特集2020.06

新型コロナウイルスと労働関連問題連合 労働相談に浮かぶ「コロナ格差」
集団的労使関係の拡大が不可欠

2020/06/12
「コロナ・ショック」に伴い、連合には数多くの労働相談が寄せられている。相談の内容から浮かび上がる問題とは何か。労働組合として求められることは何か。
山根木 晴久 連合総合運動推進局
総合局長

労働相談で見えた格差

「立場の弱い人にしわ寄せがいっている。労働相談の内容にも、そのことがストレートに表れている」

連合総合運動推進局の山根木晴久総合局長はこう話す。

4月に連合に寄せられた労働相談の件数は、1966件。前年同月と比べ800件以上増加した。休業補償と解雇や雇い止めに関する相談が多いが、その中でも「雇用形態間の格差、労働組合のある職場とない職場の格差が如実に出ている」と山根木局長は話す。

例えば、休業補償。正社員は全額補償なのに非正規雇用労働者は6割という相談もあれば、経営者が雇い止めをするつもりなので有期契約労働者に休業手当を出さないという相談もあった。

労働環境に関する格差の相談もあった。正社員はテレワークなのに、非正規雇用労働者は「三密」職場に出社、在宅の正社員からの指示で職場で働くことへの理不尽さを感じるという事例も。「安全衛生面でも非正規雇用労働者がリスクを負う現実が見えてきた」と山根木局長は訴える。

労働組合がある職場とない職場との格差も見えた。休業補償についても労働組合があれば、法定を上回る補償を会社と協議できる。ものつくり産業労働組合JAMの調査では、一時休業を余儀なくされた362の加盟組合のうち42%が100%補償と最も多く、80.4%の加盟組合が80%以上の補償を得ていたという。「法律を守らせるだけではなく、法律以上の条件を要求し、労働協約を締結できるのが労働組合。あるのとないのでは大きく違う」と山根木局長は話す。

現場の声を政策に反映

連合は労働相談で寄せられた声を政府などへの要請に反映してきた。

「労働相談と政策・制度要求の連携をいつも以上に強化して、政府対応などに当たってきた。要請の内容には、労働相談の実態が色濃く反映されている。労働相談で現場の声を聞いているからリアルな要請につながっている」と山根木局長は強調する。連合は、感染拡大の防止や生活・雇用のセーフティーネットの強化などをはじめ、総合的な対策を政府に要請するとともに、経済団体や社労士会などとの協議を重ねてきた。「労働相談は現場実態の縮図。問題を社会化し、課題解決につなげるためにも相談対応を強化したい」と話す。

一方、緊急事態宣言下の難しさもあった。外出自粛要請の中で、従来の方法では対応しきれない部分もあった。

「膝詰めでの話し合いが必要である一方、今後は感染防止対策を踏まえたコミュニケーションのあり方が問われるようになる。デジタルの世界の中で運動をつくるなど、新しい挑戦をする必要があると考えている」と訴える。未組織の中小企業や非正規雇用労働者も含め、フリーランスで働く人たちなどとの新たなつながりの創出をめざす。

集団的労使関係の構築を

「コロナ・ショック」で浮かび上がった格差をどう是正するか。山根木局長は「最も重要なのは集団的労使関係の拡大。労働組合のある、なしによって格差が生まれている。企業規模や雇用形態、『あいまいな雇用』にしても、集団的労使関係の枠組みの中にいかに組み込んでいくかが、長期的な視点からも欠かせない」と語る。

また、ワークルール教育の重要性も説く。「ワークルールをあまりにも知らなすぎる経営者がいる。労働者も自分を守るためにワークルールを知る必要がある。基本的な労働教育を学校教育の段階から行う必要がある」と話す。

連合はホームページ上に新型コロナウイルスに関する労働相談Q&Aを掲載。労働相談も継続して受け付けている。今後も雇用危機が続く中で、現場の声を聞き、労働組合の仲間を増やし、労働条件や政策に反映させる取り組みが続く。


NTT労組の取り組み

感染拡大防止へすべての組合員・社員の労働環境整備

日本国内で新型コロナウイルスの感染リスクが高まってきたことから、2月中旬以降、NTTグループの各職場において、組合員・社員の健康・安全を第一義に、咳エチケット、集合会議の自粛(テレビ会議の活用)、在宅勤務や時差出勤等の積極的活用等、感染拡大防止対策に取り組んできており、現在も継続しています。

労働環境整備については、NTTグループに働くすべての組合員・社員において、同様に対処するとのスタンスで諸課題に対応してきました。

まず、組合員・社員が、新型コロナウイルスに感染した場合や濃厚接触者となった場合等により、就業禁止となった場合は「勤務扱い」とする等、服務の扱いについて整理しました。また、妊産婦への配慮として、原則、在宅勤務としていましたが、母性健康管理措置の指針の改正に伴って、医師等から指導を受けた旨の申し出があった場合は、自宅待機(勤務扱い、勤務可能な場合は在宅勤務)としました。

政府からの休校要請に対しては、小学校6年生までの子の世話を行う必要のある組合員・社員に、有給の特別休暇(非常事態)を付与することとしました。

NTTの病院でも、自治体の要請により感染患者の受け入れが始まったことから、感染患者対応にかかわる特別措置として、日額4000円を支払うこととしました。加えて、感染患者を受け入れている病院等への立ち入りが必要となる故障修理などについても、同様に日額4000円を支払うこととしました。

また、NTTグループは、指定公共機関として通信の確保等に向けた業務継続や社会インフラの維持が求められていることから、感染拡大が深刻な特定警戒都道府県において、宅内故障修理、開通工事、システム保守・運用、営業等に従事する組合員・社員に対し、外勤手当等の付加分として日額1000円を支払うこととしました。

今後も働き方や処遇等について、必要な会社対応を行っていきます。

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