評価制度は労働者に丸投げのものになってもいけないし、一方で、自由・自律が実現されているものであるべきだ。このあたりのさじ加減が常に問われている。中には成果主義からあえて距離をおく企業、ある年次や役職までは競争させない企業も現れてきた。これも一つの考え方だ。

これは働き方改革同様の矛盾をはらんでいる。働き方も大事だが、特に経営者がもうけ方を考えなくては、働き方など変わらないということだ。この点に労働者も敏感になるべきだろう。将来のビジョンや、もうけ方のデザインなき改革は単なる搾取になることさえある。

労働者、労組の視点から言うならば、その評価システムは業界・企業の明るい未来をつくるのかという点こそチェックするべきだ。単に労働者から搾取する論理にしてはなるまい。

常見 陽平 (つねみ ようへい) 千葉商科大学専任講師。働き方評論家。ProFuture株式会社 HR総研客員研究員。ソーシャルメディアリスク研究所客員研究員。『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『普通に働け』(イースト新書)、『僕たちはガンダムのジムである』(ヴィレッジブックス)、『「できる人」という幻想』(NHK出版新書)など著書多数。
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