特集2021.06

ジェンダー平等に向けてビジョンを共有する
職場で、労働組合で、何をめざすのか
大手組合で活躍する女性リーダー
日立労組・半沢委員長に聞く

2021/06/14
大手電機メーカーの日立製作所労組で昨年7月、女性委員長が選出された。委員長になるまでのキャリア形成などについて、語ってもらった。
半沢 美幸 日立製作所労働組合
中央執行委員長

組合員時代の成功体験

入社後、ソフトウエアの取扱説明書をつくる部署に配属されました。配属された部署は、ソフトウエア業界にありがちな長時間労働。結婚や育児などライフステージを踏まえながら、働き続けられるかどうか、漠然とした不安を持っていました。そうした環境を改善していきたいという思いもありました。

職場には労働組合の支部が開く女性専門委員会があり、職場の先輩に声を掛けられて参加するようになりました。会議は月に1〜2回、お昼休みにあったのですが、子育て中の先輩や主任クラスの先輩と話をするのが楽しかったです。

委員会の活動で、労組の本部に呼ばれて短時間勤務の取得期間の延長を要望したこともありました。支部の仲間と一緒に職場の実態を調べて、本部に提案したところ、結果的に制度が導入されました。物事が動く前向きな体験になりました。

プレッシャーを感じた支部書記長時代

女性専門委員を6年務めたころ、組合役員にならないかと誘われました。仕事もあったので抵抗感がなかったわけではありませんが、視野を広げるきっかけになると思って引き受けました。

その後、支部の執行委員になりました。私ともう一人の女性役員と、支部で初めての女性役員でした。周りの人は気を使ってくれました。ただ、「何ができるの?」「どこまでできるの?」という無言のプレッシャーは感じました。

支部の役員になってから2年後、支部の書記長に推されました。この後、本部の役員になり、電機連合の役員を経て、本部の書記長、委員長になりますが、実を言うと、次のポジションになるときに一番ハードルが高かったのが、支部の書記長になるときでした。

支部で初めての女性書記長。責任のあるポジションです。本当にできるのか、かなりプレッシャーを感じました。

目の前のやれることをやるしかない。素晴らしい先輩がいたとしても、私にできて彼にできないこともあるかもしれません。私にできることは一生懸命やろう。そう気持ちを切り替えました。

支部の書記長時代、支部の事務所を一部改装して託児所をつくることになりました。会社や組合員、行政、業者などとの調整を含め、総合的にいい経験になりました。また、春闘では、会社との交渉で、職場環境を少しずつ改善できました。そうして自分なりのやり方を一つずつ積み上げることで、自分でもできるという自信につながりました。

それは、周りの人たちともやっていけるという自信でもありました。困ったときに助けてくれる人がいるとか、力を合わせればできるとか、そうした周囲の人への信頼感です。そういうことが徐々に醸成されていきました。本部の委員長になる際には、女性ということはそこまで意識することはありませんでした。

育児と組合活動のバランス

本部の労働部長を務めているときに、1年間の育児休業を取りました。復帰後はフルタイムで働きました。早い時期からモバイル機器を持たせてもらったので、子どもが熱を出したら在宅という働き方ができました。夫が出張で子どもの面倒をどうしてもみれない場合は、私の出張先に子どもを連れていくこともありました。

育児をしていれば、時間や場所の制約はどうしてもあります。飲み会や出張もだいぶ断りました。ただ、付き合いをなくすわけではなく、最初の乾杯だけとか、近隣への出張にはできる限り対応しました。すべてに対応できない焦りや、評価への不安もありましたが、そのつど上司に訴えてきました。

新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークが一般的になり、時間や場所の制約を乗り越える手段も見えてきました。労働組合の活動もそれらを活用せざるを得ません。コロナが終息してもそうだと思います。

意思決定の場への参画

家庭責任を女性が負うことが多い現状の中では、配慮も必要かもしれませんが、仕事を任せて経験を積んでもらうことも重要です。私の場合、支部から本部に移ったあと「労働部」を担当し、労働部長も担当させてもらいました。

意思決定の場に参加する女性が増えることも大切です。特に三役になれば、組織全体を動かす立場になりますし、物事を動かす計画段階から携われたり、説明したり、意見を聞いてもらえたりする立場になります。そういうところに女性をはじめ、多様な人材がいることは重要です。

みんなの意見を集約して、会社に反映させるのが労組の活動だとすれば、組合活動に女性参画を促すことは、そのための当たり前の環境をつくることだと思います。女性としても、意見を聞いてもらうだけではなく、女性自身の力で職場改善を実現していくために、活動に参加することが重要です。

女性組合役員の皆さんには、正しい情報を得て、自分の納得する道を選んでもらいたいと思います。チャンスがあれば飛び込んでみてください。

私の場合も、当時の支部の委員長が私のことをよく推してくれたと、いまさらながら思います。仕事を任せられるかどうかの見極めは難しいものですが、できそうだと思ったら早い時点で任せて、足りない点は周囲がフォローすればいいと思います。私も、先輩がフォローすると言ってくれたことが支えになりました。飛び込めば、得られるものはありますし、できることは必ずあります。「案ずるより産むがやすし」。大丈夫です。

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