特集2017.12

「賃上げ」へ動く賃上げ要求を継続し賃金が上がる仕組みを社会に定着させる

2017/12/14
2018春季生活闘争をどのように闘っていくのか。連合は賃上げの継続をテーマにした方針を掲げた。その考え方や、取引の適正化に向けた取り組みなどについて聞いた。
冨田 珠代 連合総合労働局長

賃上げを定着させる

連合の2018春季生活闘争方針には、「継続」という言葉があちこちにちりばめられています。これが今回の春季生活闘争の大きなテーマです。「継続」とは、同じことの繰り返しではありません。次のステージにつなげるための重要な一歩を進めることだと考えています。

次につなぐ大きなテーマの一つが「賃上げ」です。連合はここ数年、賃金の「底上げ・底支え」「格差是正」の取り組み方針を掲げ、構成組織・単組の真摯な労使協議の結果、一定の前進を果たすことができましたが、社会全体を見渡すと隅々までは届いたとはいえません。

賃上げができたところと、できていないところでは、格差が広がることになります。すべての働く者全員で経済を支えていくためにも、企業規模・業種・雇用形態・男女にかかわらず、月例賃金をしかるべき水準に引き上げていかなければなりません。そのためにも賃金が将来に向かって上がっていく仕組みをいま一度社会に定着させていきたいと思います。

2018春季生活闘争方針では、賃金引き上げを継続する中で、中小企業や非正規雇用労働者など、賃上げの波が届いていないところに力を入れていきます。「底上げ・底支え」「格差是正」の取り組みを継続して、定着させて、前進させることが大切です。

労働組合が要求してこそ

足下の経済情勢を見ると、企業にとって悪い材料はあまりみられません。為替や原材料の動向を見ても、業績の見通しが立てやすい状況です。大企業・中小企業にかかわらず、企業収益は改善の方向にありますが、一方で内需をけん引する個人消費は、依然として伸び悩んでいます。その要因の一つは分配がゆがんでいるからであり、事実、労働分配率は年々低下を続け、実質賃金は横ばいの状況が続いています。

個人消費が上がらないもう一つの要因は、賃金が上がっていくという実感を持てない人がたくさんいて、消費マインドが高まらないことにあります。社会保障制度にしても保険料は年々上がっていくのに、将来に対する安心が担保されていません。

そのような意味では、政府には、労働組合とは違った手法で、将来への安心を抱ける環境をつくってほしいと思います。「社会保障と税の一体改革」の推進や社会保障制度のグランドデザイン策定などを期待しています。

近年、「官製春闘」などと報道されることもありますが、労働組合が要求しなければ、賃上げ交渉の入り口にも立てません。労働組合が要求してこそ、賃上げにつながるということを強調しておきたいと思います。

2%程度の賃上げを

連合の2018春季生活闘争方針は、経済の自律的成長のためには個人消費の活性化が必要であり、そのためにはマクロ的観点で2%程度の賃上げが必要だと訴えています(定昇込みで4%)。この2%程度とは、過年度物価上昇率ではなく、経済の自律的成長や社会の発展のために必要であると連合が考える数字です。この程度の賃上げが私たちのめざす社会の実現に必要だということです。

その目標へ向けたステップをどのように踏むかは、各産別が加盟単組のサポートをしてほしいと思います。単組の状況によっては目標に到達するまでに複数年かかるケースもあるかと思いますが、産業や企業の実態を把握しながら、要求してほしいと思います。

2018春季生活闘争方針では、「取引の適正化」というテーマを掲げました。中小企業の賃上げ原資を確保するためには、サプライチェーン全体で生み出した付加価値を適正に分配することが必要だと訴えています。

サプライチェーンには本来、「頂点」のようなものはありません。「頂点」にあると思われがちなメーカーも、お客さまがいないと商品を販売できません。ユーザーにとってもサービスを提供してくれる事業者がいなければ、サービスを受けられません。例えば車の場合、素材の開発から、部品の製造、組み立て、販売、アフターサービスなど、それぞれの工程で付加価値が存在します。その過程で生み出された価値が適正なコストで評価されれば、企業はその原資を「人」や「設備」「研究開発」などに再投資し、新たな競争力の原動力とすることができます。

しかし残念ながら、過去からの取引慣行など本来あるべき取引にゆがみが生じているのは事実です。ピラミッド型のヒエラルキー関係ではなく、対等な立場で取引環境を構築することが大切です。

取引の適正化へ向けた取り組み

具体的にどのように取り組めるでしょうか。ある産別の事例を紹介すると、これまで、グループ関連組合は、親会社の要求・回答額を超えてはいけないという不文律がありました。しかし、これをこのまま続けていけば、親会社とグループ関連組合の差は縮まるどころか広がってしまうことに危機感を持ち、この不文律の払拭に向けて、業界団体と協議を行いました。業界団体側も同じ課題感を持っていたため、企業側にそうした認識があるという事実があれば、団体側からも企業に働き掛けることを約束してもらいました。

合わせて、親会社の組合は、グループ関連組合の交渉をサポートするため、自社の購買に対して、「グループ関連組合が高い要求額と高い回答額を引き出しても、そのことを理由としたコスト削減をしないでもらいたい」と説明して回りました。このことが契機となり、近年の取り組みでは、グループ関連組合が親会社の要求回答を超える事例も増えてきました。

2018連合春季生活闘争方針では、こうした、「大手追従・大手準拠からの構造転換」「取引の適正化」に加えて「健全で安全で働きがいのある職場の実現が同時に推し進められる」ことを盛り込みました。働き方改革を進めるに当たって、自社の負担を他社に振り替えるのでは適正な取引とは言えません。価格だけではなく、働き方も含めて、取引の適正化を進めていこうということです。この働き方は労働組合ならではのアプローチだと考えます。

非正規労働者の処遇改善

同一労働同一賃金の課題は、法改正のプロセスが進んでいることもあって、非正規雇用労働者の処遇改善の取り組みがさらに本格化します。すでに「同一労働同一賃金ガイドライン案」が示されていて、これを活用している労働組合もあります。

とはいえ、まだそこまでいっていないという労働組合は、とにかくできることから始めてほしいと思います。取り組みやすい事例は、各種手当や福利厚生です。例えば、どの制度が正社員に適用されていて、有期契約労働者や派遣労働者、高年齢再雇用者には適用されていないか、といった一覧表をつくることから始めてもいいと思います。法律が成立する前に取り組みやすい課題から取りかかってほしいと思います。

みんなで取り組む春闘に

賃上げの波を社会全体に広げていくためには、まずは連合のすべての単組が賃上げを要求することが大切です。賃金を上げるという取り組みが社会の中で当たり前の姿になることが重要です。そこで勝ち取った賃上げは、社会や地域での賃金相場の形成の一助になります。企業内最低賃金協定などが締結されていれば、地域の法定特定(産業別)最低賃金のベースにもなります。

人手不足の中において労働条件の引き上げは、中小企業にとって生き残り条件となっています。連合では、地域・産業ごとの賃金データを公表しているので、活用してほしいと思います。

また、連合では、地域フォーラムを開催し、地域での発信力強化に取り組んでいます。賃上げに向けて、みんなで取り組んでいるということを社会にアピールするためにも、地域や家庭でも、話し合ってほしいと思います。

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