特集2021.06

ジェンダー平等に向けてビジョンを共有する
職場で、労働組合で、何をめざすのか
「無意識の偏見」に気付き
多様な人材が能力を発揮できる職場に

2021/06/14
人間は誰しも無意識のうちに、ある偏見(バイアス)を持っている。無意識の偏見がもたらす弊害と、それへの対応策について、コンサルタントとして企業向けのセミナーなどを数多く手掛けるパク・スックチャ氏に聞いた。
パク・スックチャ 株式会社アパショナータ代表

無意識の偏見

バイアス(偏見)とは、「ある集団や個人に対して、十分な根拠なしにもつ偏った判断や意見」のこと。アンコンシャスとは無意識のことなので、「アンコンシャス・バイアス」とは無意識の偏見という意味です。

バイアスは人類が生き延びるために過去の経験から身に付けたメカニズムでもあります。例えば、野生のライオンに出くわした際、とっさに怖いと思うのも、バイアスです。

また、バイアスは情報を素早く効率的に処理するためのものでもあります。人間が意識的に判断できる情報の量はわずか1%。99%の情報は無意識のうちに処理をしています。

このようにバイアスは、人間が生きるために身に付けた機能であり、誰しもが持つものです。ただし、その機能の代償として、しばしば不正確な判断を下してしまいます。

私たちは何に対してもバイアスを持ち、社会のさまざまな場面に現れます。例えばジェンダーにかかわるバイアスとして、「男の子だから元気な方がいい」「女の子だからおしとやかにすべきだ」などはジェンダーバイアス(性別にかかわる偏見)です。

こうしたジェンダーを含めたバイアスは、生育環境やメディア・マスコミでの描かれ方などによって、私たちの中に無意識的に刷り込まれていきます。例えば、ドラマでは「社長が男性。秘書は女性」、CMでは「機械に強い父親」「家事をするのは母親」というイメージで描かれていることが多くありませんか? 何気なく見ているドラマやCMを意識的に眺めてみると、ジェンダーバイアスに気付くことができるでしょう。

バイアスの弊害

バイアスの大きな弊害は、公平性を阻害し、特定の人を優遇してしまうことです。例えば、同じ能力・スキルを持つ男女がいたとして、評価者が「管理職には男性が向いている」という偏見を持っていたとしたらどうでしょうか? 女性労働者は正しく評価されず、昇進の機会を逃してしまいます。

アメリカには、バイアスに関する調査研究が数多くあります。例えばオーケストラの入団テスト。演奏者の姿を隠してオーディションをした結果、女性の合格率が高くなりました。審査員の間に、男性の方が演奏がうまいというアンコンシャス・バイアスが存在していたことが影響したのです。ほかにも、履歴書の名前がアジア系や黒人系などの非白人系だと採用率が下がるという調査研究など、アメリカではバイアスに関する研究が数多く行われています。

こうした研究の結果、バイアスが働く中では、マイノリティー(少数派)が常に不利になり、公平性が阻害されるということが分かっています。バイアスが働くと、男性や白人などの特定の属性が優遇されるため、それ以外の属性の人たちが不利に扱われてしまうのです。

ジェンダーに関するバイアスの存在は、男性の能力を本来よりも高く見せ、女性の能力を低く見せています。加えて、問題なのは、その思いが「無意識的」だからこそ、それを事実だと思い込んでしまうことです。

人間である以上、バイアスを持つことは避けられません。偏見があるかないかの問題ではなく、「自分は何に対してバイアスを持っているのか」への意識を高めることが大切です。「無意識」を「意識的」に対応すれば、影響を最小限に抑えることができるのです。

とりわけ、アンコンシャス・バイアスの存在は、人間が意識的に操作した結果と同じ結果を無意識的に引き起こしてしまう、ということ。だからこそ、アンコンシャス・バイアスがあることを強く自覚する必要があるのです。

女性自身が持つバイアス

女性自身もジェンダー・バイアスを持っています。能力のある女性に責任のある仕事を打診しても断られるという相談をよく受けます。話を聞くと「女性だからできない」と思っている人も少なくありません。そこで、「女性のためのジェンダー・バイアス&自信創出」セミナーを開発しました。女性が自身の持つジェンダーバイアスに気付き、自信を付けて一歩踏み出そうという内容のセミナーで、依頼が増えています。

セミナーでは、ジェンダー・バイアスに関するリサーチやデータなどを紹介しながら、女性が自信を持てない理由などを根拠に基づいて解説しています。参加者からは「自信を持てないのは自分だけではなかった」「チャレンジしたいと思った」などのポジティブなフィードバックをもらっています。自身が抱えていた不安が、自分のせいではないとわかるとそれが安心材料になり、次の一歩を踏み出そうとする自信につながるのです。

多様性と包摂

アンコンシャス・バイアスに対応するために組織に何が求められるでしょうか。まずはバイアスとは何かを正しく知るために、社員教育や研修から始めると良いでしょう。その上で、採用や人事評価などのあらゆる場面で生じるバイアスをチェックし、対策をとっていくこと。そして最後に、対策をとった後の結果の検証が欠かせません。

組織がアンコンシャス・バイアスに取り組む最大の目的は、「ダイバーシティ&インクルージョン」を実現させるためです。ダイバーシティは多様な人材が存在すること。インクルージョンは、多様な人材を受け入れ、生かし、組織として一体感を持つことです。すべてのメンバーの能力を最大限引き出すためにも、アンコンシャス・バイアスを意識し、対策を講じていくことが欠かせないのです。

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