特集2020.06

新型コロナウイルスと労働関連問題契約ルール未整備の問題が顕在化
フリーランスと「コロナ・ショック」

2020/06/12
「コロナ・ショック」はフリーランスにも大きな影響を及ぼした。浮かび上がった課題などについて、フリーランス協会の平田さんに聞いた。
平田 麻莉 一般社団法人プロフェッショナル&
パラレルキャリア・フリーランス
協会代表理事

フリーランスへの影響

フリーランスの緊急実態調査を3月上旬に行った際は、イベント自粛や学校休業などに伴う消費者向けサービスの仕事に大きな影響が出ました。その後、4月に緊急事態宣言が出ると企業と取り引きするビジネス系のフリーランスにも影響が出るようになりました。スタートアップ企業も資金確保が困難になるなど、休業、減収を含め、あらゆる職種のフリーランスに影響が及んでいます。

外出自粛要請の中でも、多くのフリーランスが働いています。食品デリバリーや運送業者、ベビーシッター。社員は在宅勤務できるのに、業務委託のスタッフは出社しているというケースも聞いています。フリーランスは感染リスクにさらされる一方、労災保険も受けられないという非常に心もとない状況に立たされています。

契約ルール未整備が顕在化

私たちフリーランス協会としては、今回改めて、契約ルール未整備の問題が顕在化したと考えています。口約束が横行し契約書を結びたくてもできない業界もあります。特にメディアやエンターテインメント業界がそうです。口約束で継続してきた仕事が電話一本で切られるという事例も出ています。契約ルール整備の重要性が明確化しました。

契約ルールの未整備とともに、フリーランスの実態把握が重要だと感じました。ドイツがアーティストに対して迅速に現金給付を行うと表明できたのは、全国民に税識別番号が付与されているからでした。実態を捕捉できなければ、迅速な救済も行えません。日本でも「マイナンバー制度」を活用するなどして、事業者の実態把握を進めれば、有事の際の支援もスムーズにできるようになるはずです。労災や傷病手当金、所得補償などライフリスクに対する保障のあり方についても議論を続けたいと考えています。

政府の支援策への評価

フリーランスは自営業者なので、一定のビジネスリスクを背負っています。ただ、今回の事態は個人で背負えるビジネスリスクの範囲を超えています。フリーランス協会では、救済措置を求めて3月に政府に対する緊急要請を提出しました。「持続化給付金」に関しては、事業者に給付する仕組みができたという意味で画期的だと捉えています。その他の支援策に関しても、政府は試行錯誤しています。

ほかにも、社会保険料や税の支払い猶予、緊急融資などの支援策が講じられています。それでも不満の声がなくならない一番大きな理由は、先行きが見えないことだと思います。また、用意された支援策の趣旨や内容が正しく周知されていないとも感じます。メディアは支援策の要件や申請方法などをもっと詳しく正確に報道してほしいです。

フリーランスの今後

フリーランス協会にはさまざまな声が寄せられますが、お金がほしいというより、仕事をさせてほしいという声が多いです。4月にフリーランスの意識変容調査を行い、1611人から回答を得ました。新型コロナウイルスの影響を受けたと答えた人の割合が87.2%に上った一方、雇用に戻るのではなくフリーランスの仕事を継続したいという人の割合は85.8%に上りました。これは正直、意外な結果でした。

中・長期的に見れば、テレワークの活用が広がったり、企業が柔軟な人材活用を増やしたりして、フリーランスの活用の場が広がると考えています。

今回の出来事でフリーランス協会に対する期待の高まりも感じました。会員は無料会員が約3万2000人、保険に加入している会員が約4200人になりました。私たちは「小さな声を大きな声へ」というスローガンを掲げています。今後もフリーランスの声を発信し続けていきます。

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