「安い日本」
労組の力で転換を
賃上げには労働組合の力が必要だ地域の賃金相場の形成へ
11万人超の個別賃金データを活用
11万人超の賃金データを収集
連合静岡は、構成組織の組合員の賃金データを集め、地域の賃金相場を形成する取り組み『組合員20万人の賃金地図を作ろう』運動を展開している。
取り組みは1999年に300人未満の構成組織を対象に始まり、2011年からは対象を民間組織全体に拡大。さらには2013年には取り組みの名称を『組合員20万人の賃金地図を作ろう』運動に変更し、翌年からはデータ収集の対象を県内の約20万人の組合員に広げた。
2014年に5万人強だった賃金データは2021年には11万8544人分(11月30日最終集計)となり、初めて10万人を超えた。個別賃金データを集める取り組みは、各地の地方連合会でも行われているが、連合静岡の集約数はトップクラスだ。
集めているのは、性別、年齢、勤続年数、学歴、基本賃金、所定内賃金、雇用形態のデータ。集まったデータを活用すれば、業種や企業規模別などの指標と比較することができ、自社の賃金が地域相場のどこに位置しているのか知ることができる。職場ベースでは、年齢別最低保障賃金や、中途採用者の賃金、労使交渉の目標設定等に活用することができる。さらには、賃金カーブ維持分を確認し、賃金制度を整備する足がかりにすることもできる。
「最近は、給料を他人と見せ合ったり、話し合ったりしにくいという人も多い。それだと自分のもらっている給料が多いのか、少ないのかがわからない。もし、少ないとわかれば、労働組合をつくって会社と交渉しようと思うきっかけになるかもしれない。そうやって、組合の仲間が増えていけばいい」と連合静岡の佐々木勇人・労働条件局長は『賃金地図』の活用方法について話す。
連合静岡では「調べてみよう!! 私の給料どのくらい?」というウェブサイトを展開している。サイト上に自分の所定内賃金を入力すれば、自分の賃金と地域相場と比較できるウェブサイトを公開している。ぜひ活用してほしい。
もっとある活用方法
活用方法はこれだけにとどまらない。
連合静岡では、集約したデータをもとに要請書を三つの経営者団体に毎年、春闘時期に提出している。経営者団体の要請の中では、年齢ポイント別に設定した下位10%のミニマム水準をクリアするように求めたり、賃金カーブ維持相当分の金額を提示したりして、賃金引き上げの目標や相場観を示している。
「多くの組合からデータを収集しているので、実態に沿った信頼性の高いリアルな賃金相場になっている」と佐々木局長は話す。つまり、『賃金地図』を活用すれば、リアルな賃金相場に基づいた納得性の高い賃金制度をつくれるということだ。経営者にとっても人材の定着や確保などにおいてメリットがある。
ほかにも、このデータを活用して、未組織も含む地域のすべての会社が下位10%の水準をクリアしていけば、その分、底上げが実現し、地域の賃金相場は上がっていく。
佐々木局長は、「『賃金地図』の取り組みは、県内の労働組合に入っていない労働者や、パート・有期契約等労働者の底上げにつながっている。『賃金地図』が指標になって地域経済の賃上げに貢献できる。できるだけ多くの組合に協力してほしい」と訴える。
『賃金地図』は地域の賃金相場の引き上げに重要な役割を果たすものだと言える。