巻頭言2021.05

三度目の緊急事態宣言
命と暮らしの優先を

2021/05/18

三度目の緊急事態宣言命と暮らしの優先を

菅政権にとっては初の国政選挙で、4月25日の投開票で施行された補欠・再選挙(衆議院北海道2区・参議院長野・広島)。与党の全敗となった今次選挙は、「政治と金」の問題はもとより、この間の後手後手となっている感染症対策に対する国民の審判にほかならない。

世界に目を転じれば、すでに1億5000万人超の感染者と300万人超の死者が報告されている“Covidー19”。各国ではワクチン接種が進み、ロックダウンの解除も伝えられる一方で、ウイルスの二重変異や、変異株のまん延による感染のさらなる拡大が報じられるところであり、依然として緊迫した状況が継続している。

このような中、3月21日に『緊急事態宣言』を解除した日本においては、“まん延防止等重点措置”による自粛政策が進められてきたところであるが、感染が急激に拡大(第4波)へと転じたことから4月23日、1都2府1県(東京・大阪・京都・兵庫)に対しては、三度目となる『緊急事態宣言(4月25日〜5月11日)』の発令となった(5月7日、5月31日までの延長と愛知県、福岡県の追加を決定)。

今次宣言は、感染および重篤化のリスクが高いといわれる変異株の急激な拡大による感染者の増と医療・病床の逼迫を踏まえたものであるが、人の流れや接触を減らすための幅広い商業施設に対する休業等、さらに強い措置が要請されたところであり、とりわけ医療現場におけるトリアージ(命の選択)という緊迫した状況を踏まえれば、自粛疲れはあったとしても、命と暮らしを優先する判断については是とすべきであろう。

ワクチン接種遅れる日本党派を超えた迅速な対応を

ただ、感染者の拡大と減少とが繰り返されてきた1年余の推移を見るにつけ、“ポストコロナ”の状況を見通すことは困難であり、集団免疫を形成するための一日も早いワクチン接種が重点政策となる。

各国でのワクチン接種が加速する一方で、多くの国際機関からは、これまでの遅滞したPCR検査・医療体制の整備や支援体制の確保──等と同様に、日本における対応の遅れが指摘されている。英国のオックスフォード大学が運営する「Our World in Data(4月25日)」によれば、日本の接種率は極めて低く(2%程度)、経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国では、断トツの最下位で、100人当たりの接種回数(世界平均値の11.6回)も、1.53回とのこと。

加えて、先日参加した生産性本部が主催する「フォーラム」における、某シンクタンクから示された主要国の“集団免疫(70%)”の達成時期においては、米国が2カ月後、英国が3カ月後、ドイツが12カ月後という状況に対して、“現状(2%程度の接種率)の延長による推計値”との注釈はありつつも、日本は“133カ月後”との報告にあ然とするばかり。

今この時も、収束の糸口すら見いだせない状況において、防疫に向けた私たち一人ひとりの行動変容を放棄することは許されない。各国からは「ウイルスが変異する前段でのワクチンの早期接種が、集団免疫を形成し、防疫に資する」との研究結果等も報告されているところであり、ワクチンの確保はもとより、迅速な接種に向けた党派を超えての政治的リーダーシップ、そして、オールジャパンとしての対処を求めたい。

野田 三七生 (のだ みなお) 情報労連中央執行委員長
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