特集2020.06

新型コロナウイルスと労働関連問題命と暮らし、雇用、安全を守る
新しい政治の構想と実践へ

2020/06/12
経済的な支援策をはじめ、新型コロナウイルス対策で政治が果たす役割は大きい。安倍政権のこの間の対応はどうだったのか。今後、どのような政治の構想が必要なのか。国会審議の最前線で活動してきた石橋みちひろ議員に寄稿してもらった。
石橋 みちひろ 参議院議員

感染拡大と初動の問題

新型コロナウイルス感染症によって尊い命を奪われた皆さまのご冥福を心からお祈りするとともに、今もなお、日夜、公共サービスやライフラインを支え、国民の命と暮らしを守るために最前線でご奮闘いただいている皆さんに、深甚なる感謝と敬意を表します。

国内で最初の新型コロナウイルスの感染者が出たのは、1月16日のことでした。当初、国内での感染拡大のペースは比較的緩やかでしたが、私たちは、中国で感染が急拡大していたこと、その中心となった武漢が1月23日に封鎖(ロックダウン)されたことなどを受けて、1月末には「新型インフルエンザ特措法」を適用するよう政府に訴えていました。同時に、渡航/入国制限やPCR検査の徹底など、先手を打って封じ込めや感染拡大の防止措置を取るように提案したのです。

しかし政府は、私たちの提案をなかなか採用しませんでした。武漢等からの入国制限は2月1日に行ったものの、対象を中国全土に広げたのは4月3日でしたし、専門家会議の立ち上げは2月14日でした。3月5日に習近平中国国家主席の来日延期が決まった後、ようやく新型コロナウイルスへの特措法適用が動き出し、3月13日に改正特措法が成立。しかし特措法に基づく緊急事態宣言の発令はその後もなされず、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定された3月24日以降からようやく検討が始まって、結局4月7日にまでずれ込んだのは周知の通りです。

政府の対策への評価

2月の時点で、すでに観光業を中心に事業継続や雇用への影響が拡大していたため、私たち野党は2〜3月の予算委員会で、審議中だった「2020年度本予算案」を大幅に組み替えて、不要不急の予算項目を新型コロナウイルス感染症対策に振り分けることを強く訴えました。本予算案には、新型コロナウイルス対策の費用が1円も含まれていなかったからですが、政府・与党はそれを一顧だにしませんでした。もしこの時に組み替えを行って、個人や事業主への給付金などを盛り込んでおけば、4月早々からの支給開始も可能だったことを考えると、本当に残念でなりません。

新型コロナウイルス対策の補正予算議論が始まったのは4月に入ってからでしたが、ここでもまた同じでした。政府案では規模も中身もまったく不十分だったので、野党は(1)持続化給付金の倍増と家賃支払い支援制度の創設(2)地方自治体への交付金の大幅積み増し(3)雇用調整助成金の上限額引き上げと中小企業への全額補助(4)医療機関や従事者への支援拡充──などを柱とする組み替え動議を提出して、与党に修正を求めたのです。

ところがこの時も、政府・与党は私たちの動議を否決して、補正予算案をそのまま成立させてしまったのです。結果的に、政府は第二次補正予算案の編成を余儀なくされ、今国会中の成立をめざして中身の議論が行われています。しかし、政府・与党がその主な柱として挙げているのは、私たちが組み替え動議で提案していた内容が中心です。だったらなぜ、4月の時点でそれをやる決断をしなかったのかと、これもまた残念でなりません。

雇用・労働の支援策野党の提案

3月段階で、私たちが提案していた雇用・労働面での支援策は、おおまかに言って【別掲】のようなメニューでした。

これらの中には、すでに採用され実行されているもの、第二次補正予算に含まれそうなものなど、まちまちですが、一つずつでも私たちの提案が実現していることは評価したいと思います。

ただ、やはりこの種の対策は、小出しにしてはいけません。例えば、雇用調整助成金は、2月以降、何度も拡充されていますが、小出しにした結果、当初は対象になっていなかったり、手続きが煩雑で諦めてしまったりした事業主がたくさんいます。そうした事業主は、すでに休廃業や従業員の解雇という道を選んでしまったかもしれないのです。だから迅速さと大胆さが必要なのです。

緊急事態宣言は、5月25日に解除されましたが、当面は新型コロナウイルスの影響が残り続けます。心配なのは、倒産や廃業が拡大し、失業者が増加していることで、ここでいま一度、徹底的に雇用と生計を守る決意で、影響が続く産業分野への集中的な追加支援や、失業者への生活保障と再就職支援などをきっちりやっていかなければなりません。

「コロナ」後の社会構想を

今回、感染症の脅威と向き合う中で、社会の中で最も弱い立場にある方々が、最も大きな影響を受けるという現実を思い知らされています。そしてそれは、バブル崩壊以降のこの約30年、「効率化」と「経済合理性」の旗の下、株主や大企業経営者の利益を優先し、労働者の安心や安全や余裕を置き去りにして、貧困や格差を拡大させてきた結果なのではないでしょうか。

大切なのは、今から「コロナ後」に向けて、あらためて日本社会の脆弱性を直視し、雇用の安心・安全の立て直しや公務公共サービスの再生、そして地方の経済・社会の再活性化を図ることだと思います。いま一度、国民の命と暮らしと雇用、そして働く者の安心と安全が最優先される共生社会の実現に向けて、皆さんと一緒に新しい政治を構想し、実践していきます。


自治体議員の立場で


鎌田 聡 熊本県議会議員

セーフティーネットから抜け落ちる人を減らすため活動

国や自治体で新型コロナウイルス対策が進められていますが、その内容が大変な状況に置かれている県民のセーフティーネットになっているのか、その網目が大きすぎて支援が受けられない県民はいないのか、私は、そのような視点に立って取り組みを進めています。

私はこれまで県議会の会派や県内野党でチームを編成して、労働組合や商工会議所、商店街、医療関係者、ホテル、イベント業者、教育関係者、学生、市民団体、児童相談所、ホームレス支援団体などを訪ねて意見・要望を伺い、その要望をとりまとめ、県知事宛てに数次にわたり要望書として提出しています。

その要望項目は多岐にわたっていますが、特に私が強いこだわりを持って取り組んできたのが、社会福祉協議会の生活福祉資金の緊急小口貸付(10万円)の運用です。当初、県社協は熊本地震の特例貸付の滞納がある人には貸し付けできないと門前払いをしていたので、滞納があっても生活困窮者には貸し付けをすべき、と改善を求めました。その結果、分割分の1回でも返済があれば貸し付けすると変更されました。

しかし、生活が困窮して1回も返済していない貸し付け希望者が3500人いたので、参議院の厚生労働委員会で石橋みちひろ議員にも質問で取り上げていただいた結果、滞納の有無にかかわらず申請者の償還能力を総合的に審査して貸し付けを決定するという運用に改めました。

引き続きフェーズによって変わってくる県民要望をしっかり受け止め、対策を求めていきます。

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