特集2020.10

「コロナ雇用危機」を乗り越えるために「コロナ」の派遣労働者への影響
不安定な立場に置かれる現状

2020/10/14
コロナ危機は派遣労働に大きな影響を及ぼした。派遣労働者が直面する課題について、派遣で働く人たちが語り合う「派遣かふぇ」を主催する「yurara@派遣社員」さん(ツイッターアカウント@yurara0601)に聞いた。

不安定な派遣労働

「景気悪化の影響を真っ先に受けるのが派遣労働者です」。「yurara@派遣社員」さんはそう訴える。7月の派遣労働者の数は前年同月から16万人減少した(総務省「労働力調査」)。朝日新聞によるとこの数字は、比較可能な2014年以降、過去最大の落ち込みだった。「私の元にも『派遣先との契約が終了した』『雇い止めにあった』という声が届いています。中には、社内通達で『派遣契約の更新が必要かどうか検討するように』という内容が派遣社員にも伝えられた会社もあるようです」

厚生労働省は派遣先企業に対して派遣契約の安易な中途解除をしないよう要請、中途解除の場合には派遣先企業に講ずべき措置を定めている(労働者派遣法29条の2)。しかし、期間満了で派遣契約を更新しない場合にはそのような措置はない。実際、派遣元企業が派遣先企業に対して契約更新を強く求めるのは難しい。

「派遣元にとって派遣先は『お客さま』。モノを言うのは難しいです。一方、派遣先企業にとって派遣契約は『経費』です。雇用しているという意識ではなく、数字として見ているのだと思います」

派遣先の仕事がなくなれば派遣元企業は、新たな派遣先を提供するなどの雇用安定措置を図る必要がある。しかし新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、派遣先の確保が難しくなっている。

「派遣の仕事は昨年の同じ時期に比べて格段に減っています。派遣元企業も、人をあてがうことばかり優先している状態で、仕事が『雑』になっています。見つけてきた仕事が事前に聞いていた勤務地や勤務時間、勤務内容と違ったという話も聞きました」

派遣先を確保できなければ、派遣元企業は派遣労働者に休業手当を支払う必要が出てくる。しかし、休業手当を支払わない使用者の存在が問題になっている。

また、労働基準法が定める最低6割の休業補償では生活できないという声も多い。派遣労働者は雇用の面でも、処遇の面でも不安定な立場に置かれている。

「派遣労働者は、不安定な立場に置かれ、景気の影響を真っ先に受けるのに、それに見合った処遇や保障を受けていません。少なくとも10割の休業補償や、失業した場合にも100%の失業保険をすぐに支払うようなセーフティーネットが必要だと思います」とyuraraさんは話す。

派遣社員の疎外感

さらに働き方でも間接雇用の弊害が顕在化した。

「正社員はテレワークなのに派遣社員だけ出社したという事例は多かったようです。緊急事態宣言が出て、全社的に出社制限がかかって、派遣社員もようやくテレワークができるようになったという話をよく聞きました」

「これまでにも台風の際に派遣社員だけ出社して疎外感を感じたという話を聞いてきました。派遣社員は『日給月給制』の人が多いので、働かない分は給料が減ってしまう。仕方なく出社したという人も少なくありません」

「今回のコロナ対応では、派遣先の上司から『派遣は使い勝手が悪い』と言われた人もいました。その職場では新たに直接雇用の契約社員を雇ったそうです。派遣で働く人は契約をいつ切られるか不安だと話していました」

派遣制度の限界

yuraraさんは、「派遣制度自体が限界を迎えている」と感じている。「政府がキャリアアップや雇用の安定をいくら強調しても、派遣が雇用の調整弁として都合よく使われている現実は変わりません。制度自体を見直して高スキルで高賃金の人材が一時的・臨時的に働くという当初想定された仕組みに合わせるべきだと思います」

その上で、こう付け加える。

「資源が少ないこの国で人材を育てていかなければ、国の力も弱くなってしまいます。現状の派遣制度の問題を労働組合の皆さんにも広く知ってほしいと思います」

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