特集2021.06

ジェンダー平等に向けてビジョンを共有する
職場で、労働組合で、何をめざすのか
「女性三役」はなぜ増えないのか
労働組合活動の見直しも必要

2021/06/14
男女平等は労働組合活動の中にも当然求められる。女性組合役員や女性三役を増やすためには何が必要なのか。調査結果から見えてくることとは?
グラフ これまで経験した業務
(%、複数選択、女性役員が経験した業務上位10項目)
後藤 嘉代 労働調査協議会 主任調査研究員

「女性三役」への壁

労働組合における男女平等参画に最も重要なのは、女性役員の選出です。10〜20年前に比べると、女性役員は着実に増えており、連合の「女性の労働組合活動への参画に関する調査」(2019)では、民間組合の女性執行委員比率は12.9%を占めています。しかし、女性組合員比率に応じた女性役員の選出という目標達成にはほど遠く、組合役員は「男性中心」で構成されていると言わざるを得ません。また、女性役員選出の次のステップは、「三役」の選出ですが、現状では、女性には「三役の壁」が存在しているようです。前掲の調査では、民間組合の女性三役比率は5.2%にとどまっており、女性三役のほとんどが「副委員長」ポストで選出されているという特徴があります。

では、なぜ、女性三役が増えないのでしょうか。労働調査協議会のユニオンリーダー調査(2014)によると、組合役員としての充実感や継続意思に男女で大きな違いはみられないものの、組合役員として想定しているキャリアをみると、男性の方が、単組三役を“やりたい・やってもよい”と回答する割合が多くなっています。また、調査からは、担当業務に男女で違いがあることがわかりました。より明確なのは「男女平等・女性活動」で、女性の半数が担当経験があるのに対し、男性ではその割合は少なくなっています。他方で、男性三役をみると、8割以上が「賃金・労働条件」を経験していることがわかりました。しかし、女性役員でこの「賃金・労働条件」を担当している割合は3割程度にすぎません。つまり、「賃金・労働条件」を三役になるために経験が必要な業務として位置づけている組合が多い一方、女性はその機会が限定されていることがわかってきました。こうした担当業務の性別分離によって、女性役員自身も三役になることが想定できなくなっていることが考えられます。

仕事と家庭と組合活動と

また、男女の参画にとって重要なのは、仕事と家庭生活、組合活動との鼎立(三者が、並び存立すること)です。同調査から「組合活動で感じる悩みや不安」をみると、女性役員の半数が「自分の時間や家庭生活が犠牲になる」をあげています。また、労働調査協議会が実施したインタビュー調査では、女性役員からは「子どもがいたら、(役員を続けるのは)キツいと思う」、単組三役からは「家庭生活との両立が必要な人も多く、帰りが遅くなることなどを理由に執行委員を引き受けることを嫌がられる」などの声が聞かれました。女性が家事や育児を担うケースが多いことを考えると、特に子育て期の女性が就業後や土日の活動が避けられない組合役員の仕事を引き受けるのは難しいのが現状です。ただし、「自分の時間や家庭生活が犠牲になる」は女性役員だけの悩みではなく、男性役員についても半数がこれを挙げており、男女に共通した課題となっています。

組合活動の見直し

以上のように、女性役員を増やし、三役にも女性を選出するためには、まずは、組合役員が担当する業務に男女で偏りがないかを確認をすることが必要です。また、コロナ禍を通じて新しい働き方が実践されている今だからこそ、男女の組合役員がそれぞれの特性を生かし、活動できる組合活動時間のあり方を検討するべきではないでしょうか。組合活動の見直しによって、現時点では選出が難しい子育て期の女性や、正社員以外の組合員からの役員選出が実現できれば、多様な組合員の声を直接組合活動に生かすこともできるはずです。

また、女性役員の選出は、組合活動の活性化だけでなく、職場における男女平等にも好影響をもたらすことは、すでに報告されています。女性が働きやすい環境は、すなわち男性にとっても働きやすい環境です。こうした効果が組合役員間で共有されることも重要です。

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