「コロナ雇用危機」を乗り越えるために雇用維持を明示し危機克服の原動力に
中小企業家同友会全国協議会に聞く
(中同協)政策広報局長
中小企業への影響
中小企業家同友会全国協議会(中同協)では、新型コロナウイルスの中小企業への影響調査をこれまで3回(3月、5月、7月)実施してきました(7月調査の回答数3437社)。
新型コロナウイルスの感染拡大により経営にマイナスの影響が「出ている」と回答した企業の割合は7月調査で58.9%に上りました。5月調査より2ポイント増加、「影響を懸念する」を合わせると85.4%となっています。
売上への影響を見ると、6月の売上が前年同月より「10〜30%減少」したと回答した企業が23.1%。50%以上減った企業も約10%に及びます。売上が減少した企業の割合は全体で5割を超えました。
1社もつぶさない
中同協は1975年、中同協がめざす企業づくりの基本文書として、「中小企業における労使関係の見解」(労使見解)を発表しています。この中では、いかに環境が厳しくとも、時代の変化に対応して、経営を維持し発展させる責任があること、そのために社員の生活を保障し、高い志気のもと自発性を発揮してもらうことの重要性を訴えています。
中同協では3月から4回にわたり会長談話を発表してきました。3月の会長談話でも「労使見解」の姿勢を貫き、「絶対つぶさない、1人もやめさせない」と、経営改善に向けた覚悟の下、難局を乗り切ろうと呼び掛けています。危機を乗り越えるためには全社員の力を集めることが不可欠であり、雇用と、社員・家族の命と健康を守るという方針を明示して、社員の信頼感と安心感を高め、危機を乗り越える原動力にしようと訴えました。
こうした基本スタンスに立った上で、中同協では、これまで5次にわたる政策要望・提言を発表してきました。具体的には、「持続化給付金」や「家賃補助金給付」の拡充、「雇用調整助成金」の特例の延長、「長期資本性劣後ローン制度」などの金融政策、税や社会保険料の減免などについてです。支援策に関しては、制度の拡充だけではなく、手続きの簡素化なども要望してきました。
難局を乗り切る創意工夫
雇用維持の努力は、こうした支援策の活用だけではありません。それぞれの企業において知恵を絞り、変革しつつある実践の交流にも取り組んでいます。
会員企業では得意分野の絞り込みによって高付加価値の製品・サービスを生み出す活動を実践したり、リスク分散のために新規の取引先を開拓したりといった取り組みをしています。
また、人材育成に関しても、今回の出来事を機会に、複数の社内業務をこなせるように社員教育をしたり、仕事が減った分の時間を社員の技術力向上にあてたりした企業もあります。デジタル化(DX)を進める企業も増えています。
さらには、企業の枠を超えた「ワークシェア」によって雇用維持を図ってきた企業もあります。各同友会では、「コロナ」前から地域ごとに企業横断的な共同の新入社員研修会や幹部社員研修会などを実施してきました。そこで築かれた経営者間の信頼関係の下、仕事が減った企業の社員が、人手が足りていない企業に出向して働くという「ワークシェア」ができる環境が生まれています。日頃のネットワークが難局を乗り切る際に生かされていると言えます。
中小企業の存続へ
今回のような事態では中小企業1社でできることは限られています。そういう意味で、中小企業の経営者もそこで働く労働者も同じ基盤の上に立っています。
中小企業は雇用者数の7割、企業数の99%以上を占めています。中小企業がなくなると地域の雇用が失われるという地域は少なくありません。
中小企業を存続させるために社会的に何が必要なのか、労働組合の皆さんにも協力をしてもらいながら、ともに知恵を出し合って、この荒波を乗り越えていけたらと考えています。