特集2022.03

若者と労働組合
労働組合の意義を伝えるには?
若者たちの声が届く
話し合いの場をたくさんつくってほしい

2022/03/15
若者は、政治とどう向き合っているのだろうか。若者の政治参加を促進する「NO YOUTH NO JAPAN」の2人のメンバーに、日本における政治参加の難しさや、政治に求めることなどを聞いた。

活動に参加した理由

話をしてくれたのは、大学3年生の林怜奈さんと、高校3年生の古井美好さん。2020年から「NO YOUTH NO JAPAN」の活動に参加している。

活動に参加した理由はそれぞれだ。

林さんは、インスタグラムで「NO YOUTH NO JAPAN」のイベントを見て、活動に興味をもった。それ以前には「政治に興味はなかった」と率直に打ち明ける。

古井さんは、高校1年生のときアメリカに留学。留学時は大統領選挙の予備選挙が始まるタイミングで、民主党候補を決める党員大会では、地域の住民が議論しながら候補者を選んでいた。「政治のイメージが変わった」と古井さんは話す。

帰国後、古井さんは、アメリカの友人たちが「Black Lives Matter」の活動をSNSにアップしているのを見た。でも、日本の自分の周りでは、そういう発信が見当たらない。自分の思いをSNSで発信してみたが反応がなかった。「どうしたら政治をもっと話しやすく、身近にできるだろうか」。そう思って活動に参加した。

政治の話しづらさ

2人とも、日常生活で政治の話しづらさを感じていた。古井さんは、「普段の生活の中で政治の話が出てこない。周りの大人も話さないし、先生も話さないから、政治について話すことにハードルがある」。林さんも「大学に入って初めて政治に対して発言していいのだと感じた」と振り返る。

話しづらさを乗り越えるためにはどうしたらいいだろうか。

林さんは、「すでに決まっている答えがあるという雰囲気がなくなるといい」と話す。考え方は一人ひとり違うし、それが互いに尊重されるべきと考えるからだ。

「NO YOUTH NO JAPAN」のコミュニティーで大切にしているグラウンドルールには主に次の二つがある。「Yes, and…」「あなたの声は原石だ」の二つだ。

「イエス・アンド」は、相手の発言を「イエス」と受け止めてから、自分の意見を付け足すというルール。

後者は、いろいろなバックグラウンドの人がいる中で、「一人ひとりの声は原石だから躊躇しないで話してもいいよ」というルールだ。

古井さんの留学先では、先生が生徒に話を振って自分の意見を述べるように促し、先生自身が自分の考えを述べていた。「そういう場だと自分も何を言ってもいいんだなと思えるし、安心できて、意見を言いやすい」と古井さんは振り返る。

古井さんは、「ほかの人と意見が違うときに相手の人格否定につながるのではないかと心配してしまう。人格と意見を切り離して、『私は私、あなたはあなた』と、フラットな環境で話し合うことができればいい」と話す。

より多くの人に届けるために

2人は、昨年の衆議院議員選挙で、30歳以下の若者団体とコラボレーションする企画や、インスタグラムに投票に行く理由などを投稿してもらう企画に取り組んだ。ジェンダー平等やLGBTQ、気候変動問題への関心が高かった。

課題はより多くの若者に情報を届けること。林さんは、「政治に元々興味のある人や情報をキャッチできる人には届くが、将来に不安があるけれど何とかなるだろうと感じている人や、毎日の生活で余裕がない人に届けるのは難しいと感じている。参議院議員選挙に向けては、課外授業をはじめ、オフラインでの活動も展開したい」と話す。

大人たちに問われていること

今の政治に対して何を期待するだろうか。

古井さんは、「声を上げても意味がないと思ってしまう環境がある」とした上で、「メッセージをもっと届けてほしいというより、もっと理想的な話し合いの場をたくさんつくってほしい」と話す。林さんも自治体のワークショップに参加したことで、「自分たちの社会を自分たちでつくっていけると思えた。そういう場がもっと増えてほしい」と話す。

若者の「政治離れ」や「批判嫌い」が問題視される。だが、その一方では大人たちが、若者が発言できる場をつくっているのか、さらには発言しやすい「心理的安全性」の高い環境をつくれているのか、そうしたことが問われているのではないだろうか。

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