特集2021.12
「安い日本」
労組の力で転換を
賃上げには労働組合の力が必要だ思いを伝える賃上げ要求
例年の倍の要求で本気度見せる
2021/12/15
東北ブロック支部に加盟する秋木製鋼労働組合は、2019春闘で月額1万円の賃上げ要求を行った。例年は4000〜5000円の要求なので、この年の要求額は例年の2倍の金額となる。
要求の背景にあったのは、離職者の増加だ。配置転換や時間外労働などを要因に離職者が増えていた。近隣の同業他社に転職する人もいた。牧野副委員長は、「組合員の間には、離職者がこれ以上増えれば、現場が機能しなくなるという危機感が募っていた」と振り返る。
そこで労働組合は、職場改善の本気度を見せるためにも、思い切った要求に打って出た。これまでのように毎年数千円ずつ賃金が上がっていくだけでは生活が厳しいという組合員の声もあった。その思いを受け止めて、例年の倍の金額を会社に要求したのだ。
交渉では、組合員が感じている危機感を会社に伝えた。離職者を減らすためにも、この会社で働きたいと思える環境を整えていく必要があると訴えた。会社も労働組合の危機感を受け止めて、満額回答になった。「結果的に組合員には喜んでもらえた。同時に、会社が危機感を持っていることも組合員に伝わったのでは」と話す。労使交渉の場は、労使の課題認識などを共有する場にもなっている。
牧野副委員長は、「会社から提案があった場合は、組合員の意見を伝えて、話し合った上で妥協点を見つけている。会社には協力するけれど、組合員の意見を伝えた上で協力することが、労使関係を維持できるポイントだと思う」と話す。
春闘は、組合員の思いを会社に伝える大切な機会だ。時には、秋木製鋼労組のように思い切った要求で組合員の思いの強さを伝えるのも一つの方法となる。組合員の思いを伝えることから、「未来づくり」が始まる。春闘を積極的に活用して、職場の未来をつくっていこう。