特集2022.03

若者と労働組合
労働組合の意義を伝えるには?
加盟組合の新入社員への対応は?
声を聞き、相談される労働組合に

2022/03/15
情報労連の加盟組合は、新入社員の加入説明をどのように行っているだろうか。
最近の傾向や工夫点などを報告してもらった。

活動意義や実績を丁寧に伝えることが大切

中村 正樹 NTT労働組合東日本本部
東京総支部

私は、組合役員を始めてからこれまでの間、新入社員への組合加入説明会に数多く携わってきました。毎年、印象として受けるのは、労働組合という言葉は聞いたことはあっても、それがどのような存在で、どのような活動をしているのかなどがわからない人がほとんどということです。そのため多くの新入社員が説明をしっかり聞いてくれますし、説明を受けた新入社員のほとんどが労働組合に加入してくれます。

ただ、一方では資料も見ず、最初から加入を拒否するような態度を示す人も毎年数人います。説明を聞いて加入してくれる人もいることから、粘り強く労働組合の活動意義や実績を丁寧に伝えることが大切だと感じています。

これまでの新入社員に対する加入説明会は、対象者に集まってもらう形式で行ってきましたが、コロナ禍では、小規模で複数回開催で実施しています。このことで、1人ひとりに対してより丁寧な対応ができているのではないかと感じています。また、組合が身近な存在であることを感じてもらうために可能な限り若手役員に対応してもらっています。

新入社員に限らずですが、組合員の方々に「組合に加入してよかった」「頼りになる存在である」と感じてもらうことが、重要だと思います。特に組合の活動を次代につないでいくためにも若年層組合員との接点強化が必要であるとの認識の下、私もこれらのことを意識した取り組みを今後も行っていければと思います。

まずは気持ちに寄り添う
オリジナル漫画も活用

金沢 梨佐子 NTT労働組合ドコモ本部

私たちNTT労組ドコモ本部では、労働組合の仲間づくりの取り組みについて、入社後速やかに実施しています。

昨年、新型コロナウイルスの感染症の影響で、会社の研修はオンライン形式に切り替わり、労働組合の加入説明会もWeb会議システムを活用し対応してきました。ここ2年間の新卒採用者のみなさんは、新型コロナウイルスの感染症により、私生活・学校生活へさまざまな影響を受けており、仲間とのつながりに不安をもっている印象を受けます。

そこで、昨年のオンライン説明会では、導入部分で“新卒採用者の気持ちに寄り添う”ことを意識し、「配属後も組合や組合役員の先輩に相談できる」「組合への加入で全国の仲間とつながれる」といったポイントをアピールすることにしました。また、加入説明会前に、理解促進を目的にドコモ本部独自で作成しているオリジナル漫画「労働組合をよろしく」や、「よくあるQ&A」などを展開したことが、一定の疑問や不安解消に効果があり、当日にほぼ100%の仲間を迎え入れることができたと考えています。

このように、入社後の加入説明会だけによらず、その前段から、労働組合の存在や必要性を若年層の目に触れる形でアピールしていくかが重要です。これまでの常識ややり方にとらわれることなく、SNSなど、さまざまなツールを活用し、こちらから歩み寄り、「身近な存在」に感じてもらう必要があります。これからも労働組合の認知度を高め、頼られる存在になるよう、新たなツール・加入説明会の方法を模索し、チャレンジしていきます。

説明会よりもネットの情報
デジタルネイティブ世代への対応に工夫

高代 守 通建連合

通建連合では、最前線で新入社員対応に当たる組合役員の声を集めました(図参照「新入社員の率直な印象」)。率直な印象では、自分のケースに当てはめしっかりと考える、わからないところは積極的に聞く姿勢の新入社員が増えている一方で、説明会での情報よりもネット検索情報を重視する場面が増えているという傾向がみられました。

具体的には、加入説明時、「もし入らなかったらどうなるのか?」「ユニオンショップではないので加入・脱退は自由ですよね」「自分は共助と言われても困っていないので助け合いは必要ない」「親と相談して決めていいですか」など──という声が上がっています。まずはこの率直な声を受け止めて、共感してもらうことが大切です。

共感を得るためには、年の近い若手(2〜3年目)組合員の「声」を動画などで視聴してもらい、職場・世代を超えた仲間がいることや、若手の声を受け止めてくれる人がいると伝えると、安心感につながります。

また、職場の先輩や会社幹部など誰もが新入社員の時期があり、労働組合を経てきていること、組合説明前に会社側から賃金・ボーナス(特別手当、一時金というより響く)、処遇制度改善には組合が必要であることなどをコメントしてもらうことも効果的です。日頃からの労使の信頼関係が新入社員加入の場面でも効いてきます。それがあるとより新入社員も組合の話を聴いてくれます。

まずは、通年的な集団的労使の信頼関係構築のサイクルを丁寧に積み重ねること。加えて、デジタルネイティブ若年層に対応するには、デジタルとリアルの双方で「参加・参画」の場を提供し、共感と参加を促す「情報宣伝力」が必要だと捉えています。

「加盟組織調査:新入社員の率直な印象」(テキスト分析 KHcoder利用)

困ったときには労組に相談
労組役員が必ず連絡先伝える

村田 唯 KDDI労働組合

KDDI労働組合では、ユニオンショップ協定を締結しているため、新入社員は入社と同時に組合員となります。新入社員の多くはそれまで労働組合の活動に触れたことがないため、説明会では、困ったことがあればいつでも労働組合に相談することを意識して伝えています。

コロナ禍以前は新入社員と労組役員が一堂に会して開催していました。社会人生活に不安が募る新入社員に対して、親身に職場の様子を説明する労組役員とのコミュニケーションは、新入社員への活動理解だけでなく、労組役員として組合員に寄り添った活動を学ぶ機会でもありました。受け入れる側である私たち労組役員にとっても背筋が伸びる思いを毎年感じています。

説明会では各職場の先輩社員でもある労組役員とのフリートークを設けています。職場環境や日常の業務の話題から新入社員の不安解消やマインドセットにつなげています。また、最後には担当した労組役員が必ず連絡先を伝え、『困ったときには労働組合へ相談できる』という意識付けを行っています。

若手の組合員は「労働組合=堅い」といったイメージを持っていますが、労働組合の活動は仕事で得られないつながりや取り組みを通じて自身の成長につながるだけではなく、仲間のためになる活動をしていることを知ってもらうことが大切です。そのためにも職場(現場)での積極的な活動の展開により、職場での活動が労使ともに「当たり前」に受け入れられる労働環境になることが重要であると考えています。

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