労働組合による経営分析春季生活闘争に向けて
労働組合が取り組むべきこととは?
春闘に向けた準備とは?
労働組合は、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を主たる目的として組織」された団体です(労働組合法第2条)。春闘は労働組合活動が組合員の目にもはっきりと映り、組合員との信頼関係を築く労働組合活動最大のヤマ場といえます。
春闘は、1年で1番大きな闘いです。忙しい中での組合活動だからこそ日頃からの準備が大切です。3月中の要求提出を軸に、「年明けまでの期間」「年明けから要求提出までの期間」の二つの期間に分け、準備するとよいでしょう。
まずは会社の業績状況や事業環境等を確認します。その際、資料の提出を求めるだけでなく使用者側への質問・回答の場を設け、労使対話を12月中にスタートさせることで、本番の春闘交渉につなげます。
また、具体的な要求骨子作りに向け、組合の課題認識の明確化、就業規則や賃金制度のチェック、働き方改革関連法などへの対応状況の確認などを同時並行で進めます。
年明けから要求提出までの期間は、骨子の具体的な肉付けとして組合員の意見収集を行います。力のある要求・説得力のある交渉の原動力は、この意見収集を通じてどれだけ「職場実態」に肉薄できるかにかかっています。合わせて連合や情報労連の方針、社会的に注目されている課題などを参照し、職場意見と社会的要請も包含したバランスある要求案をつくり、団体交渉に臨みます。
経営チェック機能を果たす
春闘時期をとらえた要求の組み立て・交渉の一連の過程における点検は、まさに現在の使用者側の経営状況をチェックする過程そのものです。
連合において2019春闘から展開されている「賃金水準」の追求に向けた個別賃金水準の取り組みは、組合員賃金の実態を把握し、同業種・同地域水準と比較することで会社の賃金配分水準のチェックとなります。また、連合の「職場点検チェックリスト」に基づく点検は、会社の労務コンプライアンスの対応状況をチェックすることにつながっています。
春闘を実りあるものに
春闘を真に実りあるものにするには、職場の総意を反映した要求であること、建設的な交渉を展開し労働組合が有益であると使用者に理解してもらえることが重要です。労働組合が使用者には届きにくい現場実態や、そこから抽出した課題を会社に伝え、労使で知恵を絞り改善していこうとする。こうした組織ならば、使用者にとって労働組合は重要なパートナーとなり得ます。
組合員同様、使用者との信頼関係も一朝一夕では築けません。労働組合が恒常的に現場の声を聴き、また組合員の相談に反応よく応えるなど、より働きがいのある職場環境構築の取り組みを絶えず行うことが、組合員の信頼を盤石なものにしていきます。
労働組合と組合員、労働組合と会社、相互の信頼関係が醸成され、労働組合から会社をよくする、使用者側から職場をよくするという労使双方による職場改善機能が、春闘を通じてしっかりと根付くこととなります。そう考えると春闘は、1年で1番大きな活動であり大きなエネルギーを集中的に一定期間注ぐことになるかもしれませんが、その準備を日頃からの活動で行うことで実りを確かなものにすることができると言えます。