特集2020.06

新型コロナウイルスと労働関連問題感染症対策と人手不足で余裕なく
医療従事者の組合員に聞く

2020/06/12
情報労連には医療現場で働く仲間たちがいる。新型コロナウイルス感染症との闘いの最前線で働く仲間の声を聞いた。

感染防止対策など多忙な日々

東北医科薬科大学若林病院(2016年にNTT東日本東北病院から改称)には、情報労連の仲間130人が働いている。同病院は感染症指定病院ではないため新型コロナウイルスの患者受け入れを行っていないが、病院スタッフは感染拡大でさまざまな対応を迫られている。

病院に、診察してほしいなどの問い合わせが殺到するようになったのは3月。病院は4月初め、感染の疑いのある受診者を専門に診察するエリアを設置した。病院の入り口で検温や症状の確認を行い、専門エリアに誘導した。専門エリアでの診察には医師と、10人強の看護師長、副師長が輪番で対応した。

「もしかしたら、という人は何人もいました」と東北医科薬科大学若林メディカルユニオンの副執行委員長(委員長代理)の大坂鉄子さんは振り返る。大坂さんは看護師長の一人として専門エリアでの対応に当たった。

「一番忙しかったのは3月末。専門エリアを設置するための作業に追われ、休日出勤もありました」と大坂さんは話す。

その後も多忙な状況は続いた。通常業務をしながら専門エリアでの診察にも当たるため、業務量は増加。

保育園の時短保育や学校の休業も影響した。保育園の時短保育のため、朝1時間、夕方1時間の時短勤務になったスタッフや、学校休業で休暇を取らざるを得ないスタッフも出た。健康状態をチェックした上で特別休暇を取得するスタッフもいて、大坂さんは「常にかつかつの状態」と話す。感染防止のための環境整備や手順作成などもあり、4月以降も時間外労働が続いている。

積み重なるメンタルの疲労

感染の心配は常に付きまとう。専門エリアでは、フェイスシールドや防護服などを着て対応するが、5月末時点でも衛生材料は不足している。「N95マスク」は乾燥させ繰り返し使用、フェイスシールドは手作りしている。防護エプロンも足りていない。

「自分が感染するのではないのかという怖さは感じます。スタッフの中から感染者が出たら病院の運営にも影響が出ます。家族に感染させないかも心配です。自分が最初に感染したらと思うとすごいストレスです」(大坂さん)

メンタル面の疲労も積み重なっている。

「自由に外出もできず、病院と家の往復。昼食時にも会話を控えているので、息を抜くところがありません」(大坂さん)

必要な支援策として、防護服などの衛生材料の確保を挙げる。「衛生材料が足りなければ感染リスクが高まります。衛生材料の確保が一番です」と強調する。情報労連が送ったマスクやかっぱについては、「気持ちがすさみがちだったところに支援物資が届いて、助けてくれる人がいることがとてもうれしかった」と振り返る。労働組合への理解が広がり、4月以降、組合員が17人増えたという。

医療従事者に報いる対応を

新型コロナウイルスの感染拡大は、医療従事者の負担を増やす一方、受診控えによって病院の経営を圧迫する事態を招いている。東北医科薬科大学若林病院も同じだ。経営の厳しさが増せば、そこで働く医療従事者の労働条件にも影響する。

「一時金交渉の最中ですが、病院もない袖は振れず厳しい状況です。国は病院に予算をつけてほしい」と大坂さんは話す。政府は病院の経営悪化を受け、第二次補正予算案に医療従事者に慰労金を支給するなどの施策を盛り込んだ。国はこの間、診療報酬の抑制を続けてきた。新型コロナウイルスとの闘いの最前線にいる医療従事者に報いる必要があるのはもちろん、医療体制の将来的なあり方も問われている。

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