特集2017.12

「賃上げ」へ動くここから始める春闘の賃金交渉
賃金実態の把握から交渉へ

2017/12/14
賃上げのために何から始めたらよいのだろうか。春闘に取り組めない労働組合もある。春闘の意義と賃上げ交渉のイロハを解説。
春川 徹 情報労連政策局長

春闘に取り組む意義

いよいよ2018春闘を迎える時期になってきました。ここでは、春闘のメインテーマの一つである賃金交渉について、賃金引き上げの要求検討から解決(妥結)までの流れについて解説します。

春闘をイメージすると労働組合が要求を掲げ、その要求実現に向けて会社と交渉し、結果を導き出すこと、と単に発想するかもしれません。しかし、労働組合が春闘に取り組むことによって、とても大きな側面的効果があることを再認識する必要があります。

春闘は、当該労使が職場における諸課題について、徹底した論議や意見交換を行う絶好の機会でもあります。そのため、労使間で事業を取り巻く環境や経営状況について論議し、また職場の最前線で働く組合員の声を会社側へ伝える機会にもなるため、そのことを通じて、労使関係をより強化することにつながります。また、職場実態の把握や要求内容の立案に向けた組合員との職場討議、要求決定から要求実現に向けた取り組みに組合員が結集することで労働組合としての組織強化にもつながります。

賃金交渉に向けて最初の一歩

賃金交渉は、組合員の賃金水準を引き上げるとともに、企業内の賃金バランスの改善をめざすものでもあるので、賃金制度が確立されていても、その賃金実態を把握することは不可欠であり、把握なくしては根拠ある要求を立案することも困難です。

具体的には、同業他社や地域との賃金水準の比較、男女間に不当な差がないか、職務・職種間や学歴間などの違いが適当であるかなどは、賃金制度が確立されているからと言って、実態が定かであると言い切ることはできません。

そのため、「賃金実態の把握」が何よりも重要となってきます。良好な労使関係であれば、ある程度の賃金実態について労使間で共有することが可能な側面もありますが、実態把握においては、まさに組合員との直接的な対話(職場集会など)や個別調査を通じて、賃金や生活実態の意見集約を行う必要があります。

執行部の要求(案)の作成と職場討議

集約した賃金実態や組合員からの意見、連合や情報労連などの統計資料や方針、会社の業況やこれまでの交渉経過などを参考に執行委員会で要求(案)を立案し、職場集会などを通じて組合員に直接説明を行い、賃金要求の考え方や要求(案)の内容について討議します。

この職場討議では、要求(案)について執行部からの一方的な説明に終始するのではなく、自社の賃金制度やその実態についても解説を加え、組合員の要求(案)への理解を高めることが重要です。交渉は組合員の代表である執行部が行いますが、春闘そのものは労働組合全体で行うことであると意識し、労働組合が賃金交渉に臨むことの意義を再確認する場にする必要があります。

要求決定から交渉へ

執行部の要求(案)を中心とした職場討議を踏まえ、最終的に労組規約に定める議決機関(臨時大会や中央委員会など)で要求内容を決定し、以降、会社に対して要求書を提出します。

団体交渉から妥結後のポイント

交渉は一過性のものではなく、積み重ねていくことで結果を導き出すものです。常に自分たちの交渉力を高めるように知識や情報を蓄えながら、経験とともに能力を上げていく必要があります。また、賃金交渉に限らず、団体交渉では以下を踏まえて臨むことが重要です。

  • 交渉前に予め、執行部メンバーで交渉内容の打ち合わせを行い、しっかり意識合わせをしておくこと
  • 会社側は敵ではない。労使対等の精神で臨むこと
  • 組合員(その家族を含む)の代表として交渉する意識を持つこと
  • 毅然とした態度(姿勢)で臨むこと
  • 目先の利益だけでなく、長期的な視点を持つこと
  • 適宜、交渉内容(経過含む)を組合員へ伝えること(闘争ニュースなど)
  • 交渉では発言メモを取り、議事録を会社側と確認すること

など

そして妥結においては、会社と協定書等を締結して労使で合意事項を確認するとともに、組合員に対しては、妥結内容、妥結判断した理由、会社の考え方などを説明します。この説明では、妥結内容の善しあしだけを評するのではなく、春闘交渉を通じて明るみになった将来展望や課題なども組合員と共有し、討議することも重要です。単なる伝達だけでは、春闘に対する組合員の意識が自然と薄れてしまいます。妥結後の組合員との対話が、労働組合の求心力を高め、次への取り組みにつながってきます。

特集 2017.12「賃上げ」へ動く
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